ロシアの軍事侵攻で多くのウクライナ国民が避難生活を余儀なくされるなど生活に困窮しています。そうした中、日本では18歳の大学生がITを活用したユニークな方法で彼らの生活を支えようとしています。その取り組みを取材しました。
ウクライナへ 日本から仕事を!18歳が挑む"新たな支援"
大阪のコンサルティング会社で働く大学生1年生、中井咲希さん(18歳)。
中井咲希さん
ウクライナでロシアの侵攻が始まって、調べているうちにウクライナがITスキルの非常に高い国だと知った。
高校時代、ビジネスのアイデアを競うコンテストで入賞したこともあります。
その能力を買われ、コンサルティング会社に副社長としてスカウトされました。
その中井さん、ウクライナ国内のIT技術者に日本から仕事を提供できないかと考えたのです。
まず、中井さんの会社「ネクストエージ」が企業から仕事を受注します。そしてウクライナで避難生活を送るIT技術者に仕事を依頼。彼らにオンラインで報酬を支払い生活資金にしてもらおうというのです。
中井咲希さん
自分の力で働いてお金を稼いで生活を支えていくことがウクライナ避難民にとって必要ないことではないかと思う。
しかし、ウクライナ在住のIT技術者にツテがまったくない中井さん。そこで頼ったのが社員の知り合いで5年前に来日したウクライナ人のアンナ・クレシェンコさんでした。
アンナ・クレシェンコさん
ひどい状況です。
まだウクライナに残っている人々がいる。
実はウクライナの男性の多くは国外への避難が許されず仕事もない状態だといいます。
アンナさんのもとには生活費を稼ぐために仕事がほしいというSNSやメールが続々と寄せられています。
中井咲希さん
1人でも支援というか一緒に仕事ができる人がいれば。
アンナ・クレシェンコさん
つながる人たちにつなげさせていただきたい。
4月上旬。この日、中井さんはアンナさんの紹介で仕事を探しているIT技術者7人と面談することに。
ネクストエージ
中井咲希さん
今日は仕事を依頼するため、お互いを知るためにミーティングをやります。
Webデザイナーのグジェエウ・ユリーさん(32歳)。ウクライナ中部の町ヴィーンヌィツャから西部のリビウに避難しています。
ユリーさんはロシアが侵攻する前、仕事の9割をロシアの企業から受注していたといいます。
グジェエウ・ユリーさん
戦争が始まった時、私はロシアからの仕事を全て放棄すると決めました。
ウクライナに侵攻したロシアの仕事を受けるのは間違っているからです。
だから今、仕事はまったくありません。
ユリーさんの一番の心配事は離れ離れで暮らす妻と2人の子ども。ユリーさんは妻子を親類縁者がいない隣国のスロバキアに避難させています。
グジェエウ・ユリーさん
国外に避難している家族に生活費を送らなければなりません。
妻は2人の子供の世話で手いっぱい。
子供が小さいので妻は働くことができません。
チャンスをもらえるならどんな仕事でもします。
中井さん、ウクライナの人たちの厳しい現実を改めて知りました。
ネクストエージ
中井咲希さん
1人でも多く、1日でも早く仕事を届けられるようにしたい。
依頼する仕事を探すため中井さんは動き出しました。
やって来たのは大阪市内の不動産会社「日建産業」。
ネクストエージ
中井咲希さん
ITのスキルとか能力のある人たちなので。
中井さん、この会社に採用ページのリニューアルを任せてもらえないかと提案します。
日建産業
田中富之社長
全面的にお任せする。仕上がりを楽しみにしている。
4月中に納品する約束で1,000ドル、およそ13万円で受注できました。ウクライナの平均月収のおよそ2ヵ月分です。
日建産業
田中富之社長
仕事をしてもらって結果として支援につながる。
対等の立場で非常にいいと思う。
仕事を受注した中井さん、Webデザインが得意なユリーさんに依頼することにしました。
グジェエウ・ユリーさん
気持ちが楽になりました。
稼いだお金は家族に送ります。
寄付やボランティアではなく、仕事を提供するという新たな支援の形が広がり始めています。