家電製品から人工衛星に至るまで多くの機械に組み込まれている部品がベアリングです。

自動車には約150個使われていますが、そのうちの4割が電動化によってなくなるのではないかと見られています。
こうした逆風に立ち向かおうと、ベアリング大手のNTNは主力の自動車向け以外にも成長の機会を求め新たな事業を立ち上げました。
長年培ってきた技術を生かす場所は農業用水路での水力発電です。

NTN株式会社
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田植えの季節、米作りに欠かせないのが水路です。
国内にある農業用の水路は約40万キロメートル。地球10周分に相当します。

ただ落差がほとんど無いため水力発電には向いていません。

ここに目を付けたのがNTNです。

創業100年の精密機器メーカーです。
主力事業はベアリングの製造。

ベアリングは産業の骨と呼ばれ、機械には欠かせない部品です。
こちらで組み立てているのは風力発電機の翼を回すための製品。

この他にも新幹線の車輪部分やロケットのエンジンに至るまでさまざまなベアリングを手掛けています。
その数はなんと20万種類。

NTNの石川浩二執行役員は。
どのようにすれば効率良くモノが回るかという技術は習得している。水路に水は流れているが田んぼや畑に流して、あとは捨てるだけ。ほとんどエネルギーとして利用されていない。そこにビジネスチャンスがある。

商機を見出して開発したのは農業用の水路で使える水力発電機。

落差がなくても発電できるのが特徴です。
翼を効率よく回すために4種類のベアリングを使用。

水の抵抗を一番受ける部分の実物がこちら。

回転したときに音が静かなほど摩擦が小さく弱い力でも回るといいます。

先端技術研究所
三重県内にある水車の開発拠点。

この日、水車の噂を聞きつけた人が訪ねてきました。
2人は工務店の従業員。

顧客の要望により落差が必要ない水力発電機を探していました。
NTN自然エネルギー商品事業部の立石康司副部長、
水路の幅はどれくらい?

サンエイ工務店の日紫喜健一執行役員、
約2メートル、水深は70センチメートル程度。

NTNの立石さんが勧めたのは翼の直径が90センチメートルの水車。

秒速2メートルの水流で1キロワットの出力があります。
1日で一般家庭2軒分の電力をまかなえるといいます。

流速によって発電量が変わってくる。実際に現地に行ってデータを取ることは可能?

可能です。ぜひやらせていただきたい。

一度、実際の水路で発電してみることが決まりました。
実験
研究施設から車で1時間、三重・白山町。

小雨が降る中、実験が始まりました。
立石さんの前にトラックが到着。打ち合わせ通りの水車が運ばれてきました。

早速、隣に流れる水路に設置していきます。
大がかりな工事がなく、わずかな時間で設置が可能。

まずは水車を下ろします。

水路の壁に固定させて電気系統を調整すれば準備は完了です。
設置にかかる時間は約1時間。

水門を開いて水が流れ始めると勢い良く回りました。

しかし発電した電力を確認する作業員たちに異変が…
全然だめ。

正常に発電できていません。

再び電気系統を調整します。
もう一度確認すると約500ワットの電気を生み出していました。

水の流れは秒速1.3メートルほど。
2メートルで1キロワットというカタログ上の数字と比較しても大きな差はありません。

工務店に水車の導入を依頼している白山町土地改良区の松森久志理事長。

農期以外、水路がもったいない。収入のあるものにできないかと。

再生可能エネルギーの売電価格を比較すると太陽光は今年度1kWh当たり26円、2019年度は24円に下がります。
一方、水力は2020年度まで34円で変わりません。

NTNはさらに水車の性能を上げて水力発電の需要を取り込みたい考えです。
エネルギー源としての開発はスタートしたばかり。売電目的にも適応していくので収益を上げられる商品として今後PRしていく。
