シリーズ「ケーザイのナゼ?」。
かつては世界で最も高いといわれた日本の物価ですが、改めて世界の国々と比べてみると日本はいつの間にか物価の安い国になっていました。
一体ナゼなのか、今回はランチの価格から検証します。
株式会社ニッセイ基礎研究所
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南澤昭一記者。
東京・新橋です。飲食店の前にはメニューを掲げた看板があちらこちらで出ています。
ランチメニューが3つあって全て680円。しかも税込みです。
こちらは定食が500円です。世界でもこの値段でランチが食べられるのでしょうか。
昼時の東京・新橋でサラリーマンに聞きました。「今日のランチの予算は?」
800円ぐらい。
焼き魚定食とか。
1,000円未満。
700~800円。定食かラーメン。
新生銀行の調査では日本のサラリーマンのランチ代は平均649円。
では海外のランチ事情はどうなのでしょうか。
まずはアメリカと比べてみます。世界の金融の中心、ニューヨークで聞いた「今日のランチの値段は?」
ランチは12~14ドル(約1,320~1,540円)。
ランチ代は20~30ドル(約2,200~3,300円)。
ベーグルとスパム、サーモンで30ドル(約3,300円)。
大食いなんだ。
オフィス街にあるこちらの店「ハニーブレインズ」。健康志向の高いニューヨーカーに人気のランチを頼んでみると…
植村友里記者。
こちらは14ドル15セントのサラダです。なかにはタマゴやチキン、アボカドなどが入っています。
ニューヨークではランチ代の平均は15ドル。日本円で1,650円ほどと日本に比べるとかなり高めです。
続いては中国。上海の人たちはランチ代にいくら使っているのでしょうか。
40~60元(約680~1,020円)。定食や蒸し料理などを食べる。
60~70元(約1,020~1,990円)。
ご飯や麺類など、普段は同僚との会食が多い。
最低50~60元(約850~1,020円)。ラーメンでも40~50元かかる。
ここの物価は高い。
現地で聞いてみたところ上海のランチ代の平均は60元。およそ1,020円でした。
ビジネスマンで賑わうというこちらの店「松鶴楼」で60元の予算でランチを頼むと出てきたのはこちら。
柔らかく煮込んだ牛肉がのった中華麺です。
菅野洋平記者。
中国あるあるですが量は非常に多いです。スープな日本人でも食べやすい、馴染みのあるスープです。
アメリカや中国と比べてみるとランチの平均価格がはるかに安い日本。ナゼこんなに安いのでしょうか。
今年創業55年を迎える街の中華店「伊峡」。
サラリーマンのランチ平均とほぼ同じ金額、650円でラーメンと半チャーハンのセットを提供しています。
おととし消費税増税で20円値上げしたものの、それまで20年以上価格を守り続けてきた店主。
値上げできない理由を聞くと…
伊峡の沢木昭司さん。
値上げは難しい。
お客様は近所のサラリーマン。そんなに高くとれない。
「小銭があるからラーメンでも食べていこうか」と食べてくれる。
ナゼ日本では値上げが難しいのでしょうか。
消費者行動に詳しいニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員。
基本的に日本人は消費行動で節約志向が土台にある。
節約志向がずっと続いているので企業も価格を上げにくい。
では日本は一体どれくらいの期間値上げしていないのでしょうか。マクドナルドのビッグマックで比べてみると…
1990年当時の価格を100とした推移では右肩上がりのアメリカや中国に対して、日本はほぼ横ばい。
アメリカと中国は2.5倍以上になりましたが、日本は1.05倍と30年前と変わらない水準でした。
30年続いた平成の時代、ランチの定番牛丼の値下げ競争など、日本は断続的に物価が下がるデフレーションに陥っていました。
その影響もあってか日本の消費者には「ランチは安くて当たり前」という意識が刷り込まれ、結果多くの飲食店が値上げしづらい状況が続いているのです。
ランチが安い日本。サラリーマンの懐には優しいように思いますが、物価が上がらないことによる悪影響も出ています。
物価が上がらないことが回り回って自分の収入が上がらない。
その意識を消費者個人個人で持つのは難しい。
結局、賃金が上がらないのは非常に重要な課題。