大浜見聞録です。今回はゲリラ豪雨、いまの時期から9月にかけてが本番ではないかといわれています。ゲリラ豪雨は予測がとにかく難しいと言われ続けています。ただここ最近、予測の精度が上がってきているということです。最近の研究を取材しました。
ゲリラ豪雨を予測する!30分先が分かる最新技術
短時間で強烈な雨が降ることでさまざまな被害をもたらすゲリラ豪雨。2008年、兵庫県の都賀川でたった2分間で1メートル以上、川の水位が上がり5人の命が失われる水害事故がありました。これをきっかけに予測に向けた研究が活発化。当時、予測は不可能と言われましたが14年経っていま研究の成果が出始めています。
ゲリラ豪雨研究の第一人者、予測はどこまで可能なのでしょうか。
理化学研究所
データ同化研究チーム
三好建正チームリーダー
30分先までゲリラ豪雨を予測。
ベストシナリオでは30分前に分かる。
予測と実際の観測データを比較したもの。実際の豪雨にかなり近い形で予測できていることが分かります。
これを可能にしたのが日本一の計算能力を持つスーパーコンピューター富岳です。
理化学研究所
データ同化研究チーム
三好建正チームリーダー
富岳の中にメッシュ状(四角)に区切った大気のデータを入れてゲリラ豪雨の発達・発生を計算している。
ゲリラ豪雨の雨雲を現在気象庁が使っている分布予報の技術で予測しても範囲が大きすぎて同じように見えてしまいます。そこで富岳を利用して分析範囲を100分の1に細分化したことで雲の密度なども分かるようになり正確な予測ができるようになります。
去年行われた実証実験では既存のアプリと連携してゲリラ豪雨の予測をすることができました。また気象データの取得技術も進化しています。
理化学研究所
データ同化研究チーム
三好建正チームリーダー
このレーダーが無ければゲリラ豪雨を見ることすらできない。
東芝インフラシステムズや情報通信研究機構などがが開発した気象レーダー「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ」は海上自衛隊が所有するイージス艦に搭載されているものと同じ仕組みです。特徴は雨雲を立体的に観測できることと観測速度が速いこと。従来の気象レーダーは細い線で雨雲を探索するのに対して幅広い面で一気に観測できるため観測速度が10倍になりました。このスピードが予測の大きな武器になります。
一方で実用化に向けては課題もあります。
理化学研究所
データ同化研究チーム
三好建正チームリーダー
富岳を使わなければいけないのが課題。
コンピューターの性能が上がって気象庁が使うコンピューターで富岳と同じようにできれば実用化できる。
ゲリラ豪雨の研究はこんな場所でも。東京スカイツリーの展望台のさらに上で行われているのは雲と雨粒を直接観測するというもの。レーダーだけでは分からない雲の密度などを観測しています。
大浜平八郎キャスター
下からレーダーで雲の様子を見ても雲の濃度や密度は分からない?
防災科学技術研究所
大東忠保主幹研究員
ある程度は分かるが正確な量が分からない。
正確な量を測るためには雲の中に入らなければいけない。
最適な場所が高い所、だからスカイツリー。
大浜平八郎キャスター
スカイツリーがなかった場合は?
防災科学技術研究所
大東忠保主幹研究員
飛行機での観測が多い。
飛行機は常時飛べない。費用も高い。
ここは雲さえかかれば長期間豊富なデータが取れる。
ここで取れる正確なデータはゲリラ豪雨の雨雲の発達をシミュレーションする際の精度向上につながっています。
ここで平太郎の「へぇ~」ポイント。
人の活動量で天気は変わる
この施設で雲と一緒に観測しているのはエアロゾルと呼ばれる空気中のチリ。人の活動によってエアロゾルが増えることで雨雲の発達の仕方に影響を与えることが分かってきました。
防災科学技術研究所
大東忠保主幹研究員
雨粒はエアロゾルが核になってできる。
エアロゾルの多い少ないによって雲の量が変わる。
大浜平八郎キャスター
都心と地方で違ったりする?
防災科学技術研究所
大東忠保主幹研究員
都市域はエアロゾルが多い。雲の発達の仕方が変わるのではといわれている。
世界的なトピックになっている。
ゲリラ豪雨の被害を防ぐ!耐水外住宅の実力は
一方、大雨を予測できても逃げられないのが住宅です。この問題を新たな発想で解決しようとする企業があります。
取材をしたのは栃木県にある体験施設「一条工務店 栃木ハウジングテクノロジーセンター」。
大浜平八郎キャスター
実際に実験が始まります。この建物は実験用にプールの中に家が建っている状態です。
家の周りにどんどん水が入っていき、あっという間に水位が上がりますが内側は…
大浜平八郎キャスター
漏れていないです。水が入ってきたら床上浸水です。
高い防水性能で推移が窓の高さを超えても家の中に水が入ってきません。さらに…
大浜平八郎キャスター
実は家ごと浮き始めている状況です。防水だけでなく、水に囲まれた時に家自体が浮いて家を保護する。
家をまるごと浮かせる実験の様子。家が浮くだけでなく、水の逆流を防ぐ仕組みや水位が上がっても水に浸かりにくい高い位置にエアコンの室外機などを配置しライフラインが途切れない工夫。浮いた家が流されな仕組みも施されています。
費用は35坪の場合でおよそ77万円と安く抑えられているのも特徴です。
一条工務店
黒田哲也さん
2020年9月から発売を開始して今年6月時点で1,700棟の申し込みがあった。
たくさん反響があってびっくりしている。
もっと水害が危険だということを住宅を介して周知していきたい。
突然襲う豪雨災害。最先端の気象予報の研究、家屋の強化、被害の軽減に向けた努力は続いています。