百貨店最大手のトップとして数々の改革を主導しながら2017年3月に突然の辞任を発表した三越伊勢丹ホールディングスの大西洋前社長が沈黙を破りテレビ東京の独占インタビューに応えました。
これまで語られなかった社長交代の真相とその原因となったリーダーとしての失敗について聞きました。
大西洋前社長
「大西社長が退任するというニュースが駆け巡って驚いた方も多かったと思います。あれは実際、何が起こって、どうしてそういうことになったのですか?」
自分で決断をして辞任をしたのは事実。地方の構造改革については先走っていろいろなことを話してしまった。
突然の辞任はなぜ?
消費低迷に苦しむ百貨店の改革の旗手として知られた大西氏。その突然の辞任は業界に衝撃を与えました。
きっかけは2016年11月、決済会見の場でのこの発言でした。
「構造改革は具体的にどこの店を念頭に?」
あんまり言わない方がいいの?松戸、府中、地方では松山、広島。
閉店やリストラを前提とした発言ではなかったものの三越伊勢丹の社内には大きな波紋が広がったといいます。
トップから突然、自分の店の名前が構造改革店舗として出たときには、やっぱり働く人の立場からすると少し問題があったのかなと。やりたいこともまだ志半ばであった、というふうではあるがやむを得ないのかなというところ。
自主企画商品
大西氏が取り組んだ改革のひとつが自主企画商品。いわゆるプライベートブランドの拡大です。
三越伊勢丹が商品開発に関与することで消費者の満足度を高めながら利益も確保するビジネスモデルへの挑戦でした。
「自主企画商品を作っていこう、このあたりの考え方は間違っていたか、それともそうではなかったか?」
間違っていなかったと思う。結果が出たかどうかは別にして、百貨店の利益率が低いのはビジネスモデルに問題がある。自分たちのコンセプトの中で自分たちがモノづくりをして、価値の高いものをお客様に提供することは今でも必要だというふうに思っている。
狂い始めた歯車
大西氏は社長就任後、エステサロンや旅行会社などの異業種を買収し多角化を積極的に進めてきました。
しかし利益を出すまでには至らず社内では多角化を不安視する声もありました。
「スピード感のある経営をしていく中でなかなか組織としてそれについてきてもらえなかった部分はありますか?」
組織が動かないとか、組織の問題とかも社長の責任だと思う。特に役員、常務以上に対してマネジメントをもう少しうまくやればよかった。
現場とのコミュニケーションを重視していた大西氏、5,000人が参加した運動会ではリレーのアンカーを務めるなど社員と共に汗を流しました。
現場はコミュニケーションが取れていた。中間層とのコミュニケーションの時間のバランス、使い方が偏っていた気がする。
管理職との間に吹き始めたすきま風、そして経営陣の中で孤立していきました。
参謀役の不在
「大西さんにとっての参謀役はいらっしゃいましたか?」
結論として参謀役の人材はいなかったのは事実。参謀役を持てなかったのは自分の力不足と思っている。
業界の垣根を超えて存在感を示してきた大西氏。今後はどのようなかたちでビジネスに関わっていくのでしょうか?
百貨店はないと思う。いた会社を愛しているし愛着もある。同じ業界の中でということはない。
「これから先は大西さんはどうしますか?」
人材育成や地方創生、海外との開発などに携われればいいと思う。