アメリカの最新の調査によると8月2日の時点で半導体不足の影響による自動車の減産台数は世界で576万台に達しました。
最も多くの影響を受けている地域が北米で183万台の減産となっています。
それでは半導体の生産能力はどうなっているのかというと1位が台湾、韓国、日本、そして4位に中国。アメリカを含む北米はその次になっていて、この10年間で中国に抜かれて5位に転落しました。
バイデン政権はこうした状況に危機感を強めて半導体の生産を国内に回帰させる動きを加速させています。
現場を取材しました。
Polar Semiconductor, Inc
[blogcard url="http://www.polarfab.com/"]
7月中旬、アメリカ南部ケンタッキー州にある自動車レース場「ケンタッキー・スピードウェイ」。そこに未完成のピックアップトラックが大量に放置されていました。
半導体不足の影響で生産が止まったのです。
こうした状況に強い危機感を示しているのがバイデン政権です。
この半導体ウエハーは電池や大容量通信網と並ぶインフラだ。
必需品を他国に依存しないようサプライチェーンの強化が必要だ。
半導体のサプライチェーン、供給網でいま何が起きているのでしょうか。
ミネソタ州ミネアポリス、ハイテク産業の集積地として知られる街です。
午前5時半、街の郊外にある半導体メーカーを訪ねました。
ポーラーセミコンダクター。
工場は24時間稼働していて夜明けとともに昼勤務の社員が出社してきます。
こちらは副社長のスルヤ・アイヤーさん。製造部門のトップです。
非常に忙しい。
注文が殺到していて稼働率はピークに近い。
ポーラーでは現在、コロナ前の水準と比べて生産量をおよそ2割増やしています。
300人ほどの従業員を抱えていますが、人手が足りず初任給を引き上げて人材を募集しています。
ようこそ、ポーラーの製造現場へ。
今回、特別にクリーンルーム内の撮影が許可されました。
半導体には長くて複雑な工程があり、製造に最大で半年ほどかかります。
その中でポーラーが手掛けるのは半導体チップの材料となるこの丸いウエハーの加工です。
中でも重要な工程がこちらの黄色い部屋で行われています。
この半導体露光装置はウエハーに集積回路のパターンを焼き付けるものだ。
自動車や家電、産業機械などで使われる半導体ウエハーを作っていますが、売り上げの5割以上が自動車向けです。
ニューヨーク市局の森礎人記者。
こちらは現在不足している自動車向けの半導体ウエハーです。この1枚から数千個のチップができるということです。
ウエハーの表面に見える無数のマス目。この一つ一つが半導体のチップになるのです。
半導体は自動車のエアコンやエンジンなどさまざまな部品に使われています。
電気自動車や自動運転技術の普及などで車で使われる半導体の数は今後さらに増えていく見込みです。
仕事は前より断然増えている。
新型コロナで世界中が打撃を受けたが景気はすでに回復し、コロナ前より好調だ。
ポーラーでは少なくともあと2年は半導体の需要が増え続けると見て投資をしています。
空きスペースに製造装置を入れて生産能力を増強する。
しかし、製造装置の納期が従来より半年ほど延びているといいます。
製造装置の納期が遅れる要因の一つに中国からの旺盛な需要がある。
中国は半導体を育成する決意だ。巨費を投じ製造装置を大量購入している。
中国は2014年に国家半導体ファンドを設立。これまでにおよそ5兆8,000億円を投じ半導体の自給率引き上げを図っています。
今年から来年にかけて世界の29ヵ所で大規模な半導体工場の建設が始まる予定ですが中国は最多となっています。
このような中国の動きに対抗すべくアメリカ議会上院は6月に自国の半導体産業におよそ5兆7,000億円を投資する法案を可決しました。
国を挙げた動きの中で一際注目を集める半導体製造会社がこちら。
アメリカ資本100%のスカイウォーター・テクノロジーです。
この会社のトップ、トーマス・ソンダーマンCEO。今年の4月、NASDAQ市場への上場を果たしました。
パンデミックが起きたことで半導体を国内で生産する大切さを誰もが認識した。
国防総省は重要な半導体製品をアメリカ製にすることを望んでいる。
スカイウォーターはアメリカ資本の会社であることを全面に打ち出し軍事向けの半導体も生産。
今年に入りフロリダ州で第2工場を取得するなど大規模な投資を続けています。
ものづくりを全て海外に依存してはならない。
偉大な会社、いや偉大な国家はモノを製造する。