ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、注目されているのがロシアへの経済制裁の行方です。日本経済新聞社の記者がギリシャ沖で撮影したスクープ写真。写っているのはロシアから来た石油タンカーです。そしてもう1隻タンカーがいます。これは海の上で石油を移し替える「瀬取り」を行っている瞬間です。こうした行為により産地が曖昧になったロシア産の石油がヨーロッパに輸出されている事実が明らかになりました。経済制裁の抜け穴になっている可能性があります。
ロシア産石油の「裏ルート」!日経記者が捉えた取引現場
ギリシャの南端に位置する港町ギティオ。そこから小さな船に乗って日経新聞の長尾里穂記者が向かったのは…
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
ロシアの領海の外に向かっている。
地元の人によると毎日何隻もの船が訪れている。
実際にギリシャの領海の外で行われていたのは…
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
2つの船を見つけた。オイルタンカーのようだ。
ピッタリとくっついた2隻のタンカー。左はインド籍の船、そして右はロシアから来たギリシャ籍の船です。行われていたのは海の上で石油を移し替える「瀬取り」です。
現場を捉えた長尾記者は…
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
すごく迫力があった。思ったよりタンカーが大きかった。
波がなくて静かな海に急に大きな船が浮いている。若干異様な光景というか。
番組スタッフ
「瀬取り」をする意味は?
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
原産地を分かりにくくしたり、ごまかしたりしやすくなるメリットがある。
石油を移し替えることで産地が分かりにくくなるといいますが、ギリシャ沖で移し替えを行っていたのはこのタンカーだけではありません。
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
ロシアの港を出て、ギリシャ沖で瀬取りした船と瀬取りを受けた船のデータ。
昨年から20倍に増えている。
日経新聞の調査によるとギリシャ沖でのこうした行為はロシアのウクライナ侵攻から半年ほどで175件と1年前の20倍ほどに急増しています。
さらに石油を受け取った船のうち、およそ半分がヨーロッパに向かっていたことも明らかになりました。
イギリスやEU(ヨーロッパ連合)はロシアへの経済制裁として石油の輸入を段階的に制限してきましたが、こうした行為は制裁の抜け穴になる可能性があります。
ロシア産石油の「裏ルート」!イギリス"輸入ゼロ"の矛盾
日経新聞はその具体的なルートを突き止めました。
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
こちらがイミンガム港です。後ろに見えるのが石油のパイプライン。
タンカーからパイプラインを通じて製油所まで運ばれる。
イミンガム港の周辺ではイギリスの石油元売会社「プラックスグループ」の臨時製油所が並んでいます。
この企業が6月にロシアの国営石油会社ロスネフチが生産した石油30万バレルを買っていたのです。仲介したのはスイスに本拠を置く資源商社大手のトラフィギュラです。
イギリス政府はロシア産の石油を12月までに完全に禁輸すると決めていて、6月の時点で輸入量がゼロになったと発表しています。
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
英政府は6月にロシア産石油の購入がゼロになったと言っていた。
私たちの調査と矛盾する。
30万バレルを購入していたら、切り捨てられるような金額ではない。
プラックスグループは日経新聞の取材に対し、「個別の取引には答えられない、イギリス政府の制裁は守っている」と述べました。
こうした取引に対し専門家は…
東京大学
公共政策大学院
鈴木一人教授
ロシアによる制裁逃れというよりはイギリスやヨーロッパの企業、石油産業による制裁逃れ。
自分の国の法律に触れないように、法律で見つからないようにするためにそういうことをたっていたのではないか。
一方でロシア側への影響は…
日本経済新聞社
編集 社会・調査報道ユニット
長尾里穂記者
ロシアからすれば面倒くさい「瀬取り」をしなくても中国やインドやその他の需要者に売ればいいので、ロシアは別に自分の出自を隠しながら石油を出す必要はない。