新型コロナの感染拡大に伴って医療現場で懸念されているのが患者から出る飛まつとエアロゾルの問題です。現場の不安に応えようと新たな医療器具を開発した医師を追いました。
西新井ハートセンター病院
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東京・足立区に西新井ハートセンター病院。
1月のある日、急性心不全で男性が運ばれてきました。
心不全になると血液が体中に回らななくなり、肺に水が染み出してきます。処置が遅いと呼吸不全につながります。
そのため医師は口から管を入れる気管内挿管を行い患者の呼吸を管理します。気管内挿管はベテランの医師でもうまくいかず、患者の身体に負担をかけることがあります。
実は新型コロナの感染が拡大する前は気管内挿管ではなくおよそ8割がこのようなCPAP(シーパップ)と呼ばれるマスクを顔につけ人工呼吸器から患者の肺に酸素を送っていました。
ただこのCPAP、呼吸する息がマスクの側面から漏れ出し、エアロゾルを発生させることが判明。コロナ感染のリスクが問題になっています。
感染拡大で医療現場が疲弊していく中、西新井ハートセンター病院の重城健太郎医師はあるアイデアを思いつきました。
ここに圧力がかかっているのでエアロゾルが隙間から漏れる。
だったらラップすればいいんじゃないかという考えがこれ。
CPAPは口の周りを覆うだけですが、これを頭からすっぽりと被る形にしようというのです。
コロナ時代に対応したCPAPということでCoroPAP(コロパップ)と名付けました。
マスクとヘッドギアが一体になっている感じ。
ここから出たエアロゾルが個々から出て行って漏れない。
CPAPでは漏れ出したエアロゾルも隙間がないため漏れる心配はありません。
重城さんは自ら装着感などのテストを繰り返し、試作機をおよそ4ヵ月で完成させました。
去年12月21日、世間はクリスマスムードの中、都心のオフィスでは…
重城さんが医療機器メーカーの担当者にCoroPAPを売り込んでいました。初めての商談です。
ここから陰圧をかけるコネクションができるようになっていて飛まつや湿気を解決できる。
商品化に向けたプレゼンテーションです。気管内挿管をしないで治療ができることは患者のメリットになると良い反応でしたが…
NISSHAのメディカルテクノロジー事業部、齋藤良治部長、
コストを下げていかないとそんなに大量に出るものではないので。
そのへんをどうするかなという印象。
この日の話し合いではCoroPAPが必要となる急性心不全の治療がそう多くなく、コストが見合わないと判断されました。
ただ重城さんは海外展開もにらみ自信を見せます。
さらに重城さんは商品化に向けてある仕掛けを考えていました。
医師や学生などのアイデアを形にするための医療系のビジネスコンテストへの挑戦です。
経済産業省が主催し、公的機関や企業との橋渡しをするもので知名度のアップに繋がります。
CoroPAPはおよそ170の応募の中で最終選考の11候補に選ばれていたのです。
ジッパーを閉めるだけなので装着まで実に8秒ですね。
気管内挿管が平均3分半かかることを考えるとどれだけ早いか分かってもらえる。
重城さんのCoroPAPにはトヨタやNTTドコモといった16の企業などが興味を示しましたが、惜しくもグランプリには届きませんでした。
それでも手応えは掴んだようです。
新型コロナには本当に現場でドクターもナースも不安で困っていて。
なんとか患者とスタッフ両方を安心させたいと思っている。