人口減少などの影響で赤字に苦しんでいるのが路線バスです。
コロナ前の2019年度ですでに全国の路線バスのじつに74%が赤字に陥っていました。
新型コロナによりさらに状況が悪化する中でなんとかお客さんを呼び戻そうと宇宙一面白いバスを謳った取り組みを始めたバス会社を取材しました。
赤字解消の秘策は…バズるおもしろバス
岡山市内のとあるバス停にやって来た一台のバス。
車内に乗り込んでみると、バスの中が観葉植物で溢れています。
窓の近くには空気清浄機が。
モニターには癒し系の動画も。

爽やかだなと思った。
朝から緑を見て気分が良くなった。
このユニークなバスを手掛けたのは岡山県を中心に路線バスを運営する両備グループ。
コロナ前に比べて乗客数は3割減少し、昨年度は過去最大およそ14億円の赤字に陥りました。
そこで改革に乗り出したのが3年前からグループを率いる松田敏之社長。
両備ホールディングス
松田敏之社長

このままだと地方のバスがなくなってしまう。
日本一面白いのではなく、「宇宙一面白い」くらいを考えて本気でサービスを展開していく。
瀬戸内を走るバスが瀬戸際に追い込まれているとユーモアを交えたラッピングバスを走らせてバスの利用を呼びかけています。
そして月に1度のペースで実施しているのが季節などのテーマに沿って内装を変えるプロジェクト。
緑に覆われたこのバスの名は5月病を吹き飛ばすことをテーマにした「5月のモヤモヤふっ飛バス」です。
第一弾は今年1月、夜間限定で走らせた「幸運のプラネタリウムバス」。運賃は通常と同じ、親子連れがわざわざ乗りに来て乗客数は4割増えました。
2月から走らせているのが「宇宙一アートな路線バス」。瀬戸内ゆかりのアーティストの作品をバスに乗りながら鑑賞できます。
スマホでQRコードを読み込むとその場で作品を購入することもでき、これまでに8つの作品が売れました。
両備ホールディングス
松田敏之社長

負のスパイラルの流れを止められないか。
今までの汗のかき方では間に合わない。
一気にできることをしていく。
だけど深刻になってはいけないから楽しく真剣にできるようにしよう。
5月下旬、本社では6月に走らせるバスの企画会議が開かれました。
両備ホールディングス
平本清志さん

6月は梅雨なので雨が降ればお客様が増える。
松田社長が責任者に任命したのが平本清志さん。
両備ホールディングス
松田敏之社長

お客様が増える時だからホスピタリティーを発揮してリピーターを増やしていく。
両備ホールディングス
平本清志さん
雨が降って少し嫌な気分になるけれど虹があったら晴れやかになる。
アジサイ、6月ですから。

梅雨の時期にどんなサービスが求められるのか議論は続きました。
2週間後。6月のテーマに合わせてバスを飾り付けする日です。
今回のテーマは梅雨にかけた「To You あなたに向き合いバス」。
車内に入ってみると鮮やかな虹のカーテンが。
そして袋から取り出したのはカラフルなてるてる坊主。
両備ホールディングス
平本清志さん

近隣の幼稚園児に作ってもらった。
虹と一緒につけていく。
梅雨時の憂鬱な通勤・通学の時間を少しでも楽しく過ごしてほしいというアイデアです。
濡れた顔や手が拭ける無料のフェイスタオルを用意する気の配りよう。
松田社長が仕上がりを見に来ました。
車内には販売用の傘が置かれ、傘袋も用意されていました。
両備ホールディングス
松田敏之社長

ホスピタリティーが増してきた。
やるやん。
そして6月14日の岡山。中国地方が梅雨入りしたこの日は普段より多くのお客さんが乗っています。

カラフルでかわいい。
めちゃインスタ映え。
雨に引っ掛けて飴も無料提供。

かわいい。
単なる移動手段と思われている路線バスに楽しさや快適さを加えることが乗客を呼び戻す鍵を握っているのかもしれません。