日本の電機産業を取り上げるシリーズ「日本の電機再び飛べるか」。
2回目の今回は老舗オーディオメーカーのオンキヨーです。

オンキヨーのスピーカーが憧れだったという人も多いのではないでしょうか?
そのオンキョーがいま苦境に喘いでいます。
生き残るために選んだ道は黒子役でした。

オンキヨー株式会社
[blogcard url="https://www.jp.onkyo.com/"]
東京・新宿の家電量販店。

オーディオコーナーでお客様が耳を傾けているのはオンキヨーのスピーカー。

オンキヨーと書いてあると安心。「ああオンキヨーか」と思う。

オンキヨーは小さい頃からの憧れ。

持っていると音が好き、音にこだわりがある人というイメージ。

しかし、
音響機器にこだわりが全くない。

家で聞くとき全部iPhoneで聞くから全然分からない。

オンキヨーは売上の8割以上を市販のオーディオ機器に依存していますが、スマートフォンの普及でその市場はこの10年間でおよそ6割減少。

こうした結果、5年連続の最終赤字。

11月9日に発表した中間決算でも本業の儲けを示す営業利益は依然赤字のままです。

なぜここまで追い込まれてしまったのか?
宮田幸雄副社長
オンキヨーの宮田幸雄副社長は、
要因が分かっていたらこんな会社になりません。

市場の変化に対応できなかった、それがいま苦戦している最大の要因。

創業70年を超える老舗企業に巻き返しの手はあるのでしょうか?
裏、黒子に徹する方がオンキヨーにとって生きる道。

OEM、つまり自社ではなく他社ブランドの商品を作って生き残ろうというのです。

オンキヨーのOEMでの売り上げは現在1割程度。今後はこれを9割まで引き上げるとしています。

OEM
大阪・寝屋川の住宅地。

この場所で最先端のOEM部品が開発されています。
オンキヨーの先行開発課、久本禎俊さん、
ここは「無響室」といって、部屋の壁の反射、音の反射を抑えてスピーカーの素の音をはかる部屋。

行われていたのはOEMスピーカーの調整。

OEMの場合、導入する製品の形が決まっているため、自社ブランド製品のように音を出すことに特化した設計が難しいといいます。
お客様が「こういう音を作りたい」という音を今まで培ってきた技術やノウハウを使って実現できるか、私たちのプライドの見せ所。

シャープ株式会社
[blogcard url="http://www.sharp.co.jp/"]
試行錯誤の末、開発したのがこのスピーカー。

これを搭載して新製品が展示会で発表されました。

搭載されるのがシャープの8Kテレビです。

そこには小さくオンキヨーの文字も。

音の良さの証明としてオンキヨーのスピーカーを導入したといいます。
しかし、この展示会はオンキヨーにとって試練となりました。

シャープの上杉俊介さんは、
われわれは家庭用オーディオ・ビジュアルという面もあるのでテレビのみならず周辺機器もしっかり提案していきたい。

シャープは8Kテレビと同時に自社で開発したサウンドバーを発表。

今後はオンキヨーのOEMに頼らずに自社でまかなうというのです。

シャープは会社の形態が変わった。お客様の商売だからやむを得ない。

加振器
新たな市場開拓を余儀なくされたいオンキヨー。

そこで抜擢されたのがこちらの男性。

オンキヨー&パイオニアの矢崎賢吾さん、
いままで経験のない住宅メーカー、しきたりも違うので戸惑いはあった。

矢崎さん、元々は市販のスピーカーを売っていたトップセールスマン。
このピンチで1ヵ月前にOEM部門の営業へ移動しました。

訪れたのは大手住宅メーカーのミサワホーム。

本日は「加振器」の商談をさせてもらいたい。

売り込んだのは加振器と呼ばれる物に振動を伝え、音が出るようにする機械です。

一般的なスピーカーは紙の振動で音を出すため水回りは不向きでした。

一方、これなら水回りでも使えます。
この特性を武器に浴室での使用を提案していくとしています。

BtoB(企業向け)の商品は主従の関係では「従」の商品。

営業の仕掛け方、進め方は全く違う。

試行錯誤が続く中、少しづつ結果も出てきました。

目を付けたのはなんと炊飯器の音。

タイガー魔法瓶の和田隆弘常務、
少なくとも10年間で3,000回から4,000回炊きあがりの音を聞く。

その音が耳障りな音だとご飯もおいしくない。

ここに使われているのも加振器。

この技術を軸に新たな市場へ打って出ます。
転換期
大きな転換期を迎えたオンキヨー。
果たして復活はできるのでしょうか?
がけっぷちですから厳しい状況に変わりない。

ようやく会社全体がBtoB(企業向け)主体の機能に変えると決まった。

来年あたりから芽が出てくると思う。
