次世代半導体の量産を目指す新会社「ラピダス」が11月11日に記者会見を開き、日本の産業力を強化すると訴えました。そのカギを握るのがアメリカとの連携です。
テレビ東京は水面下で進んでいた半導体開発をめぐる日米の極秘交渉を独自に取材していました。
果たして日本の半導体産業の復活となるんでしょうか。
「次世代半導体」の舞台裏
日米極秘交渉を取材
ラピダス
小池淳義社長

世界と協力しし、最先端の半導体の量産を通じて日本の産業力を強化するとともに世界のものづくりをリードしていく。
日本の半導体産業の復活を謳い、次世代半導体の開発を目指す新会社「ラピダス」。
会長には東京エレクトロンの前社長、東哲朗氏。社長にはアメリカのウエスタンデジタルの日本法人の社長などを務めた小池淳義氏が就任したと発表しました。
実は遡ること2ヵ月前、総理官邸を東氏が訪れていました。そして小池氏の姿も…
ラピダス
東哲朗会長
(当時は就任前)

半導体のことで…
実はこのとき、次世代半導体の開発体制について岸田総理に報告し、了承を得ていたのです。
それから1ヵ月、アメリカ・ニューヨーク。到着したのは日本の半導体政策を担う経済産業省のチーム。
そして東氏。ある極秘のミッションを抱えてやって来たのです。
向かった先はアメリカの大手IT企業「IBM」。出迎えたのはIBMの幹部たちです。
IBMは現在の最先端といわれる回路の線幅が2ナノメートルの半導体の開発に成功しています。回路の線幅は細いほど高性能ですが、日本は40ナノメートルの開発力しかないとされ、世界から10年遅れているといわれています。
そこで日本は新たに発足するラピダスがIBMの先端半導体の生産を受託することによって一気に世界の先頭集団におどり出ようとしているのです。
IBMの幹部に聞くと…
テレビ東京スタッフ
日本政府代表団との議論はどうか?

IBM幹部

素晴らしい議論だった。とても前向きだ。
未来に向けた議論だ。
2時間の協議を終えた政府代表団。このとき、IBMはラピダスに技術協力し、共同で先端半導体の開発を目指すことを約束したのです。
ラピダス
東哲朗会長
(当時は就任前)

技術的には学んでいくことが一番多いわけだが、僕らには製造のクオリティーもある。
いいチャレンジだ。
半導体復活「最後のチャンス」
新会社ラピダスの戦略とは
その訪米を経て、11月11日に正式にスタートしたラピダスが目指すのは…
ラピダス
小池淳義社長

日米の連携という形でIBMを軸としたところと連携して、"先端ロジック"ファウンダリー(受託製造会社)として事業化を目指す。
先端ロジック半導体とはスマホやパソコンをはじめとしたデジタル機器に使われる演算能力を持った半導体です。
自動車の自動運転技術やポスト5G通信などに必要不可欠な半導体ですが、日本では開発が遅れています。
ラピダスはIBMをはじめ、アメリカ企業と連携して2027年をめどに先端ロジック半導体の量産を目指します。
ラピダス
小池淳義社長

最後のチャンスだと考えているので、ぜひとも成功させたい。
小池社長が最後のチャンスと語るそのワケとは…
1980年代、半導体で世界トップのシェアを誇った日本。
しかし、1986年の日米半導体協定で海外メーカーの半導体を20%も輸入することを要求されるという不平等な協定を飲まされることに。
シェアは激減し、バブル崩壊とともに日本の半導体産業は凋落していったのです。
その後、半導体業界では台湾のTSMCがファウンダリーと呼ばれる受託製造ビジネスで世界を席巻。世界の先端半導体の製造を引き受けることで製造技術を高めていったのです。
そのTSMCがリードするファウンダリービジネスに挑むラピダス。勝機はあるのか?
ラピダス
小池淳義社長

開発が遅れたのを取り戻すのは簡単ではなくて血眼になっていく。
絶えず先端を回すことは極めて大事。
先に行って技術開発していかないと。
日本には半導体をきちんと作れる技術があると確信している。
西村経産大臣に聞く
半導体業界の「夜明け」
新たに動き始めた次世代半導体の開発体制。
経済産業省を率いる西村大臣に勝算を聞くと…
西村経産大臣

私は「必ず日本がもう一度主役になって世界をリードしていく」、これを確信している。
かつて日がさんさんと照っていたが、いったん夜になって、また新たな夜明けを迎えようとしているということだと思うので。
もう太陽がさんさんと輝く、日の丸のように輝くような、そんな半導体産業、せひ民間企業にも頑張ってもらいたいし、われわれも全力で応援していきたいと思う。
官が出すぎて民間の足を引っ張ることにならないのかを尋ねると…
西村経産大臣

かつて半導体のシェアは50%を日本企業が持っていた。
それが凋落した。
この要因もきちんと分析・検証しながら、これからの政策をやらないといけない。
何となくビジネスの環境整備だけをやって、思い切った投資を支援するような枠組みができなかったというのがある。
これを官の側が思い切った投資を支援する。