平和の祭典を舞台に大国同士が激しく対立しています。
アメリカのバイデン大統領が来年2月に開催予定の北京冬季オリンピックを外交的にボイコットすると正式に表明しました。
中国政府は対抗措置をとると明言しています。
そうした中、日本はどうするのか、難しい判断を迫られています。

アメリカは北京五輪を"外交ボイコット"!
中国は猛反発…対抗措置は?
ホワイトハウスのサキ報道官。
バイデン政権は北京五輪に政府関係者や公式な代表団を派遣しない。

中国による新疆ウイグル自治区での大量虐殺や人道の罪を考慮した。

来年2月の北京オリンピックで外交ボイコットに踏み切ると正式に発表したアメリカ。

選手は通常通り参加するものの、政府の公式な代表団などは派遣しないとしています。

その理由についてバイデン政権は中国による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を看過できないと強調。中国に強く対抗する姿勢を示しました。

発表を受けて中国政府は…
中国外務省報道官。
アメリカの対応に強烈な不満と反対を表明する。

断固とした対抗措置をとる。

アメリカが指摘する人権侵害はねつ造だとして猛反発。

対抗措置をとると明言した上で2028年にアメリカ・ロサンゼルスで開催予定の夏のオリンピックをボイコットする可能性も示唆したのです。

北京支局の杉原啓佑記者。
北京オリンピックの開幕まで残り2ヵ月を切りました。アメリカの外交ボイコットを街の人はどう受け止めているのでしょうか。

北京市民。
そもそも彼らを招待していないのにわざわざ問題にするのはおかしい。

外交ボイコットは北京五輪に何の影響もないと思う。

アメリカに同調する国は?
この問題についてIOCのバッハ会長はインタビューで…
IOCに政治体制を変える力はない。

とした上で…
政治家が解決できなかった問題をオリンピックが解決できるとは思わない。

と語りました。
オリンピックには政治に翻弄されてきた歴史も…
東西冷戦下で開かれた1980年のモスクワオリンピック。
旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議するためアメリカがボイコットを呼びかけ、日本も選手団の派遣を取りやめました。

これに対し4年後のロサンゼルスオリンピック。
開会式に「WELCOME」の文字が浮かびましたが、旧ソ連が報復する形でボイコットに踏み切り、東ヨーロッパ諸国も追随しました。
今回、バイデン大統領が表明したのは選手の参加は認めた上で政府から要人や代表団を派遣しない外交上のボイコット。

アメリカの考えは示した。それぞれの国の判断に委ねている。

これに対し各国は…
イギリスではラーブ副首相が「私は北京に行かない」と明言した上で政府として検討する考えを表明。

一方、ニュージーランドは…
ニュージーランドのロバートソン副首相。
10月に「閣僚は派遣しない」と伝えた。さまざまな要因があるが主に新型コロナだ。

あくまで新型コロナをめぐる安全性の問題と強調。アメリカとは距離を置いた形です。
またイタリア政府関係者はボイコットには否定的な考えを示していて、各国が同調するかは不透明です。

日本の決断は?中国の報復は?
こうした中、日本も難しい判断を求められています。
岸田総理は…
オリンピックの意義や日本の外交にとっての意義などを勘案し、国益の観点から自ら判断したい。

「アメリカやヨーロッパがどうするかではなく、日本として判断したい」と判断を引き伸ばしました。

専門家はこの判断こそが岸田政権の試金石になるといいます。

東京大学の東洋文化研究所、佐橋亮准教授。
人権外交は非常に難しい。

ここで日本が対応を取らないと国際社会の厳しい目にさらされる。

他方で中国との関係を考えたときにこの輪に入っていいのか悩みがある。

まさに総理の政治判断が強く求められる問題。

12月7日に岸田総理と面会した自民党内の保守系議員たちからは…

自民党の山谷えり子議員。
日本は人権侵害の深刻な中国の現状を鑑みてきちっとした対応・態度を示す必要があるし、総理がそのように決断すると期待する。

一方で専門家は日本も外交ボイコットに同調した場合、中国からの報復も覚悟すべきだと指摘します。

北京五輪に関して外交ボイコットという手段をとれば中国から経済圧力や強制力を受ける可能性が十分ある。

しかし、だからといって人権問題に対して沈黙を貫くことはあってはいけない。

こうした中、スポンサーを務める日本の企業からは戸惑いの声が聞かれます。
北京五輪スポンサー企業。
売り上げ面では中国市場はとても大きいのでとても微妙なところ。

IOCと政府の対応を見ながらどう対応するか見極めていく。

何か行動を起こすと不買などのボイコットにつながりかねない。
