東京のお台場に設置されていた東京パラリンピックのシンボルマーク。13日間に渡る熱戦が閉幕し、9月6日に撤去されました。
今回の大会で日本は金メダル13個を含むメダル51個を獲得し、金メダルがゼロだった前回大会から大きく飛躍しました。
そのパラアスリートたちの活躍を支えた用具の一つが義足です。
WBSでは世界初の技術でメダルに挑んだ日本メーカーの挑戦を追いました。
ミズノ株式会社
[blogcard url="https://www.mizuno.jp/"]
陸上女子の髙桑早生選手。13歳のときに病気で左足を失いました。
今大会、走り幅跳びと100メートル走に出場。最初の走り幅跳びでは8位でした。
力不足。100メートルもあるので1本でも多く走れるように頑張りたい。
走り幅跳びの無念を晴らすべく100メートルでメダルに挑みます。
その髙桑選手の足元を支えているのがスポーツメーカーのミズノ。
競技用義足の開発責任者、宮田美文さん。
いままでできることはやってきたが今は生きた心地がしない。
東京パラリンピックを目標にミズノは福祉機器メーカーの今仙技術研究所と共同開発を始めたのは7年前。
髙桑選手が求める軽さを実現するにはこれまでにはない新たなチャレンジが必要でした。
それが…
最大の特徴はここに開けた穴。空気の流れを穴の中や外にうまく流す。
穴を開けることで軽くて空気抵抗の少ない義足を作ろうとしたのです。
空気の流れの速度。
赤いほど早く、青いほど遅い。
一般的な義賊の後ろは青く空気抵抗が大きいことが分かります。一方、穴の空いた義足の後ろは青い面積が少なく空気抵抗が小さくなっています。
アスリートにとって足を振る感じが軽い。
しかし課題となるのが強度です。
走っているとき義賊には選手の体重の3倍以上の力が加わります。
そこで行ってきたのが荷重試験です。
穴を開けたことによる強度の低下がないことを確認するため。
600キロの力を義足に加えても耐えられるか。こうした実験を繰り返し、これまでに数百点の試作を作りました。
そして去年ついに世界初となる穴の空いた義足「KATANAΣ(カタナシグマ)」が完成。
空気抵抗を30%、重さを155減らすことに成功しました。
完成した義足を持って髙桑選手のもとを訪ねた宮田さん。早速、試してもらいます。
感想は…
どうですか?
いい感じ。
足がちゃんと出る。スムーズに。
宮田さんも一安心。
そしてスポーツメーカーにとってもう一つ重要な役割があります。トップ選手とともに開発したものを一般用として広く届けることです。
23歳のとき交通事故で左足を失った手塚圭太さん。
義足生活は35年ですが日常用の義足では走ることは難しいといいます。
交互に走ろうと思うと…
日常用の義足では反発が小さく左右の足のバランスが取りづらいのです。
そこでミズノが開発したのは初心者用の走れる義足です。
競技用で培ったノウハウを生かしつつ、大人から子どもまでが使えるようコンパクトなサイズに。
価格も競技用の4分の1ほどに抑えました。
装着し、走ってみると…
スムーズな走りです。
子どもとかけっこするとか、切断前にやっていたことができなくなったではなく、またできる。
そして9月2日。100メートル走の予選に挑んだ髙桑選手。足元にはあの穴の開いた義足が。
宮田さんもテレビで見守ります。
自己ベスト!
頑張れ。
結果は5着。雨の中、自己ベストタイの記録を出したもののわずか0.04秒の差で決勝進出は叶いませんでした。
私自身もっと強くなっていかなければいけない。
今回のリベンジが果たせる準備をする。
宮田さんも前を向いています。
もっと性能を高めたり、選手とのやり取りで使いやすい義足にしていきたい。