地域で奮闘する企業を取り上げる「輝く!ニッポンのキラ星」。今回は滋賀県野洲市からです。徹底した顧客目線で業績を伸ばす老舗のバルブメーカーを取材しました。
ニッチなバブルが10万種類
滋賀県の南部に位置する野洲市。大阪や京都に近く製造業が市の経済を支えています。
この地に本社を構えるオーケーエムが作っているのがバブルです。その数、10万種類に及びます。バルブは水道の蛇口にも使われる身近なもの。配管を通る気体や液体を制御する機器です。
オーケーエムではさまざまな用途に合わせた特殊なバルブを製造しています。その一つが…
オーケーエム
製造部チーフ
林佑耶さん

ナイフゲートバルブ。
木や硬いものを切断して止めるバルブ。
プレートが下がって閉じることで流体を止めたり流したりできる。
ビルやマンションの雨水の貯水システムなどで使われるナイフゲートバルブは排水管に枝などが詰まっても切断しながら流れを止め、しっかりと密閉できます。
セメント工場などで使用されるピンチバルブは切断しづらい石などの異物が合っても特殊なゴムで包み込むことで密閉が可能です。
オーケーエムの従業員は326人、2022年3月期の売り上げはおよそ85億円。純利益は8億5,000万円に上ります。
顧客ニーズに応じたバルブ製造でアジア・中東・アフリカにも販路を持つグローバル企業です。
オーケーエム
奥村晋一社長

昭和27年頃にバルブを作り始めたが、すでに先発のメーカーがいっぱいいた。
たくさんバルブを売りたかったのでニッチで特殊なバルブ事業に参入した。
そのバルブの一つが横浜市市役所の中にありました。
東京都市サービス
府中ユニットリーダー
木村潤さん

オーケーエムのバルブ。
オーケーエムの主力製品の一つバタフライバルブ。円盤状の板を90度回転させることで開け閉めができ、高層ビルの冷房に使う冷却水などを制御しています。
東京都市サービス
府中ユニットリーダー
木村潤さん

一般のバブルに比べ水が漏れないのが大事な利点。
ハンドルを回す時にかみ合わせがいいのでバルブがすごく回しやすい。
ほかのバルブと比べ場所を取らないのも特徴。
大手企業のビルや東京駅、大阪駅などでも採用されています。
そして海外シェア50%を誇るのが船舶で使う排ガス用バタフライバルブです。口径はおよそ1メートル、重さは1トンに上ります。コンテナ船や2万トン以上の大型タンカーの排気ガスを制御するのに欠かせないバルブです。
オーケーエム
奥村晋一社長

2016年から全世界で排ガスの規制強化された。
お客様がNOx(窒素酸化物)処理装置の開発をしていた。
そこに使われるバルブを開発できないか、打診を受けて開発をスタートした。
気体が漏れない密閉性が大事なバルブですが船舶の排ガスは500度近くになり、素材のステンレスが膨張し密閉性が落ちてしまうのが悩みでした。
そこで密閉性を高めるために部品を100分の1ミリ単位で削ります。組み立てにも工夫が…
オーケーエム
従業員

ピンの中に通して固定する作業。
この棒、常温だと入りません。そこでマイナス196度の液体窒素で冷やすことで棒を収縮。すると穴にすぽり。常温に戻ると穴の中で膨張し、しっかりと固定できます。
この加工により船の振動によって生まれる緩みも出なくなるといいます。
さらに700度の熱風を発生させる実験装置を自社で製作。非常時でも動くか試すファイヤーセーフ試験など数多くのチェックを経て出荷します。
高温で使われる従来の製品と比べガスの漏れを90%削減し、密閉性も20年変わらないといいます。
いま船舶業界ではCO2排出削減のためLNG(液化天然ガス)を燃料とする船舶の移行が始まっています。
オーケーエム
奥村晋一社長

液化天然ガスは非常に低温。
マイナス162度になるので液体窒素に耐えられるバルブが必要。
現在4隻ほど注文をいただいている。
脱炭素の分野で貢献していきたい。