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[WBS]海外支局が総力取材!"世界同時不況"の足音!?

2022年11月17日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ウクライナ侵攻の影響でエネルギーをはじめとした物価の高騰、そしてアメリカやヨーロッパの金融引き締めなどでいま懸念されているのが世界同時不況です。テレビ東京の海外支局が総力取材でその足音に迫ります。

世界経済が転換点を迎えるこの瞬間、日本はどう向き合えばいいのでしょうか。

"世界同時不況"の足音!?

中国ではあの高級時計に異変が…

ライトアップが消えたドイツの夜は暗闇に。

韓国ではローンの支払いで悲鳴。

そしてアメリカ屈指の家具の街で見たのは積み上がる在庫。

ヒッコリー・チェア
アレックス・シューフォード社長

人員整理が必要かも。

聞こえ始めた"世界同時不況"の足音。

その現場から緊急報告します。

アメリカ"炭鉱のカナリア"が告げる転換点

アメリカ南部ノースカロライナ州ヒッコリー。家具メーカーが多く集まる街で今ある異変が…

100年以上の歴史を持つ老舗メーカー「ヒッコリー・チェア」。職人がひとつずつ手作業で作る高級家具は有名映画のセットに使われることもあります。

その製造ラインを厳しい表情で見つめていたのは社長のアレックス・シューフォードさん。

ヒッコリー・チェア
アレックス・シューフォード社長

今年の5月中旬ごろから受注が減り始めた。

在宅勤務の広がりで活況となった住宅市場を背景に家具の売り上げも伸ばしてきました。

しかし…

FRB
パウエル議長

労働市場のひっ迫と高インフレを考慮して利上げが適切だと考えている。

今年3月以降、中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が金融引き締めに転じてから住宅ローン金利は急上昇。住宅を購入する人は減り、家具など関連業界も打撃を受けています。

ヒッコリー・チェア
アレックス・シューフォード社長

家具は景気減速の指標で炭鉱のカナリアのようなものだ。

消費者の買い控えはどれくらい進んでいるのでしょうか。

シューフォードさんの家具を販売する会社の倉庫を訪ねると買い手のつかない家具が積み上げられていました。

家具販売店の経営者

見ての通り、いつもより商品が積み上がっている。
消費者の購買意欲が鈍り、在庫が増えてしまっている。

コロナ禍からの急回復が進んでいたアメリカ経済。いまが転換点かもしれません。

ヒッコリー・チェア
アレックス・シューフォード社長

2024年になっても経済が弱ければ人員の削減を考えるかもしれない。
低価格帯の家具メーカーではすでに人員削減が始まっている。

中国「資産防衛」で人気は"金の豆"

