
東日本大震災では津波で多くの田畑が流されました。農業に戻ることを断念する人も多く農家の数は減少する一方で被災地で増えているのが会社として大規模に農業を行う農業法人です。会社の代表という新たな立場で農業の復興を目指すある被災者の11年を追いました。

東京ドーム3個分の畑!被災地で進む大規模農業
宮城県気仙沼市。

道の駅「大谷海岸」で販売されているのは南三陸ネギ。震災後に気仙沼市などで作られるようになったブランド野菜です。


お客さんは…
ネギの風味もおいしいし、甘みがある。

このネギの生産者、佐藤信行さんさんです。

取材班が佐藤さんに出会ったのは2011年の夏。

この辺りがうちの土地だった。

個人で農業を営んでいた佐藤さん。

津波で家も畑も失いました。

震災後は数ヵ月に渡り避難所で暮らしていました。

40年連れ添った妻は亡くなり、一度は農業を諦めました。

しかし震災の5年後、新たな挑戦を佐藤さんは決意しました。


ここが畑の予定地。

津波で被災した土地に大規模な畑を作り、地域の農業を再生しようと農業法人「シーサイドファーム波路上」を設立したのです。

会社をつくったのは若い人がほしいと思って。給料制で社会保険などの面で安心して働ける。

大規模農業は効率的に機会が使え、費用対効果がアップ。

また法人化で給料制にすることで人材を集めやすくなるといいます。

被災3県の農家数は震災前のおよそ24万戸から2020年には16万戸にまで減少。

一方で農業法人の数は1,200を超え、1.7倍に増加。法人化による大規模農業が進んでいます。

今年、気仙沼を訪ねると防潮堤のすぐ横には佐藤さんの農業法人「シーサイドファーム波路上」のネギ畑が広がっていました。面積は東京ドーム3個分、個人で営んでいたときの15倍の広さです。


復興交付金で機械を導入。作業を効率化したことで少ない人数でも収穫量を増やせるといいます。
現在社員3人、パート14人を雇用しています。

社員の生活を考えている。

地域も会社に目を向けているので「応えないと」と思っている。

大規模化・法人化を契機に新たに取り組んだもう一つの事業が…

イチゴハウス。

イチゴ栽培を担当するのは震災後に農業に就いた若手社員。経験が少なくても栽培ができる秘密はIT化にあるといいます。

こちらの箱には温度と湿度を測るセンサーが内蔵されています。

シーサイドファーム波路上の鈴木論さん。
温度によって天窓が開いたり、カーテンが閉まったり。

この中にチューブが入っていて、液体肥料が流れたり自動制御で一括管理できる。

コンピューターでハウスの中の温度や湿度などを制御。窓を開けたり、送風機を回したり、全て自動で行い、イチゴに適した環境を作り出してくれます。

データで管理できれば一定の収穫量を保つことができる。

シーサイドファーム波路上のイチゴは評判を呼び、今年のバレンタインでは企業とともにチョコレートを開発。

日本橋三越本店で販売しました。

妻のため、地域のためにと挑戦した新しい農業。会社の利益は年々上がってきていて2年後の黒字化を目指しています。
生涯の仕事だと思っている。何とか成功したい。
