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[WBS]どうなる日本の権益!ロシア サハリン2新会社設置へ

2022年8月4日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

日本で電気料金の高騰や電力のひっ迫が問題となる中、新たな悩みのタネになる可能性が出てきました。それがロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」です。ロシア政府は運用する新たな会社の設立を決めました。商社大手の三井物産と三菱商事が出資していて日本にとって関わりの深いサハリン2ですが新会社の設立は日本にどのような影響を与えるのでしょうか。

サハリン2 ロシア新会社設立!日本 権益維持へ「極めて重要」

石油・天然ガスの開発事業「サハリン2」。ロシア政府は2日付でサハリン2の運営を引き継ぐ新たな会社を設立するとの政令を出しました。

今回の決定はロシアのウクライナ侵攻に対する欧米諸国の経済制裁への対抗措置とみられます。

萩生田経産大臣

わが国のエネルギーの安定供給のためにはサハリン2は極めて重要な拠点で維持を続けていくことに基本的に変わりありません。

現在のサハリン2の運営会社「サハリンエナジー」にはロシアの天然ガス企業「ガスプロム」をはじめ日本の三井物産と三菱商事が出資しています。日本側が今後の権益を維持するには新会社の設立から1ヵ月以内にロシア政府に出資を続ける意向を通知する必要があり、日本政府は三井物産・三菱商事と通知に向け調整に入りました。

三井物産

影響・内容を確認・分析中。日本政府を含むステークホルダーと今後について協議し適切に対応する。

三菱商事

内容を精査する。今後の対応については政府やパートナーと連携の上、検討する。

しかし、経産省の幹部は…

経産省 幹部

三井物産と三菱商事が新法人に行かない理由はない。
ただロシア側がどんな条件を付けるか分からないので予断を許さない。

なぜこれほどサハリン2が重要視されるのでしょうか。

年間およそ1,000万トンのLNGを生産しているサハリン2。そのうちの6割、およそ600万トンを日本は輸入していて、年間の輸入量のおよそ8%に相当します。

日本にとってのメリットはまずは地理です。タンカーで3日ほどで輸送できます。中東と比べて時間も輸送コストも抑えられるのです。

さらに価格の安さ、サハリン2の長期契約価格は単位熱量あたり10ドル台とみられ足元のアジアのスポット、随時契約市場の40ドル台と大きな差があります。

電力不足や電気料金の上昇という課題を抱える日本にとって安定的な調達先として重要性が高まっているのです。

サハリン2 ロシア新会社設立!企業の調達 電気料金は?

サハリン2からLNGを調達しているのは東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資するJERAや東京ガスなど。専門家はサハリン2から調達ができなくなればその影響は大きいと指摘します。

影響① 電力・ガス会社の調達は?

総合商社のエネルギー部門出身
高井裕之さん

サハリン2以外の長期契約先と交渉し、増量が可能かどうかということをやる。
その上で不足する分に関してはスポットで調達することになると思う。

しかし、ロシアがヨーロッパの経済制裁へ対抗する形で天然ガスの供給を大幅に削減する中、世界的にLNGのスポットの需要が増加。アジア向けのスポット価格はウクライナ侵攻前に比べて2倍に上昇しました。今後、さらに上昇する可能性があるといいます。

影響② 電気料金はどうなる?

電力会社は発電に使う燃料費の上昇分を電気料金の値上げで家庭や企業に転嫁することができます。ただ値上げできる料金には上限があり、すでに多くの電力会社が上限に達していますが…

総合商社のエネルギー部門出身
高井裕之さん

一般家庭の電気代が何倍に跳ね上がるのはそう簡単にはいかないと思う。
企業に対する工場で使う電気や大きなビルで使う電気に関しては一般家庭よりも早く燃料価格の上昇が跳ね返ってくるようになると思う。

そうした中で日本が期待を寄せるのが世界有数のLNG生産国オーストラリアです。先月には萩生田大臣が訪れ、LNGの増産を求めました。しかし、ある懸念も。1日に現地の独立機関がガスの輸出規制を検討するようオーストラリア政府に勧告。増産どころか輸出を規制しかねない事態になっているのです。

経産省の幹部は…

経産省幹部

オーストラリアの動きはロシアと合わせて不安・リスク要因になってしまった。中長期の輸入に影響が出ないように政府に働きかけをしていくしかない。

総合商社のエネルギー部門出身
高井裕之さん

安いLNGを買えるという状況には今ない。調達コストは間違いなく上がるとみていい。

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