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[WBS]追跡!投資家が困惑!四半期開示がなくなる!?

ワールドビジネスサテライト(WBS)

個人株主数の推移です。NISA(少額投資非課税制度)の拡充などで投資熱は高まり、株主数は年々増えていることがわかります。

投資先を選ぶ上で重要な情報の一つが企業が3ヵ月に1度開示する決算資料です。こちらが将来なくなるかもしれない議論がいま起きています。一体なぜなのでしょうか。

四半期開示なくなる!?投資家は「反対」

個人投資家の井原伸介さん。株式でおよそ3億円を運用しています。

投資する銘柄を選ぶ際に井原さんが重視しているのが…

個人投資家
井原伸介さん

決算短信を見ながら、今業績がいい会社を買うことが多い。

企業が直近3ヵ月の業績を開示する決算短信にある売上や利益の伸び率などを分析し、投資先を決めています。

ところが今ある悩みが…

個人投資家
井原伸介さん

決算短信がなくなると結構影響が大きい。
個人投資家が使えるツールがなくなる。
このまま進むと嫌だ。

実は金融庁はこの短信や四半期報告書の開示の簡素化を検討する作業部会を作ったのです。

上場企業はいま3ヵ月に1度、法律に基づく四半期報告書と東証のルールに基づく決算短信の2つを開示する義務があります。

金融庁が示した案では、まず内容の大半が重複していた2つの書類を一本化。第1四半期と第3四半期の決算は短信だけの公表となります。

そして注目を集めているのが第2段階。将来的に短信の開示義務を通期のみにし、その他の開示は任意化することを検討しているのです。

投資家の多くが反対する四半期開示の任意化ですが…

岸田総理

四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進める。

岸田総理は新しい資本主義の目玉政策の一つとしてこの政策を推し進めたい考えです。

さらに追跡取材を進めると意外な着地点が見えてきました。

自民党(金融調査会)
鈴木馨祐衆院議員

そこの連立方程式をどうにか収めたのが今回の金融庁が示した方向だと思う。

四半期開示なくなる!?キーマンに直撃

投資家などから疑問の声が噴出している四半期開示の任意化。

なぜこの議論が進もうとしているのでしょうか。

任意化に賛成を表明している関西経済連合会に話を聞きました。

関西経済連合会
松本正義会長

四半期開示は短期的にものをみるような風習を日本の経済界に植え付けたのではという気持ちがわれわれにある。
みんな任意開示にしろと言っている。
来てくれたら分かる。経理に。
360日、決算の仕事ばかりしている。
そんなのありえない。

四半期開示が企業の長期的な経営戦略を阻害しているというのです。

実際に企業はどう感じているのでしょうか。

訪れたのはベンチャー企業のビザスク。2020年に上場した社員およそ200人の人材マッチング企業です。

決算など投資家向けの情報発信を担当役員を含めて3人体制で行っています。

角谷暁子キャスター

業務量は大変か?

ビザスク
小風守CFO

普段、ほかの業務もかなり兼務している。
私自身は法務とかコンプライアンスとか。
開示の1ヵ月前からは決算の開示に集中するなど調整が必要になる。

ところが政府が進める四半期開示の任意化について聞くと意外な答えが返ってきました。

角谷暁子キャスター

開示が任意化された場合、出さなくてよくなる?

ビザスク
小風守CFO

投資家と対談している感覚だと、短期的な業績は出さなくていいということではないと思う。

角谷暁子キャスター

業務量は変わらない?

ビザスク
小風守CFO

そういうことかなと。

四半期開示をしないことで投資家から資金が集まらなくなる懸念を無視できないというのです。

大企業の担当者からもこんな声が…

大手食品メーカー経営者

開示をしなくなるのは投資家の存在を気にしないワンマン経営のオーナー企業ぐらいだろう。

角谷暁子キャスター

岸田政権はなぜ四半期開示の任意化を強く進めようとしているのでしょうか。
その土台となった提言を中心となってまとめた自民党の議員に話を聞いていきます。

自民党の鈴木馨祐議員。3月に四半期開示の見直しを盛り込んだ提言をまとめ、岸田総理に渡した今回の議論のキーマンです。

実は提言書の中にも懸念が示されていました。

角谷暁子キャスター

「市場との対話に消極的ではないかと誤ったメッセージになるのでは」と提言でも指摘していた?

自民党(金融調査会)
鈴木馨祐衆院議員

海外の投資家から誤ったパーセプション(受け取り方)があるといけない。
一番の目標はしっかり日本の企業が市場と対話をし、海外も含めた多くの投資家としっかり対話をして情報を出すことで適切な投資をしてもらう。

角谷暁子キャスター

政府は何を目指して四半期開示の取り組みを進めているのか?

自民党(金融調査会)
鈴木馨祐衆院議員

企業経営があまり短期にいかないようにというのも総理の思いだった。
一方であまり投資家への上方の開示が後退したというのもいけない。
そこの連立方程式をどうにか収めたのが今回の金融庁が示した方向だと思う。

鈴木議員は四半期開示を任意化させる前提として企業に企業に重要事項が発生したときにその都度公表する「適時開示」を充実させたい考えを示しました。

議論は今月中にもまとまる見通しですが、金融庁の関係者は思わぬ着地の見通しを明かしました。

金融庁関係者

法律としては短信と報告書を一本化して任意化するが、東証のルールとして事実上義務化を残す方向。
それが落としどころ。
総理のメンツも保たないと。

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