東京オリンピック・パラリンピックに向かう人々の動きに注目する「ROAD TO TOKYO」。
今回は56歳の車いす陸上の金メダリストが再び頂点を目指すという物語です。一度は引退した元アスリートを再び勝負の世界に向かわせたのは最新テクノロジーを駆使する常識破りのエンジニア集団でした。
株式会社NTTドコモ
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東京スカイツリータウンの商業施設「東京ソラマチ」。
休日になると賑わいを見せる場所があります。
近未来的なレースゲームのようです。
VR(仮想現実)ゴーグルを付けて操作しているのは車いす。
実はこれはNTTドコモの次世代通信規格5Gを使って2020年、東京パラリンピックの競技を体験できる最新式のゲームです。
超速かった。
実際のアスリートと私がやるのでは差があると思うので興味が湧いた。
このゲームの開発に携わったのは埼玉にある小さな医療福祉機器メーカーです。
株式会社RDS
[blogcard url="http://www.rds-design.jp/"]
9月18日の正午前、そのメーカーを率いる男が都内の会場である発表をしようとしていました。
登壇したのはRDS社長、杉原行里さん(37歳)。
2025年には30%以上が65歳を超える日本では従来の固定概念は大きく変わる。
「車いす」は呼び名が変わるかもしれない。
杉原社長率いるRDSの新たな挑戦が発表されました。
伊藤智也選手
車いす陸上界のレジェンド、56歳の伊藤智也選手。
伊藤選手は2008年の北京パラリンピックで金メダルを2個獲得。ロンドンパラリンピックでも銀メダルを3個獲得したメダリスト。
その伊藤選手を現役に復活させ、RDSが開発した新たなレース用車いすで2020年、東京パラリンピックでも金メダル獲得を目指すというのです。
ランナーの新たな時代の幕開け。
チームのみんなが力を注いで、このマシンをいかに速く走らせるか。
そこに全てを懸けていきたい。
SS01(エスエスゼロワン)
この目標を叶えるための秘密兵器がこれです。
一見すると未来の車のように見えるこの機械は誰が座ってもその人が車いすのタイヤを回す力が最も強くなる位置が導き出せるシミュレーター「SS01(エスエスゼロワン)」です。
世界初。自社調べですが。
今後は個人の体に合ったもの。
人が車いすに合わせるのではなく、車いすが人に合わせる。
杉原社長の目標はこの機械を障害者だけでなく健常者にも使ってもらうこと。
将来的には座るだけで最適な椅子が設計できたり、腰の不調を分析できたりするといいます。
WF01TR
最適な座り方を分析できるこの機械を使って伊藤選手とはどのような取り組みが行われているのか。
シミュレーターの分析データを元に開発された車いすレーサー車「WF01TR」です。
まずファーストアタックとして乗ったときは違和感しかなかった。
速いのはめちゃくちゃ速い。
今まで遅いマシンに乗っていたので、その違和感を埋めていけたら。
現在のマシンが完成するまではおよそ2年の歳月がかかりました。
体の各部分の動きを3次元でも捉えるモーションキャプチャーなどを使い、伊藤選手の情報を全てデータ化。
このデータに基づき伊藤選手が最も力を出せるレーサー車が作ることができたといいます。
2012年に一度は引退した伊藤選手。現役復帰したのは杉原社長の熱い思いに応えたい思いが芽生えたからだといいます。
出る以上は頂点目指すのは当たり前。このマシンのポテンシャルを引き出すことによってどんな勝ち方ができるか楽しみにしている。
二人三脚で作り上げたマシンを使い、みるみるタイムを縮んでいきました。
現役時代、コンマ何秒短くするのに必死だったのが一気に3秒、4秒とタイムが縮みました。
本当にそこまでやるのかっていうぐらいやりとりした。
僕らのコミュニケーションにはやはり数字、共通の言語が必要だなと思って。
それから彼のいじめが始まるわけで。
全てのフォーム、体重の移動、マシンのしなり、全てを可視化した。
現在、伊藤選手は世界ランク4位という記録までたどり着き、本当に金メダルを狙える位置まで来ました。
しかし、杉原社長にとっては金メダルも通過点だといいます。
僕たちが目指すのは金メダルだけではない。
人が座るポジショニングによって発揮できる能力や感覚や体力的な消耗が大きく変わる。
それがこのプロジェクトを通じて分かった。
そこで学んできたものをいかに多くの人に自分ごと化してもらえるか、ここが一番。
自分ごと化ってすごい。