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[クローズアップ現代+] 追跡「パナマ文書」の衝撃(3)

2016年4月21日

クローズアップ現代

パナマ文書のリーク元となった法律事務所「モサック・フォンセカ」最大の市場は中国でした。

パナマ文書によって中国の習近平国家主席の義兄がタックス・ヘイヴンにある企業のオーナーになっていたことが明らかになりました。

習近平国家主席

贅沢三昧の気風に断固として反対し、あらゆる腐敗と戦っていく。

腐敗の撲滅を掲げてきた習近平国家主席。

しかしパナマ文書で名前の上がった習近平国家主席の姉の夫。
香港にある高級マンションの一室をその娘が設立した会社が所有しています。

登記簿には2007年に2,000万香港ドル(約3億円)で購入したことが書かれています。

習近平国家主席との繋がりがあるのか、中国でも高い関心が寄せられていますが厳しい情報統制が行われています。

中国の検索サイトでパナマ文書と検索しても「関連する法律と政策に基づき検索結果は表示できません」と表示されます。

そんななか、人々は情報を引き出そうと「姐夫(姉の夫)」で検索していました。
その回数は3日間で13万件に達します。その後「姐夫(姉の夫)」も規制対象になりました。

神田外語大学の興梠一郎教授は言います。

習近平国家主席は腐敗撲滅運動を先頭に立ってやっている人ですから、それはやはり徹底的に封鎖しないと。彼の政権運営に関わる。これからもダンマリを通す。議論させない、議論しない。これが終わるのを待つ。

世界の動き

パナマ文書によりアイスランドでは首相が、スペインでも閣僚が辞任に追い込まれました。

イギリスでは、これまでタックス・ヘイヴンなどの問題に対して厳しい姿勢をとってきたキャメロン首相自身に疑惑が浮かび、国民の怒りが高まっています。

イギリスのデモ

イギリスではキャメロン首相の退陣を求めるデモが相次いでいます。

リーマン・ショック以降、社会保障は削減される一方で消費税は増税されました。

国民の不満はタックス・ヘイヴンで利益を上げていた指導者に向けられています。

さらにパナマ文書はロンドン中心部の不動産売買の実体を明らかにしました。

ロンドンの不動産

政治家や企業の資産隠しを告発する市民団体のジョージ・ターナーさんは言います。

この辺りに見えるほとんどの建物は海外の会社に買われています。

これまで、こうした会社が誰のものなのかは分かりませんでした。
しかしパナマ文書でその詳細が明らかになりました。

あのタワーの横にある建物はナイジェリアの政治家に関わりがあることが分かりました。

ロンドン中心部の多くの高級不動産は世界各国の首脳やその親族が関わるタックス・ヘイヴンの会社が購入されていました。

アラブ首長国連邦のハリファ大統領がロンドンで購入した不動産の総額は1兆8,000億円にもなります。

1部屋10億円の高級マンションではパキスタンのシャリフ首相の娘の会社が4つの部屋を所有していました。

取材班がマンションに入り、娘の出入りを見たことがあるかと聞くと管理人は「部屋はいつでも空いているよ」と答えました。

この辺りの住宅は夜になると人影は少なくなり、マンションの明かりもほとんど灯っていません。

住むためでなく、会社名義の不動産にして投資することが目的と考えられています。

ジョージ・ターナーさんは言います。

住居として使われていません。夜が真っ暗なのも単なる「金庫」だからです。

海外から大量の資金が流れ込んできた結果、ロンドンの不動産価格は高騰し10年で2倍になりました。

市民にとってロンドンに家を持つことは、ますます難しくなっています。

この辺りにも新しいマンションが建てられていますが、最低でも1億5,000万円で近くで働いていますが買えません。

これまでロンドンに何世代も住んでいた人達も追い出されています。私たちは今、不安で仕方がありません。

松木昭博ロンドン支局長

キャメロン首相は国民に増税を課し、課税逃れの対策を強化すると自ら音頭をとっていました。その本人がタックス・ヘイヴンで利益を得ていたことに国民が怒るのは当然のこと。ロンドンの不動産価格が右肩上がりなのは、持つものと持たざるものの格差や不公平感を拡大させています。その流れに世界の首脳や親族が課税を逃れながら加担してきた訳だから怒りは収まりません。海外からの活発な資金の流入はイギリス経済を支えロンドンを世界の金融センターにしてきました。しかし発展の恩恵は一般の市民には還元されていません。

パナマ文書後の世論調査ではキャメロン首相の支持率は17%下がり32%。しかし取引に違法性は確認されていないので辞任になる可能性は高くない。キャメロン首相は失った信頼を取り戻そうとタックス・ヘイヴンの企業の情報開示を進めるなど課税逃れの対策を強化しています。ロンドンの金融取引や不動産の透明性をどこまで高められるか、世界をリードしてきたイギリスのあり方が問われています。

今後の対策

国連や世界銀行などの国際機関が連携して課税逃れへの対応を強化する方針を打ち出しています。

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