先日、宇宙飛行士の野口聡一さんが半年ぶりに宇宙から帰還しました。今回の滞在中に行われたミッションの一つは私たちにとって宇宙の存在がより身近になるようなプロジェクトでした。
リーマンサットスペーシズ
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3月、国際宇宙ステーションに滞在中の野口聡一さんが取り組んでいたのは日本で作られたある人工衛星を宇宙に放出する作業でした。
宇宙空間に放たれたのは一辺がおよそ10cmの超小型人工衛星です。
東京・江戸川区の町工場にこの衛星の1つを作った人たちが集まっていました。
よし行こう。
行きます。
通信が返ってきている。
彼らはJAXAの職員でも大学の研究者でもありません。
杉山洋憲さん、
普通の会社員、基盤の設計をやっている。
古川頼誉さん、
半導体を設計する会社で働いている。
趣味で宇宙開発をするサラリーマンの集団「リーマンサットスペーシズ」。5年前に設立されました。
メンバーの中には高校生も…
辻紅那さん、
人工衛星や探査機を設計するエンジニアになりたい。
野口さんが滞在中に宇宙に飛ばしたのがこの人工衛星「セルフィッシュ」。
プロジェクトリーダーの三井龍一さんが考案しました。
アームを出して伸びたらカメラで自分を撮影する人工衛星。
自分たちがつくった衛星が宇宙で頑張っている姿を見たい。
内蔵するカメラで青い地球をバックに自撮りをするために開発された人工衛星です。
この小さな衛星を作るために100人ものメンバーが平日の夜や休日を費やして作業をしました。
これは実験用に宇宙空間を再現する真空チャンバー。100万円以上しますがメンバーが購入したものです。
さらに人工衛星と通信するアンテナもメンバーが部品を持ち寄りベランダに立てました。
この団体を立ち上げる時の目標が宇宙開発の裾野を広げていくこと。
趣味で人工衛星をつくり、宇宙開発のスピードが速くなればいい。
2年半かけて去年の夏ついに完成。製造コストは材料費だけの300万円ほどでした。
そんな素人集団がつくった人工衛星のアイデアと性能がJAXAに認められ今回、宇宙に飛ばすことができたのです。
自撮り衛星と通信ができるのは1日わずか20分だけ。
少しづつデータを受信してどんな社員が撮れたか6月末に公開します。
リーマンサットの経験によって人生が大きく変わろうとしているメンバーも。
大手バイクメーカーのデザイナーだった山下鉱生さん。
セルフィッシュのデザインを手掛けたことを契機にこの春、転職をしたのです。
デザインの力で宇宙開発に貢献できたり、自分の夢を本業としてかなえることができるのであればチャレンジしない手はない。
リーマンサットにすごく背中を押された。
4月のある日、山下さんが静岡から上京してきました。
ここが新しい職場。社員36人のベンチャー企業「デジタルブラスト」。
宇宙に関連するビジネスなら何でも手掛けるコンサルティング会社です。
堀口真吾社長、
山下さんと一緒にやっていきたいのは"宇宙植物実験プラットフォーム"。
将来、月面での植物栽培を視野に入れた実験装置を山下さんがデザインすることに。
民間でやるからにはデザイン性も含めてやっていきたい。
ワクワクする。
初日からフルスロットル。
活躍の舞台を宇宙に移し、夢への一歩を踏み出しました。
宇宙×デザインであったり、人材が異業種からどんどん来ないと宇宙業界は盛り上がっていかない。
そしてリーマンサットの他のメンバーたちは次の衛星の開発に取り掛かっています。
光を放つ物体を人工衛星から放出し、3つつなげて星座のように見せるという世界で初めての試みです。
宇宙開発の裾野を広げるリーマンサットの活動に野口さんは、
従来の産官学共同の枠組みを超えて純粋に民間だけのアイデアで宇宙に挑戦できる時代が来た。
その時代の真っただ中にいる。