大浜見聞録、今回は銭湯を軸に街の活性化を図ろうという取り組みです。
銭湯の利用券付きのアパートや利用券付きのコアワーキングスペースなどちょっとしたアイデアで周りの人を巻き込んで街を活性化しようという動きです。
まだビジネスとしては小さいですが、この試みに大手企業や行政も注目しています。
銭湯 人々の交差点に
街の再生 新手法
東京・高円寺にある小杉湯。創業からおよそ90年、建物は国の有形文化財に指定されています。
この銭湯が生み出す人間関係を街の活性化につなげようという取り組みが注目されています。
大浜平太郎キャスター

いかにも歴史がある古い銭湯ですが、隣の建物を見てみると一転して真新しいきれいな建物が立っています。
実はこの建物で地域を活性化する取り組みを色々しているということです。
取り組むのは加藤優一さん。東北大学大学院で街づくりを研究し、公共施設の再生に携わっています。
加藤さんは風呂なしアパートの住民でした。
建築家
加藤優一さん

5年前、このアパートに住んでいた。
解体前で空き家状態になっていた。
小杉湯の客として当時通っていた。
オーナーから活用してほしいと相談。
1年間住みながら、次に「何があったらよいか」と考え、約10人で住んだ結果、一緒に会社を作り、この場所を運営することになった。
銭湯好きの仲間と「銭湯ぐらし」を設立し、完成させたのがこの施設「小杉湯となり」。会員制のコワーキングスペースです。
1階はコワーキングスペースで自炊もできるキッチンも併設しています。
2階は畳敷きのコワーキングスペース。温泉の休憩室の趣です。
3階は予約制の個室でトイレとシャワー、ベランダにはハンモックも備えられています。
大浜平太郎キャスター
最近、都心でも大手のビルの中にもシェアオフィスがたくさん入っていますが、あそことの違いをあえて挙げるとしたら?

建築家
加藤優一さん

「働くだけじゃない」ところがすごく重要。
「つながりたい時はつながれる」
「つながりたくない時は集中する」
番台の店員や常連と会話することができる。
一人でこもりたい時、集中したり、安らいだりできる。
銭湯のような気楽な場所を意識したこの施設、月額利用料は2万2,000円。会員費の中に入浴券や地域のお店の割引券に交換できるチケットが10枚付いています。
利用者は20~50代までおよそ60人です。
キッチンで昼食を作っているのはリモートワーク中のシステムエンジニアです。
大浜平太郎キャスター
この施設の魅力は?

小杉湯となり 利用者

小杉湯で長くお風呂に入れるのが魅力的。
ここに来てリラックスできたり、気軽におしゃべりできたりする。
人とのつながりを感じられる場所。
大浜平太郎キャスター
第2の我が家みたいな感覚で使う?

建築家
加藤優一さん

都会のセカンドハウスという言い方もしているが、家だけで暮らすのではなく、街で暮らすライフスタイルを提供している。
平太郎の「へぇ~」ポイント
ゆるくつながる人間関係に大企業が注目!
ここで平太郎の「へぇ~」ポイント。ここなら消費者の本音が聞けると注目しています。
洗剤や化粧品などを扱う大手企業の新規事業の担当者が匿名を条件に話してくれました。
洗剤・化粧品などを扱う大手メーカー

弊社の研究者はインタビューやいろいろなニーズ調査をしているが、その土地に住んだり、足しげく通うことによって見えてくる。
そういった声を拾うのは社員数が多い会社でも必要。
大浜平太郎キャスター
かしこまって調査するのとは違う声がある?

洗剤・化粧品などを扱う大手メーカー

あると思います。
既存商品の見直しや新サービスの開発に役立てようと検討しています。
銭湯ぐらしの取り組みは小杉湯となりだけでなく、半径500メートルの範囲に広がり始めています。
加藤さんが銭湯好きの女性が暮らしているアパートに案内してくれました。
建築家
加藤優一さん

湯パートやまざき。
大浜平太郎キャスター
風呂なしアパートなんですね?

建築家
加藤優一さん

そうですね。
毎月30枚、銭湯券が家賃に含まれているので。
築50年ほどで六畳一間の風呂なしアパートですがいま大人気だというのです。3部屋の募集に50人の応募があったといいます。
銭湯の利用券を付けることで人気が急上昇、家賃も3万円台から6万円台に上がりました。
湯パートやまざき
入居者

風呂がないけど、銭湯があるみたいな。
家賃に銭湯券代(入湯交換券)が含まれているので、むしろ「やったー」って感じ。
加藤さんは山形県で商店街の再生を、佐賀県では公共空間を有効活用するプロジェクトにも取り組みます。
空き家オーナーを集めた勉強会は国土交通省の空き家対策のモデル事業に採択されました。
建築家
加藤優一さん

空き家再生だけだと厳しい。
地域の資源というすでに人が集まっている場所と連携することで、街の可能性や魅力が広がる。
この場所も街の一つの点なので、点と点をつないで面を作りたい。