ロシアや中国、インドなどが参加する上海協力機構の首脳会議は9月16日に全体会合を開き、アメリカを念頭に制裁や内政干渉に反対する首脳宣言を採択しました。ウクライナ侵攻によって孤立を深めるロシアのプーチン大統領は中国に続いてインドとも首脳会談を行い、欧米各国に対抗しようとしています。
ウクライナ集団墓地で445人の遺体
ロシア参加の会議で「制裁反対」採択
ウクライナ中部クリヴィー・リフ。ゼレンスキー大統領の生まれ故郷です。
ドニエプル川中流にあるダムが破壊され、周辺一帯に水があふれました。
地元当局はロシアによるミサイル攻撃だと主張し、浸水被害は100世帯以上にのぼるとしています。
一方、ウクライナがロシアから奪還した東部ハリコフ州の要衝イジュム。森の中から発見されたのは集団墓地です。
捜索隊

墓標には17人と書かれているが20~25人が埋葬されているとみられる。
あす遺体の数を確認する。
地元警察は集団墓地で445人の遺体を確認したと発表。住民の遺体とみられています。
次第に明るみになる民間人の被害。
こうした中、EU(ヨーロッパ連合)のフォンデアライエン欧州委員会は首都キーウでゼレンスキー大統領と会談しました。
EUヨーロッパ委員会
フォンデアライエン委員長

EUの加盟プロセスは順調に進んでいる。
欧米によるウクライナへの軍事支援などを受け、一部地域で撤退を余儀なくされたロシア。
ウクライナ侵攻によって孤立を深める中、プーチン大統領が関係強化を目指しているのがアジアなど非欧米諸国です。
サマルカンドで行われている中国とロシアが主導する国際的な枠組み「SCO(上海協力機構)」の首脳会議。加盟8ヵ国にオブザーバーのインドやトルコを含む合わせて14ヵ国が出席しました。
会談ではサマルカンド宣言を採択。欧米による対ロシア制裁を念頭に「国連安全保障理事会の認めていない一方的な経済制裁は国際経済に悪影響を引き起こす」
ロシア
プーチン大統領

われわれは世界全体とともに協力するために開かれている。連携は閉鎖的なものではない。。
中国
習近平国家主席

外部勢力の扇動による革命を防ぎ、いかなる口実であれ、他国の内政干渉に共同で反対する。
アメリカを軸とする西側に対抗する姿勢を鮮明にしました。
ロシア"アジア転換"の勝算は?
インド首相「今は戦争の時代ではない」
プーチン大統領が首脳会議に合わせて行ったのが各国との会談です。
9月16日に行われた中国の習主席との会談でプーチン大統領はウクライナ情勢をめぐって中国側が抱く疑問や懸念について理解しているとしつつ、中国の台湾政策について指示する姿勢を表明。
さらにモンゴルを加えた3ヵ国での首脳会談も開催。ロシアの天然ガスをモンゴル経由で中国に運ぶパイプラインの建設計画を積極的に推進することで合意しました。
そして9月17日に行われたインドとの首脳会談ではこんなやり取りが…
インド
モディ首相

今は戦争の時代ではない。
ロシア
プーチン大統領
われわれは可能な限り早く終結させたい。

9月7日に開かれた国際経済フォーラムでアジア太平洋地域とのパートナーシップはロシアに新たな機会を開くと強調し、アジアの将来性を称賛したプーチン大統領。
アジア重視の狙いについて専門家は…
防衛研究所
兵藤慎治政策研究部長

苦境に立たされたロシアが中国やインドなどにエネルギー輸出を強めようとしていて、それ以外の国にも輸出先を拡大していきたいと。
西側諸国の制裁で経済的に苦境に立たされる中で、そこをいかに打開していくか、そのためにもアジア地域の国々との連携を図りながら、その抜け道を探りたいという思惑もあるのではないか。
侵攻から半年が過ぎ、外交攻勢を活発化させるロシア、来週にはラブロフ外相が出席する予定の国連総会があり、プーチン大統領も来月にカザフスタンで行われる国際会議「アジア相互協力信頼醸成会議(CICA)」や11月にインドネシアで行われるG20(20の国と地域の首脳会議)にも出席する見通しです。
しかし、専門家はロシアが描くアジア戦略は順調にいかないだろうと指摘します。
防衛研究所
兵藤慎治政策研究部長

ロシアのこれまでの同盟国、友好国の間でもロシアと距離を保とうとする国が出始めている。
「アジア転換」を果たしながらアジアで友好国を拡大していきたいというロシアの狙いはなかなか難しいところがあるのではないか。
日本をけん制する動きを中国と軍事的な連携を深めながら、ロシアが強めていく。
そのあたりは日本としても十分に警戒していく必要がある。