深刻化する物流の人手不足。
現在、物流の多くを担っているトラック輸送ですが肝心のドライバーが足りません。3年後の2020年には10万人以上不足するという見通しもあります。
こうした中、注目が集まっているのが鉄道輸送です。
たった1本の列車で10トントラック65台分の荷物を運ぶことができます。
この鉄道を使って採れたての野菜を新鮮なまま輸送しようという実験が始まっています。密着取材しました。
北海道海鮮にほんいち
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北海道江別市、畑の中から顔を出したのはアスパラです。摘みたては瑞々しいアスパラは1日で10センチ以上も成長することがあります。
北海道フードカンパニーの魹島昌登社長は、
どこにも負けないと思っている。全然違うと思う、本当に食べてほしい。
旬のアスパラを提供しているのが道内を中心に16店舗を構える居酒屋チェーン「北海道海鮮にほんいち」。
アスパラ炭火焼き三種盛りになります。
極太のアスパラを贅沢に3本使いました。お値段は800円。
今、旬だよね。思わず手を出してしまった。
しかし、アスパラは東京の店舗では提供していません。成長が早い分、劣化も早いためです。
この日に入荷したアスパラと比べると、前日入荷のアスパラは水が染み出しています。切り取った部分を比べても違いは一目瞭然です。
さらに、株式会社アイ・コンセプトの市川暁久社長は、
物流コストがかかるので「三種盛り」は300円くらい乗せないと利益が取れない。
鉄道輸送
鮮度とコストがネックとなる中、今注目を集めているのが鉄道輸送です。
5月23日にJR貨物グループが開いた鉄道輸送の説明会「モーダルシフト説明会」。約40の物流会社や団体が参加しました。
トナミ運輸の桶田篤史執行役員は、
ドライバー不足に尽きる。今からの時代は鉄道に頼らないといけない。
鉄道のメリットは長距離輸送の安さです。
北海道から東京に生成品を送る場合、航空便は1キロ当たり約150円掛かりますが、鉄道の場合はわずか45円ほど。トラックの約55円よりも割安です。ただ輸送に時間がかかるため鮮度の維持が課題でした。
株式会社O's&Tec
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そんな鉄道輸送にイノベーションを起こそうとしているのがオズアンドテックの大村幸市社長です。
今回開発した「氷感SO庫」というコンテナ。
新型コンテナ「氷感SO庫」、最大の特徴は野菜などの生鮮食品を氷点下でも氷結させずに鮮度を維持できること。
小型の「氷感SO庫」の中の温度はマイナス5度ですが、ペットボトルの水はなぜか液体のまま。しかし、蓋を開けて注ぐと氷の柱が出ていきます。
凍らせず、耐えさせるのが原理。
「氷感SO庫」の中には弱い電流が流れていて、水や食材の分子を常に揺らしています。このため分子同士が結合しにくくなり凍らないのです。
過去の実験ではイチゴを最大20日、鮮度を保った状態で保管ができました。
氷感SO庫トライアル
6月6日、北海道の野菜加工センターに現れていたのは「氷感SO庫」です。
オズアンドテックの大村幸市社長、
今から新鮮な野菜を東京に運ぶ。
作業場で準備されていたのはアスパラです。なんと「氷感SO庫」でアスパラを運ぼうという実験です。
JR貨物グループや佐川急便などが参加しました。
佐川急便の営業開発部、藤野博課長は、
今年はアスパラが不作らしいので、希少価値があるものを東京に提供できれば「氷感SO庫」の威力を感じてもらえる。
アスパラを「氷感SO庫」に積み込み、コンテナに充電を開始。
この中にIoTに通信装置がついている。温度や湿度、振動が分かる。
コンテナ内部の状況はリアルタイムで監視、設定温度はマイナス1度です。
東京まで温度管理派できるのか、いよいよ出発です。
計画では貨物列車は翌朝に八戸に到着。再度充電した後、夜に再び東京に向かいます。
2日後、「氷感SO庫」を積んだ列車が到着しました。しかし、なぜか慌しい様子。
佐川急便の営業開発部、藤野博課長は、
途中で電池が恐らく切れて、若干庫内の温度が上がっている。どれくらい?
14度。
輸送途中でバッテリーが切れ温度が一時的に上がっていたのです。
中は大丈夫でしょうか?
マルキの神辺忠相統括事業部長は、
とてもキレイだと思う。この状態で来ないでしょう。ここまで冷たいアスパラはない。
なんとか成功しました。次回からは電池の容量を2倍にして望みます。
船も10月頭にテストに入る。積み方、輸送に仕方、色々な問題がある。僕らがトライアルしながら探していかないと。