実用化に向けて研究開発が進む量子コンピューター。
量子コンピューターは量子力学を応用した次世代のコンピューターのことで今のコンピューターが苦手な計算も素早くできると期待値が上がっています。
世界中を見てみるとアメリカや中国が進んでいるといわれていますが、国産の量子コンピューターの開発はどうなっているのか。
開発の最前線の現場に初めてテレビカメラが入ることができました。
国立研究開発法人理化学研究所
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今年7月、国内で初めて量子コンピューターの商用機の稼動が始まりました。
東京大学や慶應義塾大学のほかトヨタ自動車やみずほフィナンシャルグループなど12社はこの商用機を使用し、素材の開発や金融分野への活用に向けて研究を進めます。
この量子コンピューターはアメリカのIBMが開発したものです。
一方、国産の量子コンピューターを開発しようという動きも急速に進んでいます。
今回、テレビ東京のカメラが開発現場に入りました。テレビカメラが入るのは初めてです。
今年4月に理化学研究所が立ち上げ、富士通などが参加しています。
国産の量子コンピューターは海外の量子コンピューターとどのような違いがあるのでしょうか。
理化学研究所の量子コンピューター研究センター、中村泰信センター長。
われわれは拡張性を考えて設計している。
拡張性を重視することにより機能の強化がしやすくなり、変更にも柔軟に対応が可能だといいます。
全体で量子コンピューターのシステム。
たくさん見えているのは量子コンピューターのチップを制御するための電気の配線。
量子コンピューターのチップは電子レンジと同じマイクロ波で制御。
チップはぶら下がっていて信号を入れたり出したりして計算させる。
開発を進めているのは世界で主流となっている超伝導式量子コンピューターです。
外側は冷却装置で、中には量子コンピューターが入っていて電気の配線の先端に1cm四方の量子チップをつなげて制御しています。
この規模の量子コンピューターだとできることは限られている。
スーパーコンピューターのように大規模な計算をするためにはもっと大規模な量子コンピューターが必要。
まだ量子コンピューターの研究はそこまで進んでいない。
実用化に向けた開発には量子コンピューターの大型化が必要です。
そのためには制御する機器を増やしたり、チップを低温で動かすための冷却装置を強化したりしなければいけません。
開発拠点の立ち上げでこれまでバラバラだった研究者が同じスペースで幅広い分野の研究を進めることができるようになりました。
今後の課題としてハードとともにそれに適したソフト面のアプリケーションの開発の重要性が見えてきました。
富士通研究所の量子コンピューティング研究センター、佐藤信太郎センター長。
最終的にビジネスに落とし込むには量子コンピューターを使いこなせればいい。
ハードのことが分かっていないといいアプリケーションが作れない。
このプロジェクトには内閣府や文部科学省、総務省なども参加しています。理化学研究所や富士通の担当者と定期的に会議を開き、縦割りでは見えにくかった課題を浮き彫りにしていきます。
内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局、増田幸一郎政策企画調査官。
日本は高い技術力は持っているが最終的に事業で負ける。
どのように産業に生かしていくか。
政府としても何とかしなくてはという思いがある。
技術を作るベンダー(供給元)だけでなくて、ユーザー企業もしっかり入ってお互いに議論をすることでどういうものが必要になるか導き出してほしい。
ハードとソフト、両面の開発を進めることで大きな課題が浮かび上がってきました。
文部科学省の量子研究推進室、河原卓室長(取材時)。
量子分野は人材の層が限られている。
周辺技術を含めた人材をどう拡大していくか。
人材育成のために教育環境をどのように整備していけばいいのでしょうか。
今年4月、東京大学は量子コンピューターに関する教育機関を開設しました。
機関立ち上げの目的を責任者は次のように語ります。
東京大学の理化学系研究科物理学専攻、浅井祥仁教授。
圧倒的に人材が不足している。
学生も教える側も大きく不足している。
量子とコンピューティング、両方の知識が必要になる。
教える側も数は限られている。
全学で100人を超える学生が受講。
文系からも来ていて期待は非常に大きいと感じている。
学生はなぜ量子コンピューターの研究に関心を持ったのでしょうか。
東京大学大学院の大久保龍之介さん。
物理をしていてもほとんどの分野がビジネスで役に立たないと思っていた。
量子コンピューターは社会に対して貢献できると感じた。
東大では実践的な人材の育成を進め、この分野の人材の厚みを急ぎます。
プログラムを書いたり、量子コンピューターの制御をしたり、ハードウェアを開発する研究者や開発者が必要。
そういう人を中心に育てたい。
動き出した国産の量子コンピューターの開発。横断的に人材を活用し、この分野で世界をリードすることはできるのでしょうか。