住宅大手の積水ハウスは10月3日、これまでの常識を覆すという戸建住宅を発表しました。
ただし積水ハウスは去年、土地取引を巡る詐欺被害で多額の損失を出したことで経営陣が対立しました。
こうした一連の問題などで先行きを不安視する声もあります。
また人口減少で国内の戸建市場は先細りが避けられない状況です。
積水ハウスは成長戦略を描けるのでしょうか?
積水ハウス株式会社
[blogcard url="http://www.sekisuihouse.co.jp/"]
積水ハウスが10月3日に発売した新たな戸建住宅のコンセプトモデル「IS ROY+E Family Suite」。
最大の特徴はリビングにあるといいます。
積水ハウスの河崎由美子住生活研究所長、
こちらが新しいリビング。
今までのLDKの考え方を脱して一つの大きな広間としてリビングを捉えている。
今回、キッチンやダイニングも含めた40畳の広い空間を作りました。
通常、これだけの広さであれば柱や壁が必要になりますが、それらしいものは見当たりません。
その秘密は天井にあるといいます。
ここは梁だけですっきり空間を支えることができる技術になっているので、このような大きな空間が得られている。
ダイナミックビーム
40畳のリビングを実現したのは積水ハウスが独自に開発した梁「ダイナミックビーム」。
従来はアルファベットのHの形をした梁を使っていましたが、ダイナミックビームでは2つ重ねたような形に改良。
強度はおよそ10倍だといいます。
これにより空間に必要な柱の本数を減らすことが可能になりました。
例えば一般的な住宅ではリビングやキッチンを分けるための柱や壁があるのに対し、今回の工法だとご覧の通り。
一緒の空間にいながらそれぞれ思い思いの事ができるリビングがこれから求められている。
積水ハウスの調査では共働き世帯の家族が最も重視するのは家族の団らんですが、一方で一緒にいながら自分のやりたい事をしたい人が多かったといいます。
そのため、家族の気配を感じながらも個人の行動が干渉されない広い空間を作りました。
このモデルプランで30坪の家を建てると建物本体の価格はおよそ2,100万円です。
自由な空間づくりができる住宅を提供することで初めて戸建てを買う若い世代に加え、建て替え需要が見込まれるシニア世代も獲得したい考えです。
積水ハウスは高いとか手が届かないとか思っていた人もいると思うが、どなたでも考えていただける商品プランになっているのでご検討いただけると思う。
戸建て復活の年
顧客層を広げる戦略を打ち出した背景には人口減少による国内住宅市場の縮小があります。
高級感を売りにする積水ハウスの戸建住宅部門の売上げは右肩下がり。この4年でおよそ3割減少しました。
そこで今年、戸建て復活の年を掲げて需要の掘り起こしを狙っているのです。
仲井嘉浩社長、
設計のトップクラス、設計力を全面に出して差別化を図っていきたい。
ここ10年で国内の住宅市場は積水ハウスを含む大手メーカーのシェアが低下。
一方で安価な建売住宅を扱う飯田グループホールディングスなどいわゆる「パワービルダー」がシェアを2倍近く伸ばし、およそ3割を握るようになりました。
さらに積水ハウスは東京・五反田のマンション用地をめぐる取引で詐欺被害に合い、55億円の特別損失を計上。
経営責任に発展し、当時の和田勇会長と阿部俊則社長が対立。
和田氏は会長職を退きました。
この騒動の後、トップに就任した仲井社長は、
取締役会の透明化、活性化は社外を含め活発に議論、有意義に進んでいる。
しかし14年間、積水ハウスを分析する専門家は、
市場が伸びない中で次の成長を模索しないといけない。
成長にこだわりすぎた故にチェックが甘かった部分があるかもしれない。
戸建住宅の王者とも呼ばれる積水ハウスの焦りが詐欺に付け込まれるすきを与えたといいます。
実は競合する大和ハウス工業や旭化成は近年、非住宅分野も積極的に手がけ事業の多角化を進めて成長しているのです。
積水ハウスはホテル・オフィス開発、海外の分譲住宅事業と財務の強さを生かすことが可能。
非住宅事業もいったい何に軸足を据えるのか考える必要がある。