ウォーレン・バフェット氏も特に注目しているというウォール街の重鎮への単独インタビューです。
話を聞いたのは、日本円でおよそ23兆円を運用するアメリカの投資会社「オークツリー・キャピタル・マネジメント」の共同創業者で、今も経営の指揮をとるハワード・マークス会長です。
マークス氏は「投資で一番大切な20の教え」や「市場サイクルを極める」などの著書でも、世界的に知られ、特にマクロ経済予測を重視しない、又はほぼ信用しない投資スタンスをとることで有名です。
今回、その投資哲学や今のマーケットをどう見ているのかについて語ってくれました。
"経済予測を信じない"投資
豊島晋作キャスター
基本的な投資への考え方について徹底的に聞かせてください。
なぜ、あなたはマクロ経済予測に基づいて投資判断をしないのか?

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

2016年にウォーレン・バフェットからこう言われた。
重要な情報と知り得る情報という二つの基準を満たして初めて「情報は好ましい」と言える。
確かに経済・市場・通貨・金利の未来を予測するマクロ経済予測は重要だ。
しかし、それは誰も知り得ないもの。
私の会社は私が"知り得ること"に基づいて投資する。
個別企業や産業と株式について、より小さく投資対象を見る。
大きな見方はしない。
マークス氏 投資への提言①
マークス氏は投資予測は信頼すべきではなく、あくまで個別の投資対象を見るべきだと強調します。
実際、いまの世界的なインフレはかつてアメリカのFRBや多くのエコノミストが予測した一時的な現象とはなりませんでした。
豊島晋作キャスター
「インフレは一時的である」という言葉は、この1年~2年のマクロ経済予測の間違いを象徴する言葉に見えるが、FRBもエコノミストもマクロ経済の予測を間違えた。この状況をどう見る?

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

私はFRBを責めるつもりはない。
彼らは非常に難しい仕事をしている。
しかし、今あなたが話した事実はマクロ経済の未来を予測できるような有利な立場の人はどこにもいない証拠だ。
あなたが言うように、もはやFRBは1年先の自分たちの行動さえ予測できていない。
マークス氏 投資への提言②
経済予測の結果に資金をかけるべきではない。投資家は自分の知識の限界を知るべきであり、金融政策のフォワードガイダンスを作っている中央銀行にも未来はわからないのだということを理解することが重要です。
豊島晋作キャスター
日銀は2%の物価目標について達成できると言っているが、しかし、持続的に実現可能だと考える人はほとんどいないようだ。

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

日銀が目標を達成できないのは私達の会話の本質を物語っている。
かつてアインシュタインはこう言った。「狂気とは同じことを何度も繰り返して異なる結果を期待することだ」と。
予測する人が何円も同じ予測をして、それがめったに当たらなければ、その予測に耳を傾けるのは止めるべきだ。
中央銀行が何年も前から同じインフレ目標を掲げ、何年も達成されないのであれば、それはコントロールできないものだと理解すべきだ。
豊島晋作キャスター
あなたは投資で大切な教訓の一つは簡単な売買のポジションを変えないことだと主張している。

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

株取引には金がかかり、手数料も必要だ。
何よりほとんどの人は取引をしすぎていて、さらにほぼ感情的に売買している。
物事がうまくいっているのを見ると、高い値段で買い、株価が下がると安く売る。
これは本来やるべきこととは逆だ。
全く売買しないほうがほとんどの人は上手くいくと思う。
感情は投資判断の邪魔になると警告するマークス氏。
一方で今月のアメリカの消費者物価指数(CPI)の結果に多くの投資家が驚き動揺したと見られています。
豊島晋作キャスター
11月のあめりかの消費者物価指数(CPI)が出たとき、私は為替のトレーディングルームで叫んでいた。
市場の感情は爆発したかのようだったが、あなたにとってこうした状況はホコリを払う程度の意味しかない?

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

CPIのデータがどう出るかは関係ない。
大切なのは今日、あなたがいくら資金を持っていて、10年後にそれがいくらになるかだ。
1ヵ月前のCPIがそれに影響することはない。
重要なのは反応しないことだ。
マークス氏 投資への提言③
データにいちいち反応しないこと。
豊島晋作キャスター
今のマーケットでは悲観と楽観のどちらが優勢か?

オークツリーCM
共同創業者
ハワード・マークス氏

現実世界では物事は「かなら良い」と「そんなに良くない」の間で動く。
しかし、市場の心理は「完璧」から「絶望」へと変化する。
振り子のように揺れすぎているのだ。
今はいくらか中間点に落ち着いていると思う。
この10年、ポジティブ過ぎる市場心理が続いていたが、今はやや悲観寄りの中間点を言えるかもしれない。
今後は企業や個人にはさらに厳しい状況になると思う。
これは振り子がさらに悲観的な方向に振れる可能性を意味し、どこまで振れるのか、それがいつかは誰にも分からない。
私は「自分が何を知らないのか」を知っていて、これも私が知らないことだ。
その後は過去のように不況から回復すると信じている。
カギはより長期的な展望を持つことだ。