政府は6月に決定した骨太の方針で外国人労働者の受け入れ拡大の方針を打ち出しました。
人手不足が深刻な介護や建設、農業、宿泊、造船などの分野で外国人労働者を呼び込む狙いです。
この背景には何があるのでしょうか?
取材しました。
特別養護老人ホームきやま
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香川県坂出市の特別養護老人ホームきやま。
ここは全国からも注目されている介護施設です。
昼ごはんできましたよ。
こちらはフィリピン人のメイさん(27歳)。
こちらはインドネシア人のアリさん(26歳)。
実はこの施設、常勤職員の60%以上が外国人スタッフ。
半分以上が外国人が占める珍しい施設なんです。
坂井恭一施設長は、
外国人の力を借りないと介護現場がもたない。
常勤職員の半数を超えて力を貸してもらっているので外国人スタッフはなくてはならない大切な仲間。
介護人材は7年後には34万人不足すると予測されています。
そのため積極的に外国人を採用してきました。
フィリピン人のエテル・メイ・ライェセ・ファハードさんの評判も上々。
言葉も上手だけれど、ちょっと違う優しさがある。
大変ですけれど大丈夫。
状態が良くなるように何かいいことしたいといつも考えている。
日本で働く外国人
日本で働くことができる外国人は医師や弁護士などの専門職や留学生のアルバイト、さらに農業、製造業などの分野での技能実習生、そして二国間で協定を結んでいるフィリピンなどの3カ国の人が看護と介護の分野で働くことができます。
メイさんもこの二国間協定でやって来ました。
月給は14万円ほど。
日本人と同じ給与体系です。
メイさんはフィリピンの看護大学を卒業し、看護師の資格を持っています。
フィリピンの看護師の給料は少ない。
私と父がお金を稼ぎます。家族のために。
メイさんは7人家族の長女。
家族の生活費を稼ぐため日本に来ました。
フィリピンでは看護師の月給は5万円ほどと低いため、日本で働き月5万円を仕送りしています。
いま「人材の争奪戦」が勃発!?
ところがこの施設では最近、メイさんのような外国人を思うように採用できていません。
2017年はフィリピン人とインドネシア人、合わせて20人募集したにもかかわらず、採用できたのは9人だけでした。
外国人材を欲しがっている法人(介護施設)が非常に多くなり、年々手をあげる法人が多くて今年はさらに厳しくなると思う。
今年は介護協定で来日できる外国人900人に対して1,900人近くの求人が集まりました。
人手不足の介護業界でアジア人材の奪い合いが起きているのです。
しかも、
試験に失敗してしまうと帰らなくてはいけないのがEPA(二国間介護協定)の現状の制度。
メイさんたちが日本に滞在できるのは原則4年。
その間に国家資格「介護福祉士」が取れないと帰国しなくてはなりません。
それによって20人ほどが帰国しています。
そこでこの施設ではある対策を…
外国人スタッフがずらりと会議室に集まっていました。
これは曲線。
まっすぐは?
直線。
実は介護福祉士の資格を取ればほぼ永久的に日本で働けます。
そこで施設側で試験対策の指導を行っているのです。
介護技能実習生
7月1日、福岡空港に降り立ったのは中国人の2人。
新たな制度「介護技能実習生」の第1号です。
技術を学ぶという名目で途上国の人が日本で働ける技能実習制度。
これまで農業や製造業などに限られていましたが、深刻な人手不足から介護の分野も認められ7月から入国が始まったのです。
いま緊張しています。
介護のいろいろ頑張ります。
介護協定で来られる外国人はアジアの3ヶ国に限られていました。
一方、技能実習生は中国など対象国が大きく広がります。
しかし、今後も中国から介護人材を呼ぶことはできるのでしょうか?
中国…介護の実態
その実態を探りに訪れたのは中国・上海。
ここは中流層を対象にした老人ホーム。
高齢者200人が入所できます。
施設の責任者は、
3階はベッドが一つしか空いていない。他はすべて満席です。
高齢化が急ピッチで進む中国。
65歳以上の人口はすでに1億5,000万人を超えています。
この施設で働くスタッフの月給はおよそ8万円から10万円。
上海市の平均賃金と同じ水準。
しかも食事と住居は無料で提供されるといいます。
日本の介護士の給料は低いと聞いている。中国の方が待遇の水準が良いと思う。
結城康博教授
専門家は中国などから人材を獲得するのは今後難しくなると指摘します。
淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、
中国は一人っ子政策をとっていたので20~30年後には日本よりも高齢化が厳しい状況。
貨幣価値の差がだんだん無くなれば中国人材の来日は難しい。
日本政府
こうした中、政府は6月5日の経済財政諮問会議で…
安倍総理は、
即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みを早急に構築する必要がある。
政府は介護など5つの分野を念頭に新たな制度を作って外国人労働者の受け入れを拡大する方針を決定しました。
アジアの人たちから職場として選んでもらえるようにならないと日本は世界の人材争奪戦に遅れを取ってしまうかもしれません。