東京・渋谷区。行列ができる店があると聞き訪ねてみたがお客様の姿はありません。
店を覗くと何やら見慣れない風景が。
何をしているのか?
傘の修理です。
壁に目をやると修理を依頼された傘がずらり。ここは雨が降ると傘の行列ができる店でした。
株式会社仲屋商店
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創業87年を迎える老舗の傘専門店。
特価品から2万円の高級傘まで揃う豊富な品ぞろえ。オリジナルの子供傘も「あめんボー(1,900円)」も製造しています。
表の看板をよく見ると1つだけレトロな雰囲気です。
中を覗くとまさに昭和の佇まい。
傘の修理コーナー
ここは都内でも珍しい傘の修理コーナー。職人のイスを囲むように工具や部品がズラリと並びます。中には見たこともない工具もあります。一体、何に使うのか?
実はこれ、骨の動く部分をつなぐ小さなピンを外すための専用工具。傘修理には欠かせないものです。
ここに傘を修理してほしいお客様が都内各所からやって来ます。
梅雨や台風の時期には1日15本もの傘が持ち込まれます。
傘修理職人の神保隆さん、
ここがつぶれている。じゃあ骨の交換で2,500円くらい。
買うよりはいい。
修理には1~2週間かかりますがお客様次々やって来ます。
利用客は、
壊れたので捨てようかと思ったが、ちょっともったいないと思って。
ラッキーでした。いま修理といっても、なかなかない。
こちらは郵送されてきた傘。送り主は小学生だといいます。「かさをなおしてください」と書かれています。
さらにこちらは「形見の傘なので丁寧に取り扱い。元のハンドルも捨てないで返す」。取っ手が壊れてしまった親の形見の傘。
ここで職人はおもむろににろうそくに火をつけ、柄の部分を火にかざしました。
柄の部分を温めて接着されているのを緩めている。
しばらく温めていると柄がキレイに抜けました。そして切れ込みを入れた木片をあてがい曲がった骨をテコの原理で真っ直ぐにします。
これでなんとか大丈夫。
生まれ変わった形見の傘。
工賃は1,500円で元の取っ手とともに依頼者に返されました。
こうした傘修理は昭和の頃はよく見かけたといいます。
仲憲一社長
仲憲一社長は、
昔はどこの街にも傘屋さんが1軒くらいはあった。傘屋さんは本当に激減した。
この店も使い捨ての傘に押されるなどして8年前、主軸を卸から小売に転換。
その後、半世紀近く働いてきた2人の傘職人が高齢のため引退。この時、修理コーナーを閉めようとも考えましたが幸運にも後継者が見つかったといいます。
修理でもうけようとかそういう発想は一切ない。専門店が少ないからこそ意地になってでも続けていきたい。
使い捨てが当たり前となった現代、モノを大切にする古き良き時代の精神がこの店の一角に息づいていました。