ロシア政府は北方領土を対象に日本人と現地に住むロシア人が旅券や査証なしで互いに訪問するビザなし交流などに関する合意を一方的に破棄する政令を出しました。極東地域で大規模な演習を続けているロシアがなぜこのタイミングで破棄に踏み切ったのでしょうか。
ロシア「ビザなし交流」一方的破棄!北方領土元島民から憤りの声
ロシア
プーチン大統領
とても美しい鳥だ。
プーチン大統領が訪れたのはタカの繁殖センター。腕に乗ったタカを見つめ、1羽1羽丁寧に触れ合いました。
ロシア極東のウラジオストクに滞在中のプーチン大統領。9月6日に極東一帯で実施中の戦略的軍事演習「ボストーク2022」の現場を視察しました。
演習はロシアをはじめ、中国やインドなど14ヵ国の5万人以上が参加。演習エリアには日本海やロシアが実効支配する北方領土も含まれています。
その北方領土をめぐり新たな動きが。日本の元島民らと北方領土のロシア人が大概に訪問できる枠組み「ビザなし交流」。そして元島民が簡素化された手続きで北方領土を訪問できる「自由訪問」。これらに関する合意を一方的に破棄したのです。
この決定についてロシア側は…
スルツキー下院国際問題委員長
制裁で圧力をかけ、欧米の反ロシア政策に加わる日本への返答だ。
ただ、ビザなし訪問のもうひとつの枠組みで旧ソ連時代から半世紀以上に渡って続く元島民や家族による「北方墓参」には言及はありませんでした。
これに対し日本政府は…
松野官房長官
極めて不当であり、断じて受け入れられない。
ロシア政府に抗議したことを明らかにしました。
北方領土を部隊に軍事演習をしたうえ、平和的な交流も途絶えてしまうのか。一連の事態に元島民からは憤りの声があがっています。
択捉島 元島民
松本侑三さん
一方的な破棄という話なのでかなり強い憤りとものすごく虚脱感を感じる。
択捉島の元島民、松本侑三さん(81歳)。6歳まで択捉島で暮らし、これまでに16回ほどビザなし交流などで故郷を訪れていました。
それが今回、一方的な合意破棄となり松本さんはこれまでの活動で培ってきたものがなくなることの危機感を持ったといいます。
択捉島 元島民
松本侑三さん
このまま平和条約交渉も何もなしでボツになっていくという、全部なしになっていくという形になるのを一番恐れている。
今回の極東の軍事演習中での一方的な合意破棄、その狙いは日本をけん制することにあると専門家はいいます。
防衛研究所
兵藤慎治政策研究部長
「ビザなし交流」もロシア側が破棄することで政治的にも日本をけん制している。
北方領土問題にかかわる平和条約凍結交渉はなかなか厳しい状況に追い込まれて、もう交渉自体が見通せない状況。
ウクライナ 原発周辺で続く攻防!ロシアは北朝鮮から砲弾購入か
対日強硬姿勢を強めるロシア。
一方、侵攻が続くウクライナでは新たな危機が訪れています。
ウクライナ
ゼレンスキー大統領
ロシアにより原発は放射線災害の一歩手前まで来ている。
ウクライナ国営の原子力企業は南部のザポリージャ原発で6号機の予備送電線が砲撃による火災が原因で外部電源から切り離されたと発表。
ウクライナメディアによると外部電源喪失は8月に続いて2回目で、エネルギー相は「原発周辺で戦闘が続いており修復は困難だ」として第事故につながる可能性を警告しました。
専門家は今後も原発周辺の攻防が続くと指摘します。
防衛研究所
兵藤慎治政策研究部長
ロシアはウクライナ南部でアメリカからウクライナに供与された武器でロシアの軍事拠点や補給拠点が破壊されている。
唯一原発がウクライナ軍が攻撃しにくい砦みたいなところがあり、ここを軍事拠点化しているのではないかと見ている。
原発を巡る不安定な状況はまだ続くと思う。
こうした中、ニューヨーク・タイムズはアメリカの情報機関がロシアが北朝鮮から砲弾を購入していると報じました。欧米が課している制裁がロシアの軍事物資の調達に影響を与え、深刻な兵器不足に陥っていると分析しています。
その上でアメリカ当局者の話として「ロシアは北朝鮮からさらに購入を進める」との見方を伝えています。
侵攻から半年以上経過したウクライナ情勢。年内に局面打開の可能性はあるのでしょうか。
防衛研究所
兵藤慎治政策研究部長
残念ながら今のこの戦争の出口は全く見通せていない。
その糸口すらつかめない。
長期戦の中でどちらが先に消耗するのかという、長期の戦いをプーチン大統領は想定している。