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[WBS]円急落の背景は!24年ぶり1ドル146円

ワールドビジネスサテライト(WBS)

為替相場は10月12日に一時146円に達し、24年ぶりの円安ドル高水準を更新しました。先月22日に政府・日銀が為替介入を行ったときよりもさらに円安が続いています。背景には一体何があり、どんな影響が起きているのでしょうか。

24年ぶり146円 為替の現場は…

石井真知子記者

私はいま為替の取引を行っているいわゆるリーディングルームに来ています。
外国為替市場は24時間動いているためこの時間も数名のディーラーが対応に当たっています。
現在の為替は146円70銭台で推移しています。こうした円安が続いている背景には日米の金融政策の違いがあります。

アメリカでは物価や賃金の上昇が高止まりしていて、中央銀行にあたるFRBが大幅な利上げを続けています。一方、日本では日銀が従来の金融緩和策を維持しているため日米の金利差がどんどん広がっていて、円を売ってドルを買う動きが進んでいるのです。

また、11日には岸田総理が海外のメディアに対し「賃上げの実現まで大規模な金融緩和の必要がある」と述べ、政府が日銀の政策を支持する姿勢を強調しました。

こうしたことも円売りを大きく押し進める要因となり、円安は24年ぶりの水準となっているのですが、日本経済にはプラスとマイナスの影響を与えています。

146円 訪日客から喜びの声

水際対策の大幅緩和から1日経った羽田空港。

入国ゲートの横では訪日客の姿が…外貨両替所です。

アメリカ人

コロナで訪日を延期していた。円安はボーナスだね。

番組スタッフ

146円まで円安進んだが知っていたか?

ハワイ在住の日本人

知らなかった。
お金がたくさん入るので申し訳ない。

さらなる円安にこの笑顔です。

一方、外国人の数が目立ち始めた浅草。スペインから来た学生が安い円に心を踊らせていました。

スペイン人

スペインでは1食約15ユーロ使うが、日本だと約5ユーロで外食できる。

1ユーロは142円。今年の初めに比べて10円以上の円安です。

おもちゃの紙幣を手に取っていたフランスからの訪日客も。

フランス人

シャツ2枚で約1万円。
でもお土産が欲しかったからうれしい。
10日間で約42万円、日本で使う予定。

イギリスからやって来た男性は人生で初めて目にするたこせんを購入しました。

イギリス人

円安だから買い物しやすいよ。1週間半で約32万円使うつもり。

ユーロやポンドといったドル以外の外貨に対しても円安が進行しています。

146円 企業に明暗 為替「再介入」は?

こうした円安を追い風にインバウンド回復への期待を高める企業も。

10月12日に決算発表を行ったビックカメラは…

ビックカメラ
秋保徹社長

インバウンドもまだ未知数だが、今まで以上に期待できる部分はある。
非常に明るい材料がそろってきたので、われわれとしては今期、ポジティブに戦っていきたい。

今年度の純利益が1年前より3割ほど伸びると予想した上でインバウンド需要が回復すればさらに業績がアップするとしています。

一方で円安の進行で利益が圧迫されている企業も。

外食チェーンのサイゼリヤは今年度の純利益が1年前より2割ほど減るとの予想を発表。円安が続き、材料価格が高止まりすることを懸念しています。

サイゼリヤ
松谷秀治社長

今期の予算を立てたのは1ドル138円くらいで、そこから1割くらい上がっている。
仕入れは100億くらいで10億円くらい効いてくる。

また吉野家ホールディングスも円安などのリスクが引き続くとして今年度の純利益が半減するとしています。

海外からの輸入に頼る企業にとっては大きな打撃となる円安の進行。注目されるのは今後の動きです。

先月に引き続き、為替介入に踏み切る可能性は…

専門家に聞きました。

野村総合研究所
エグゼクティブ・エコノミスト
木内登英さん

政府は145円程度を防衛ラインに考えていると思うが、投機的動きによって大きな変動が起こったときに例外的な措置として介入するという建前なので、緩やかに円安になるだけでは、もしかしたら介入できないかもしれない。
円安の流れが止まるのは日本側の政策では無理なので、やはりアメリカの政策にかかっている。

G20「ドルの独歩高」対応が焦点

角谷暁子キャスター

財務省は簡単には為替介入できないようですね。

石井真知子記者

特にいまのタイミングは難しい状況がありそうです。
為替介入を決める財務省の鈴木財務大臣や神田財務官はG20(20の国と地域)財務大臣・中央銀行総裁会議などに出席するため現在ワシントンにいます。
日本時間の明日、G20の財務当局が話し合うという時に介入に踏み切るというのは考えにくいという声は財務省内からも聞こえます。

今回のG20では鈴木大臣が先月実施した円買い介入について日本の立場を説明する予定です。

また、円だけでなく各国の主要通貨がドルに対して下落していることから、そうしたドルの独歩高にどのように対応するのかについても議題となりそうです。

世界経済はアメリカをはじめとする主要国の金融引き締めによる景気の減速懸念が高まっています。アメリカに対して各国から懸念が示されるということになればドル高の背景にあるアメリカの金融引き締め策にも何らかの影響を与える可能性があります。

G20を経て、各国が協調して対応できるのかが今後の為替相場にも影響しそうです。

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