皆さんは「特定技能」という言葉を覚えていますでしょうか。外食や介護、建築といった人手不足が深刻な14の産業について海外から人材を受け入れようと3年前に始まった制度です。日本が外国人の単純労働者を受け入れる大転換だと当時は言われていましたが、新型コロナの影響で計画通りに進んでいませんでした。今年3月からは受け入れを本格的に再開したものの、いま新たな課題が浮かび上がっています。
ベトナム人採用にモスが本腰!人手不足の解消へ?課題も…
モスバーガーを展開するモスフードサービス。その本社に現れたのは…

ハノイ出身のチャン・ダン・フンです。

ホーチミン出身のグエン・ティ・ジェム・フォンです。
16人のベトナム人社員です。外食業の特定技能の試験に合格し、この春からモスフードの正社員として入社しました。
ベトナム人社員

日本のサービスはおもてなしとか優しい丁寧な言葉を使ってお客様が気持ちよく感じている。
できれば店長になりたい。
給与や待遇は日本人の正社員と同じです。モスでは今後、毎年20人から40人を特定技能の枠で受け入れる計画です。
モスフードサービス
中村栄輔社長

人材不足が現状発生しているのは間違いない。
場合によっては長くいてもらって店長やサービス部長などのポジションにつく将来もある。
一方で課題も…
モスフードサービス
川越勉執行役員

特定技能1号の場合は5年間しか日本で働けないというルールがある。
実は特定技能の資格は1号と2号に分かれていて、1号では日本での在留期間が5年までとなっています。2号になればその制限がなくなりますが、外食業は2号の資格の対象外なのです。
モスフードサービス
川越勉執行役員

5年間日本で働いた後はアジアに店舗があるので、自分の国、近隣の国に帰った後も就職してもらう。
一方で本当に能力がある人が日本に残ろうと思ったときに手段が無い。
「特定技能2号」とか永住権みたいな門戸が広がるとさらにいいなと思う。
アジアで人材獲得競争!日本が抱える問題点は?
介護や外食業の人手不足解消につながることが期待された特定技能の制度。
政府は2023年度末までの5年間で1号の資格を持つ人をおよそ35万人受け入れる予定でしたが、新型コロナの影響で現在は5万人程度にとどまります。
残された1年で計画は達成できるのでしょうか。
特定技能1号の資格を持つベトナム人の就労のサポートなどを行っているMP研究会。田中聡彦事務局長はコロナ禍の2年間で取り巻く状況に予想外の変化が出てきたと話します。
MP研究会
田中聡彦事務局長

日本・韓国・台湾で競争というか、どこに行くかという選択肢になっている。
ベトナムの送り出し機関の情報では現状、日本よりも台湾に行く人のほうが多い。
コロナ前、ベトナム人の労働者が選ぶ就労先の人気No.1は日本でした。ところが去年、台湾に1位の座を譲ることに。
一体何が起きたのか、田中事務局長が指摘したのは技術実習の名のもとに安価な労働力にされる面が指摘されている技能実習生の問題でした。
MP研究会
田中聡彦事務局長

つらそうな部分があったり、給料がちゃんと払われないニュースがあった。
SNSを通じて労働環境や事件がいっぱいまわる(拡散される)。
情報を知った人たちが行きたくないというかたちになる。
さらにベトナム人労働者の日本離れを加速させかねないもう一つの理由も。
MP研究会
田中聡彦事務局長

円安というのが気になっている。送金するのが目的で来ている人が多いので、それが目減りしてしまう、だったら違う国に行くことも考える。