先端半導体の確保をはじめ、サプライチェーンを抜本的に見直す動きが加速していますが、アメリカのバイデン政権が中国に対して強化した半導体の輸出規制にも大きな注目が集まっています。この規制強化についてアメリカの政府高官は日本も追随するだろうと発言しました。こうしたアメリカ側の政策によって対応を迫られる日本企業も出始めています。
アメリカ 半導体対中規制強化の余波
中垣キャスターが訪ねたのは都内にある半導体の専門商社「菱洋エレクトロ」。
見せてもらったのは温度や湿度、二酸化炭素などのデータを集める台湾製のデバイス。
中を見ると…
菱洋エレクトロ
大橋充幸常務執行役員
センサー用の半導体。
通信をするための半導体。
半導体といっても種類や用途は実にさまざま。データの演算処理などを行い、デジタル機器の中核を担うロジック半導体やデータやプログラムを記録する半導体メモリ、ほかにも電気の流れなどを制御するパワー半導体や通信用の半導体などがあります。
菱洋エレクトロはこうした様々な半導体を国内・海外合わせて50社以上から仕入れ、顧客に販売しています。
中垣正太郎キャスター
半導体の輸入はどこから?
菱洋エレクトロ
大橋充幸常務執行役員
もともと日本から始めて米国、ヨーロッパ、今メインとしては台湾、中国。
中垣正太郎キャスター
中国の半導体のクオリティーは?
菱洋エレクトロ
大橋充幸常務執行役員
安かろう悪かろうというイメージを持っていると思うが今、中国の半導体においてもほとんど製造装置は日本製、米国製を使うので品質に関してはもう遜色がない。
中国が半導体を作る際に使う製造装置のおよそ8割はアメリカと日本の装置だといいます。
半導体を重要産業と位置づける中国政府の方針もあり、技術力は向上しています。
こうした中、アメリカのバイデン政権は10月、中国に対する先端半導体の輸出規制を大幅に強化しました。
米中対立が激化する中、中国が先端半導体を大量破壊兵器や最新の軍事システムに利用するのを防ぐ狙いです。
佐々木明子キャスター
アメリカの中国に対する半導体の規制強化の内容が大きな波紋を呼んでいるようですね?
中垣正太郎キャスター
規制対象の拡大については大きく2つに分けられる。
まず半導体製品そのものについてです。
これまでAI(人工知能)向けなど最先端の半導体からスマートフォンやパソコン、データセンターなどに使われる半導体まで拡大されました。
この他、先端半導体を製造する装置やソフトウエアも輸出規制の対象になったほか、中国企業で働くアメリカ人も審査対象となりました。
佐々木明子キャスター
最新鋭の軍事装備品の開発に直結するような技術、装置、人材を押さえているという形になります。
中垣正太郎キャスター
そしてアメリカは同盟国、つまり日本に対しても同じような対応をするように求めていて、先週アメリカの政府高官の発言が注目を集めました。
アメリカ 半導体規制で日本企業は…
アメリカ
レモンド商務長官
中国への半導体輸出規制について日本とオランダが私たちを追随するだろう。
アメリカのレモンド商務長官は11月3日に中国に対する先端半導体の輸出規制について日本も追随するという考えを示しました。
この発言について西村経済産業大臣は…
西村経産大臣
アメリカを含む各国の規制動向を踏まえて引き続き適切に対応していきたいと考えている。
日本企業に影響は出るのか、半導体事情に詳しい専門家に話を聞きました。
中垣正太郎キャスター
日本も輸出規制強化となると影響は?
インフォーマインテリジェンス
南川明さん
日本の半導体の製造設備は2~3割が対中国ビジネスなので、そこがかなり失われてしまう。
一方、アメリカのビジネスが上がっているのでビジネス的な観点からすると、それほど大きな影響ではないかもしれない。
台湾有事を見据えてアメリカ政府はいま国内での半導体生産を拡大するため補助金制度を導入。
これまでに台湾のTSMCや韓国のサムスン電子がアメリカでの工場建設を表明しています。
そのため製造装置の需要増加が見込まれています。
ただ一方で将来的に懸念すべきことが…
インフォーマインテリジェンス
南川明さん
日本がいま強い製造設備、装置、材料などの中国の競争力を上げてしまう。
いま規制することによって。
長期的には中国が強くなってしまうので、気をつけないといけない。