食品や衣料品と同様に値上がりを続けているのが生活に不可欠な電気代です。電気をめぐっては電力自由化で生まれた新電力と呼ばれる小売電気事業者が窮地に立たされています。サービス停止が相次ぎ混乱が起きています。
「衣・食・住」価格の行方
新電力 突然サービス停止?
東京都内で暮らす磯部弥一良さん。先月、あるメールが届きました。
磯部弥一良さん

「4月30日をもって、メニュー供給を停止する判断を致しました。」
突然来た。
1年ほど前から「エルピオでんき」という電力サービスを利用していますが突然サービス停止の通知が来たのです。
番組スタッフ
1年でサービス停止になると思ったか?

磯部弥一良さん

まさか思っていなかった。
新電力をめぐる混乱は広がっています。楽天エナジーやハチドリ電力などの会社は新規契約の受け付けを停止。
さらに事業から撤退する企業も多く、新電力会社の2021年度の倒産件数は14件で過去最多となりました。
新電力なぜ次々撤退?
角谷暁子キャスター

新電力サービスからの撤退が相次ぐ中でこちらの会社も6月末での撤退を発表しています。
家庭向けに電気を提供しているネイチャー。去年3月にサービスを開始しましたが6月末で撤退することを決めました。
そもそも新電力会社はどうのようにお客さんに電力を提供しているのでしょうか。
ネイチャー
塩出晴海代表

電気を調達してきて、それをお客様に販売する。
その調達先は電力卸売市場です。
新電力会社は自前で電気を発電していません。発電会社や大手電力会社などが発電した電気を電力卸売市場を通じて購入。その電気を家庭向けに販売しています。
ただ重要なのが卸売市場の電力価格です。
ネイチャー
塩出晴海代表

これがきょうの電力市場の価格。今は24.39円。
去年の3月は5.34円。
電力の卸価格は急激に上昇。新型コロナからの回復による経済再開やロシアのウクライナ侵攻による資源価格高騰が影響しています。さらに今後の先行きは不透明です。
お客さんから得る電気料金より市場から電気を調達する価格が上回ったため売るだけ損失が膨らむ状況が続いているのです。
角谷暁子キャスター
価格の高騰は織り込めていなかったのか?

ネイチャー
塩出晴海代表

マーケットのリスクは認識していたが、ここまでビジネスの採算が取れなくなるという状況までは織り込めなかった。
電源を持っていない弊社としてはビジネスとして継続するのが難しい。
こちらの会社では電気料金の高騰は続くとみて、もともとの主力事業であるスマートリモコンを使って電気の使用量を自動で抑えるサービスなどの電力マネジメント事業に注力していくとしています。
新電力今後の値上げは?
遡ること2016年。消費者に安い電力を届けることを目指し、新電力会社が続々と誕生しました。
競争の激化は大手電力会社の経営にも影響を与えました。
コストの削減を迫られた大手電力会社は火力発電所を中心に廃止を進め、その結果日本国内の火力発電所の稼働状況は電力自由化の前に比べて半分以下に落ち込んでいます。
専門家は…
常葉大学
山本隆三名誉教授

赤字になる設備は電力会社は持てない。
発電設備が減っていて、それが毎年起こる電力危機の一つの理由。
先月、政府が初めて「需給ひっ迫警報」を発令した電力危機もその原因の一つで電気の安定供給には今後も不安が残ります。
さらに気になるのは今後の電気料金の行方です。
大手電力会社の電気料金は上がり続けています。電気料金は石炭など上昇した燃料費を料金に上乗せできる仕組みですが、その上限は決められていてすでに上限に達している電力会社も出ています。
常葉大学
山本隆三名誉教授

大手電力で標準的な料金だと頭打ちになる。そこから先は上がらない。
ただそんなことがいつまでできるのか。
事業を続けることが難しいほど燃料代が上がり発電コストが上がるのであれば何か考えないと。電力会社が倒産したら停電する。