地域で奮闘する企業を取り上げる「輝く!ニッポンのキラ星」。
今回は新潟県長岡市からです。自動車業界は電動化や自動運転など100年に1度の変革期に直面しているといわれています。今回、自動車やバイク用のスピードメーターの分野で世界をリードするメーカーに注目しました。歴史的変革にどう立ち向かっているのでしょうか。
100年に1度の変革期へ
東京・六本木のメルセデス・ベンツのブランドストア「Mercedes me Tokyo」。
メルセデス・ベンツ日本 製品広報課
澤井裕規さん

こちらのSクラスの運転席には最先端の技術が搭載されています。
運転席に座り、ドライバー目線で前方を見ると…
番組スタッフ
これは何?

メルセデス・ベンツ日本 製品広報課
澤井裕規さん

ヘッドアップディスプレイ(HUD)。
運転しながら必要な情報を視界の中に表示してくれる。
目線の移動がないので安全性につながる。
ヘッドアップディスプレイはドライバーが視線を動かすことなくフロントウインドウに映し出された速度やカーナビ情報などを確認できるシステムです。
特にヨーロッパでは一部の高速道路で速度制限がなく、時速200キロを超えるスピードを出すこともあるので安全性が高まるとして導入が進んでいます。
このヘッドアップディスプレイを開発・供給し、世界シェアおよそ30%で首位を走る企業が…
新潟県長岡市。工作機械の長岡として北陸の産業をけん引。ものづくり産業集積都市と位置づけられています。
ここに本社を構えるのが自動車搭載器で世界をリードする日本精機です。
創業は1945年でグループの従業員は1万3,000人余り。
高度経済成長期に世界で日本車やバイクの需要が高まったことを背景に成長。
1989年から東証2部に上場していましたが、今月の市場再編で今はスタンダード市場で取引されています。
日本精機の売り上げの7割以上を占めるのが車載計器関連です。
自動車用の速度計をはじめとする車載計器は世界12ものメーカーと取り引き。
売上は1,000億円以上、世界シェアはおよそ12%。
またバイク用メーターは売上が300億円以上。世界シェアおよそ41%でトップです。
HUDが成長軌道に
これまでに増して力を入れているのがヘッドアップディスプレイです。
1984年にこの事業をスタートしました。
日本精機
佐藤浩一社長

当時は3人程度しか設計者がいなくて、ヘッドアップディスプレイが物になるかどうか疑わしい開発だった。
目線を動かさないでドライバーの視点を安定させるために鏡を配置する角度などを精密に設計しなければいけません。
15年をかけて日本精機の光学設計技術も進化を遂げ、画像の歪みの少ない製品を作り上げました。
しかし…
日本精機 HUDビジネス本部長
山谷修一さん

長年試作しかしてなくて量産という売り上げにつながらなかった。
ヘッドアップディスプレイの認知度は低く、自動車メーカーからの採用が決まりませんでした。
転機となったのは1997年、アメリカの自動車大手GM(ゼネラル・モーターズ)がヘッドアップディスプレイを手掛けるメーカーを探していたのです。
日本精機 HUDビジネス本部長
山谷修一さん

GMとはメーカーの開発から付き合いがあったので懇意にしているエンジニアがいた。
彼からGMのポイントとしている技術課題を聞き取って、重点的に説明できて、GMの信頼を勝ち得て受注につながった。
GMに続き、ドイツのBMWやAudiなどの採用が決まり、事業は成長軌道に。
今や年間150万台を製造し、売り上げはおよそ300億円という事業にまで成長しました。
さらに現在、この技術を応用したバイク用のヘルメットも開発中です。
自動車に頼らない取り組み
日本精機では自動車に頼らない新たな取り組みも始まっています。
光学技術のノウハウを生かして作られた「CO2 Lamp」。
二酸化炭素濃度を測定して人の密集度合いを調べるという商品です。
このCO2 Lamp、コロナ対策に悩む地元新潟のプロサッカーチーム「アルビレックス新潟」に緊急寄贈。
こうした取り組みが評価され、累計の販売台数は1万台を超えました。
日本精機
佐藤浩一社長

CO2 Lampは日本精機としてBtoCの第一号。
コロナ下で一本足打法では弱い。
車に関係しない製品を少しずつ世の中に出して会社の柱にしていきたい。
培ってきた技術と開発能力を使っていかに社会に貢献するかということを常に考えていく必要がある。