現在、世界の人口は76億人と言われています。
これが2050年には98億人まで増えると予測されていて、すべての人に食糧が行き渡るには生産量を現在の1.7倍に増やす必要があるという試算もあります。
ただ農地を広げるにも限界があり、足りないということも懸念されています。
そこで注目されているのがバイオテクノロジーを使った生産の拡大です。
こうした中、ドイツの製薬大手バイエルの子会社「モンサント」が8月30日、日本で運営する遺伝子組み換え作物の試験農場を公開しました。
迫る食糧問題に私たちはどう向き合えばいいのでしょうか?
日本モンサント株式会社
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8月30日、メディアに公開された日本モンサントの試験農場。
石井真知子記者、
こちらが一般的なトウモロコシです。殺虫剤を使っていないため虫食いが多く見られます。
一方でこちらは遺伝子組み換えがされた品種のトウモロコシです。害虫はこれを食べると死んでしまうため虫食いなどはなくとても艷やかです。
違いは歴然。遺伝子組み換えトウモロコシは虫食いもなく、実のしっかりしています。
このトウモロコシに組み込んだのは土の中に存在する微生物の遺伝子。
この微生物が作るたんぱく質が害虫に対して毒素を出すといいます。
人やほかの生き物には害はないとされています。
現在、世界26ヵ国で遺伝子組み換え作物が栽培されています。
アメリカではトウモロコシや大豆のおよそ9割が遺伝子組み換え作物。
日本もおよそ20年前からこうした遺伝子組み換え作物を飼料用や加工用に輸入しています。
輸入されるトウモロコシや大豆の実に8割以上に及ぶとみられています。
一方、国内では食用の遺伝子組み換え作物は商業栽培されていません。
トウモロコシや大豆をはじめ8つの作物で栽培が承認されているものの消費者の抵抗感が強く企業は栽培流通に踏み切っていないのが現状です。
ラウンドアップ
こちらは遺伝子組み換え大豆の畑。
日本モンサント・広報部の佐々木幸枝部長、
こちらが一度も除草剤を散布していない状態。
大豆が見えないほど雑草が生い茂っています。
一方、
除草剤を1回だけまいた。
大豆だけが生育して雑草はきれいに枯れている。
使用したのはモンサント社の除草剤「ラウンドアップ」。
通常の畑に使うと雑草とともに農作物も枯らしてしまいますが、この遺伝子組み換え大豆はラウンドアップの影響を受けない特性を持ちます。
モンサント社の遺伝子組み換え大豆の種と除草剤をセットで購入すれば農家は除草する手間を大幅に省くことが出来るためアメリカでは多くの大豆農家が使用しています。
このラウンドアップについては8月、利用者から発がん性があるとして裁判を起こされていたモンサント側に裁判所側はおよそ320億円の支払いを命じました。
モンサントは「除草剤の成分に発がん性がないことは明らかだ」として上訴する方針です。
高校生・大学生ゲノムマイスター選手権
逆風下のモンサントが開いたのは高校生や大学生向けのイベント。
クイズを通じて今後世界が直面する食糧問題の解決に遺伝子組換えなど新たな技術が不可欠だとアピールしました。
中井秀一社長は、
品種改良への理解をより深めてもらいたい。
日本市場での広がりを見据えて消費者の理解を広めようと努めています。
ゲノム編集
イベントではいま注目されているゲノム編集についても紹介されました。
農業・食品産業技術統合研究機構の田部井豊氏、
ゲノム編集は今年のノーベル賞をとるのではないかと言われている技術。
非常に期待されている。
ゲノム編集とは遺伝子を自在に操作できる新しい技術のこと。
細胞の中に特殊な酵素を入れるだけで狙った遺伝子をピンポイントで切断。
すると遺伝子に変化が起こり新しい品種を作るとこができます。
これまで新しい品種を作るためには10年以上かかることもありましたが、ゲノム編集なら数年で作ることも可能なので世界各国が研究に凌ぎを削っています。
しかし遺伝子を操作することから遺伝子組換えと同じように法律で規制するべきか世界中で議論が巻き起こっています。
アメリカやオーストラリアでは外来の遺伝子を組み込んでいなければ規制の対象から外す方針を示しています。
しかし、ヨーロッパでは欧州規制裁判所が規制対象に含めるべきだとの判断を示しました。
こうした中、8月30日に日本でもゲノム編集の規制について会議が開かれました。
環境省の堀上勝さん、
ゲノム編集について法律の対象外になるものをまとめたところ。
会議では外部から遺伝子を組みこなければ生態系に及ぼすリスクは少ないとして規制の対象から外す方針がまとめられました。
今後は各省庁で食品の安全性や表示方法などが議論される見通しです。