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産業界が注目!"ローカル5G"って何?
5Gというと2020年から開始されたスマートフォンなどに用いるWi-Fiよりも高速で大容量の通信規格です。それがローカルとはどういうことでしょうか。
パナソニック株式会社
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ローカル5Gを知るために向かったのは横浜市にあるパナソニックの研究開発施設「パナソニックグループ 住江戸事業場」です。
ローカル5Gが体験できる実験室が6月末に開設されました。
パナソニックの野口太一氏。
通信事業が提供する5Gとは違い、企業などが持つ特定の敷地内に免許を申請して5Gのネットワークを構築する。それがローカル5G。
ローカル5Gとは総務省から免許を得た企業や自治体が一定のエリア内で独自の5Gのネットワークを構築する仕組みです。
こちら工場などで使うロボットアームをローカル5Gで離れた場所から操作するという実験装置です。
パナソニックの佐藤教彦氏。
モニターを見ながらロボットを操作します。
5G、低遅延なので実現できている映像。
タイムラグがほとんどないという特徴を持つ5Gとさわった感触がそのまま伝わる最新技術を組みわせることで実現しました。
企業からは「何から初めていいか分からない」といった声が多く聞かれる。
ラボを起点として、ローカル5G含めたネットワークの活用を推進していきたい。
いろいろな機械を使う工場などでローカル5Gがビジネスとして役立つことはわかりました。しかし、なぜローカルな5Gが必要なのか。
5Gもローカル5Gも電波の特徴は高速・大容量、タイムラグがより少なくなる低遅延、そして端末が多く接続できるという大きな特徴は変わりません。
その辺の事情を詳しい専門家に聞きました。
「ローカル5Gはどういった場面で必要に?」
野村総研の澤田和志氏。
パブリック5Gからは独立したネットワークがローカル5Gの特徴。
澤田さんは独自に5Gのネットワークを構築すること自体が3つのメリットを生んでいると言っています。
その1つ目が柔軟性です。
実際に使用する場所に合わせて基地局の設置場所や最適化した通信環境を作ることができる。
ローカル5Gは高速・大容量、また遅延が少ない上、接続ができる回線も多いというのが特徴です。これらの特徴を使いやすいようにカスタマイズできます。
さらに…
パブリック5Gの設備が進んだとしても、例えば山間部などカバーされない場所が出てきたり、都市部でも遮蔽物が多い所はパブリック5Gを利用できない可能性がある。
人が少ない場所は基地局の設置が遅れたり、カバーされない可能性もあります。
2つ目のメリットは安定性です。パブリック5Gは大規模イベントや災害が起こった場合に多くの人が利用するとつながりにくくなる可能性があります。
そして3つ目は高いセキュリティーです。通信ネットワークを外部から切り離すことができるので機密情報がもれません。
「今後、どういった分野に期待されますか?」
まずはスマート工場への導入がある。医療現場への導入も期待されている。
例えば地方の小さな診療所と大病院をローカル5Gでつなぐことで大病院の専門医が遠隔から診察や手術をリアルタイムでサポートできるようになる。
将来性が期待されるローカル5G。
東京都がNTT東日本などと組んで実証実験を進めているのは農業への活用です。
NTT東日本の中西雄大氏。
こちらがハウスのネットワークを支えるローカル5Gのアンテナ。
この1台でハウス全体をカバー。
温度や湿度などすべての環境を自動で制御し、農業の初心者でも室の高いトマトを栽培できるようにしようという試みです。
高画質の4Kカメラなどの映像データをローカル5Gを介しておよそ20キロ離れた研究センターに伝送します。指導員が現地に行くことなく技術指導することができます。
よろしくお願いします。
NTTアグリテクノロジーの栽培スタッフ、服部三平氏。
小さな実がついている果房がある。このまま成長させていいのか?
東京都農林総合研究センターの鈴木克彰氏。
こちらの方の果実は今後大きくなったり、味が良くなることは考えづらい。
処分していい。
5GはWi-Fiと違い、高画質の映像で確認できるので病気などが判断しやすくなったといいます。
距離を感じない。栽培についての不安、ストレスは全然感じない。
将来的には1人の専門家が複数の場所にいる農業初心者を支援できる可能性も模索しています。
課題は導入コストが高額という点です。
ローカル5Gが法制化された2019年末では億単位、現在でも数千万円はかかるといわれています。産業用のWi-Fiで数十万円から数百万円といわれていますので中小企業ではなかなか手が出しづらい状況です。
現在、さまざまな所で実証実験が行われ、ローカル5Gで何ができるかが見えてくることが普及へのカギです。