アメリカの映画監督、スティーブン・スピルバーグ氏、そして俳優のトム・ハンクス氏、さらにメリル・ストリープ氏。
ハリウッドを代表するこの3人が新作映画の公開を前にTV東京の単独インタビューに応えました。
数々の大ヒット作を手掛けた彼らが題材に選んだのはベトナム戦争当時の機密文章を巡るアメリカ政府と新聞社の戦いです。
トランプ政権がメデイアとの対決姿勢を鮮明にする中で「権力」と「メディア」を問うこの作品に込めたメッセージを伺いました。
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
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「最高機密文書」だぞ。
NYタイムズのスクープだ。30年も隠されてきた「ベトナム戦争の嘘」を暴くと。
これは政府との戦いだ。
1971年、ベトナム戦争を分析した政府の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」をニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストがスクープ。
政府の圧力にさらされながらも記者たちが真実を公表するために奮闘したという実話を元にした映画です。
当時、ニクソン大統領は記事を差し止めようと訴訟を起こしました。
しかし裁判所は「報道の自由」を重視、ニクソン大統領は敗訴したのです。
スティーブン・スピルバーグ監督
もしニクソン元大統領が勝訴していたらアメリカの多くの自由が奪われていた。
いまアメリカで起きていることに照らしたとき、この映画を製作し、伝えることが重要だと思った。
ニューヨーク支局の宇井五郎記者、
「映画の舞台は1971年だが現在と似た点は?」
「報道」が攻撃されていることなど非常に多くのことが似ている。ただニクソン元大統領のように訴訟で報道を攻撃してはいない。現在は「真実の話」に「フェイクニュース(作り話)」のレッテルを貼る。「真実」なのに「フェイクニュース」だと信じてしまう人もいる。
7月、トランプ大統領は、
われわれは公正な報道が見たいのだ。「フェイクニュース」は望んでいない。
就任以来、いわゆるロシア疑惑を追求するメディアなどをこう批判し続けるトランプ大統領。
今ではこんなことも、
われわれの最高司令官、トランプ大統領は公約の実現を証明してくれた。
エルサレムをイスラエルの首都として認めるとトランプ氏が宣言したと伝えています。
これはトランプ氏が立ち上げたリアルニュースという番組。キャスターはトランプ氏の義理の娘です。
トランプ大統領の最終目標は中東の平和と人々が自由と繁栄を享受できることだ。
以上、ララ・トランプの「リアルニュース」でした。
こうした状況にワシントン・ポストの社長を演じたメリル・ストリープ氏や編集責任者を演じたトム・ハンクス氏も警鐘を鳴らします。
トム・ハンクス氏
「フェイクニュース」という概念が生まれると、見たことも聞いたことも信じられなくなる。真実を信じられない人が多くなりうそがまかり通る状況になる。
メリル・ストリープ氏
「報道の自由」は時に権力者の脅威になるため権力者は支配下に置こうとする。報道の力は統治者と統治される側のバランスを保つことができる。「報道の自由」が守らなければ権威主義体制に陥ってしまう。
声を上げ始めたハリウッドの大物たち。
ただスピルバーグ監督はより大きな問題にも懸念を示します。
それはトランプ大統領も国民もメディアを選別し、異なる意見や価値観に触れようとしないことです。
スピルバーグ監督は、
気に入らないメディアのニュースも見ているかが問題。お互いの主張はグランドキャニオンのような谷で分断され議論されることがなくなった。両者で「合意できる」ものを見つけられず、前に進めない国になってしまった。