中国・上海にある高級腕時計の専門店。

上海支局
菅野陽平記者

高級時計の代表といえばロレックスですが、その価格に変化が起きているといいます。

例えば中古のロレックスは今年2月の760万円から410万円まで下落。

芯閣鐘表
王COO

最高値と比べ3~4割下落している。
私がこの業界に入ってから最も大きい下落幅だ。

上昇の一途をたどってきた中古の高級時計の価格に異変が起きていました。

芯閣鐘表
王COO

今年初めに相場が良かったときは消費者は金融商品やコレクションとして買っていたが、今では実需がメインとなっている。

さらに日本円で260万円のシャネルや1,600万円のエルメスのバッグが並ぶブランド品のヴィンテージショップでも買取品の倉庫に異変が…

Aloooooha Vintage
陳宇栄社長

今年買い取った商品は去年より5割増えた。
数量としては月平均2,000点増えている。

お客さんが現金化のため売却するケースが増加。在庫を見てみると新品同様の品も多く並びます。

Aloooooha Vintage
陳宇栄社長

今年は新型コロナからの回復が予想に及ばず多くのお客様が資金繰りやビジネスに影響を受けている。

今年9月までの経済成長率は3.0%と低迷する中国。

春の上海ロックダウン以降、足元の景況感は急低下する一方で生活防衛のため預金残高は増えています。

一方で追い風が吹いているのが金の販売です。貴金属店には伝統的なデザインの商品が並ぶ中…

周大福ジュエリーグループ
陳世昌社長

こちらの「金の豆」はとてもかわいく贈り物やコレクションとして使える。
一粒の価格も高くない。
500元(約1万円)くらいだ。

1グラム単位から気軽に買える金の豆が人気。

さらに若者をターゲットにしたハローキティのネックレスも。

景気の先行きが不透明の中、資産防衛のため金の人気が今後さらに高まっていくと見ています。

周大福ジュエリーグループ
陳世昌社長

現金で持っていても価値は下がるし、インフレには勝てない。
これからも人々は大量に金を買うことになると思う。

ドイツ エネルギー危機「伝統が消える」

ドイツの首都ベルリン。夜の景色に異変が…

ロンドン支局
中村航記者

私の後ろに見えるのがベルリン大聖堂ですが、節電要請を受けて電気を消しています。
さらに奥のベルリンタワーも普段は付いているライトアップをしていない状態です。

さらに冬の風物詩、クリスマスマーケットにも一部で節電要請があったといいます。

来場者

今まで電気なんて問題にならず、ライトアップは当たり前だったのに。

異常事態は市民生活にも…

ベルリン市内で暮らすメイヤーさん。

ベルトン・メイヤーさん

これが今年1月に受け取った値上げの通知だ。

去年までは1キロワットあたりのガス代が6.25セント、年明けに7.5セントに値上げされ、今月は14.76セントと倍以上に。

ベルトン・メイヤーさん

5倍以上になっている人もいる。
今の状況で2倍はましな方だ。

エネルギーコストの急上昇は経済を支える中堅・中小企業にも深刻な打撃を与えています。

自動車部品などを手掛ける金属加工工場。熟練の職人が機械を使い作業を行います。

ジスマン・デュルクグル
ラルフ・ヘレ社長

業者から仕入れた材料を750度の高温で溶かさないといけない。

生産工程で大量の電気とガスを使用するため光熱費だけで月に4万ユーロほどかかります。これはウクライナ侵攻以前の契約のため次の更新での大幅な上昇は確実。

しかし、下請けの立場では生産量を減らすことができません。

ジスマン・デュルクグル
ラルフ・ヘレ社長

もともとはエネルギー代が「以前の9.5倍になる」と言われていた。
ドイツ政府が上限を設けたのでなんとか3倍には抑えられている。

政府は来年1月から電気代とガス代に上限を設定するなど総額2,000億ユーロのインフレ対策を行います。

しかし、90年以上続いた老舗の紙メーカー「ハクレ」が9月に破産申請をするなど政府の対策が間に合わず経営破綻する企業も。

エネルギー危機倒産は今後もさらに増えるとみられています。

政府も来年の経済成長の予測をこれまでの2.5%からマイナス0.4%に下方修正。

ジスマン・デュルクグル
ラルフ・ヘレ社長

私の意見ではもう景気後退に入っている。
景気後退によってヨーロッパ各国はロシアと対立しているという現実を目の当たりにする機会となるだろう。

韓国 住宅ローンに悲鳴「9%も?」

韓国・ソウル。ここにも同時不況への足音が…

ソウル支局
武部慎一記者

ソウル中心部に今年完成したマンションですが、不動産会社によるとまだ3割ほどしか購入者がいないということです。

入口付近にはいまも物件の案内が設置されたまま。

低金利を背景とした投資ブームもあり、2017年からの5年間でマンション価格は2倍に高騰。

しかし、今年に入り取引件数は去年の半分以下に落ち込み、価格も下落傾向です。

ソウルの不動産業者

金利のせいで不動産への心理が萎縮したことは事実だ。
売りかも買いもまったくできていない状態だ。

中央銀行の韓国銀行は物価高を背景に利上げペースを早めていて政策金利は10年ぶりに3%に。

マンションの購入者からは悲鳴が…

ソウル近郊に住むパク・ヨンミさん(仮名)。母と子どもと3人暮らし。去年11月、3,000万円ほどのローンを組んでマンションを購入しました。

しかし…

パク・ヨンミさん(仮名)

金利は5.74%。
3ヵ月で1%以上も上がった。

この3ヵ月でローンの金利が1%以上上昇。月の支払額は2万円以上増えたといいます。

現在、韓国の大手銀行の住宅ローン金利は5~7%台ですが、来年には9%近くになるという見方も。

不動産価格が急騰していた韓国、給与水準に合わない借り入れをした人も多く、家計の債務比率は世界トップクラス。

さらにおよそ8割が変動金利を選んでいて、利払いの増加は直接消費に影響します。

パク・ヨンミさん(仮名)

本当に家計への打撃となっている。
全てを減らすしかない。
食べ物、必需品、光熱費、全て節約するしかない。

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