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[WBS]ウクライナ侵攻!世界に及ぼす"食糧危機"[株式会社ニップン]

ワールドビジネスサテライト(WBS)

ウクライナ危機がいま世界の食糧危機に発展しようとしています。ウクライナは世界有数の穀物輸出国でトウモロコシの輸出量は世界第4位、小麦は第5位となっていて、その多くを船で輸出しています。

しかし、ロシア軍が黒海を封鎖している影響で船が出られない状況となっています。

ウクライナによるとロシアによる侵攻以前は月に最大で600万トン輸出していた穀物ですが、最大でも200万トンと3分の1に留まる見通しを示しています。

この穀物の供給ルートの寸断ですでに世界全体で大きな影響が出始めています。

世界で"食糧危機"!?

アメリカ トウモロコシ価格上昇

アメリカ西海岸ワシントン州にあるバンクーバー港。

ここから年間500万トン以上の穀物を世界各地に輸出しています。

この港にある ユナイテッド・グレイン・コーポレーション。アメリカ産の穀物輸出を専門にする三井物産の小会社です。

この会社で営業を担当するトニー・フーさん。ロシアによるウクライナ侵攻以降、アメリカ産のトウモロコシの輸出に異変が起きているといいます。

番組スタッフ

忙しいか?

ユナイテッド・グレイン・コーポレーション
トニー・フーさん

とても忙しい。ウクライナ侵攻後、海外からの需要が急増した。

アメリカは世界最大のトウモロコシの生産国で年間およそ3億5,800万トンを生産しています。そのうち例年ではおよそ20%を輸出。

しかし、ウクライナからの輸出が止まったことでアメリカへの注文が各国から急増しているのです。

その最大の国が…

番組スタッフ

この船はどこに?

ユナイテッド・グレイン・コーポレーション
トニー・フーさん

中国。

じつはこの船の中身、全て中国行きです。中国はトウモロコシの輸入の多くをこれまでウクライナに頼っていました。

ユナイテッド・グレイン・コーポレーション
トニー・フーさん

中国はもともとアメリカやウクライナなどからしか輸入していない。
いま中国のすべての需要がアメリカに来ている。

さらに中国以外の国からも注文が急増。アメリカ産トウモロコシの争奪戦が起きているといいます。

ユナイテッド・グレイン・コーポレーション
トニー・フーさん

ウクライナから買っていたほとんどの国がアメリカのトウモロコシを求めている。
中国や韓国などは3月以降、注文を増やし、すでに夏までの在庫をすべて買った。

海外での旺盛な需要を受けてアメリカ産トウモロコシの販売価格は侵攻前と比べて13%以上上昇しています。

ユナイテッド・グレイン・コーポレーション
トニー・フーさん

トウモロコシ価格が上昇すれば食品価格も上昇する。
消費者の生活に影響を与える。世界の食糧問題が心配だ。

「94ヵ国16億人に影響」

供給不安から値上がりが続く穀物などの食料。

世界ではいま自国の食料確保を優先する動きが広まっています。

宮下祐佳里記者

こちらは食料についてのアメリカの研究所のページにありますが、赤い印がついている国は穀物などの輸出を制限している国です。
その数は20ヵ国あります。

ガーナがトウモロコシの輸出を制限しているほか、インドやカザフスタンなど小麦の輸出を禁止している国も。

特にインドは世界第2位の小麦生産国。ウクライナ産の穴埋めを期待されていましたが国内の食費と価格安定のためとして5月中旬に輸出停止を決めています。

こうしたことから国連は8日に報告書で穀物価格の上昇など94ヵ国の14億人が影響を受けていると指摘。

グテレス事務総長は次のように警鐘を鳴らしました。

前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす怒りがある。

日本 パスタ用小麦を国産化

こうした中、日本では…

兵庫県加古川市、金色に輝く、まるで海のような景色。

たわわに実った小麦です。

育った麦を満足そうに手にするのは小麦を販売する製粉大手「ニップン」の大楠英樹さんです。

ただこの小麦、少し色が濃いように見えますが…

ニップン
中央研究所長
大楠英樹さん

あめ色をしているところがデュラム小麦の特徴。

デュラム小麦はパスタやマカロニの材料として欠かせない小麦粉です。

デュラム小麦は乾燥した地域で育つため、雨の多い日本の気候では育たないと言われてきました。

それを品種改良したものをニップンが地元の農業団体と共同で育成に取り組み、商用ベースでの栽培にニッポンが初めて成功したのです。

八幡営農
本岡壯一代表

いま小麦の収穫作業をしている。

去年の秋に種をまいてからおよそ7ヵ月、いま収穫の時期を迎えています。

八幡営農
本岡壯一代表

去年は30ヘクタールの面積で小麦を栽培していたけれど、今年は10ヘクタール増やして40ヘクタールに植え付けている。
120トンくらいの収穫を予定している。

収穫した小麦の一部は市内で加工し、販売もしています。

加古川ヤマトヤシキ
店舗営業部
樽裕子さん

こちらが加古川パスタ。
人気は一番高い。

地元で小麦を栽培していることをアピールし、ブランドとして育てていく考えです。

こちらのレストラン「ル・パスタガーデン」でも地元国産小麦を使ったパスタを提供しています。

ル・パスタガーデン
藤田修浩店長

小麦自体が柔らかいので外国産よりもちっとした特徴。
小麦の香りだったり、外国産に比べるといい状態に仕上がっている。

収穫してから製粉・加工するまでの期間が短いため小麦の風味が強いといいます。

パスタの原料となるデュラム種などの日本の年間輸入量はおよそ28万トン。加古川市での今年の収穫量はわずか120トンでまだ輸入量をまかなうまでは遠く及びません。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻で自国の食料を確保する問題が表面化する中、今後更なる増産に意欲を示しています。

八幡営農
本岡壯一代表

なかなか簡単には増やせないけれど、今年の秋は50ヘクタール、10ヘクタール増やしてやっていきたい。。

製粉会社も国内生産の重要性を指摘します。

ニップン
中央研究所長
大楠英樹さん

私たちは安定供給を一つの柱としても考えているので、少しでも国産枠を増やして供給源を多彩にしていくことが大事。

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