21日から始まる国連総会の各国首脳などによる一般討論演説ですが、今年大きな焦点となっているのが気候変動問題です。
地球温暖化の影響から水没の危機に直面しているアメリカのある町ではその対策費をどう負担するかが波紋を広げていました。
アメリカ南東部、ノースカロライナ州のアウターバンクス。
ライト兄弟がおよそ100年前に人類初の動力飛行に成功したことでも知られるこの地は大西洋に面した地の利を活かし古くから漁業などで発展してきました。
現在はビーチなどを目当てに年間200万人以上の観光客が訪れるリゾート地です。
海の恵とともに成長してきたこの地域が今、かつてない危機に直面していました。
ワシントン支局の中村寛人記者。
私は海岸線のすぐそばを歩いています。海の水と家の距離がおよそ3メートルほどしかありません。
海の水が入ってこないよう玄関先に大きな土のうを並べている家も。
気候変動の影響で世界的に海面の上昇が続く中、この地域で海抜の低いエイボンという地区では海岸線が2012年からの8年間で最大75メートルにわたって交代しました。
町の人は…
2018年の嵐で海の水が乗り越えてきた。
そこにあるプールは砂で完全に埋まってしまった。
ハリケーンなど悪天候に伴う高潮問題も深刻で2018年には2ヵ月に1度、海から町に水が流れ込んできたといいます。
このため高潮対策としてエイボンでは日本円でおよそ15億円を投じ、長さ4キロに渡り海岸の砂浜を30メートルほど広げることを決定。来年から工事が始まる予定です。
エイボンに5年前から住むスティーブン・デイさん。実はこの工事に反対しています。
その理由についてあるものを見せてくれました。
これは固定資産税の請求書。5%増税となった。
われわれにとって負担の大きい税金だ。
この夏から近隣住民が支払う固定資産税を増額して、工事に費用に一部に充てることになったのです。
住む場所によっては固定資産税が20%増えた人もいるということです。
デイさんは海水面の上昇に伴う費用をなぜ住民が負担しなければならないのか納得ができず、増税に反対する署名活動を行いました。
何人かは「家を売りに出す」と言ってきた。
「どうやってお金を払えばいいのか分からない」と。
すでに納めている連邦税は国の土地の保護に使われるもの。
増税は意味が分からない。
アメリカでは気候変動に対応するため増税を求める動きが各地で出始めています。
西部カリフォルニア州サンフランシスコ周辺の地域ではエイボンと同様に土地を所有する住民への税金が増額に。
ハワイ州でも観光客が乗るレンタカーなどへの課税が検討されています。
住民の不満の声が上がるエイボン地区のトップ、ロバート・アウトンさんは増税への理解を求めました。
海岸整備には多額の費用をかける理由の一つはこのビーチが無ければ、この地域に来る理由がないからだ。
手遅れになる前に先手を打つ。
気候変動を巡っては今年は世界各地で記録的な大雨が相次ぎ、大規模な山火事が起こるなどその影響が指摘されています。
2年ぶりに対面外交が復活する国連総会。気候変動への対策をどう講じていくのかが各国の首脳に迫られた課題となっています。