日本でアジアの新興国などに向けた新たな輸出産業が起こりつつあります。
それが教育です。
二夜連続でお送りする特集「ニッポンの「授業」を輸出せよ!」。第一回の今日は体育授業の輸出です。
スポーツ用品大手のミズノが独自に開発したプログラムがいま、ベトナム全国の公立小学校で正式に採用される可能性が高まっています。
約1万5,000校が対象となる巨大ビジネス。日本企業はチャンスを生かせるのでしょうか?
美津濃株式会社
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ベトナム中部の都市ダナン。経済の発展が著しいベトナム第三の都市です。
ビーチリゾートとしても人気でいま開発ラッシュに沸いています。
そんなダナン市にある公立小学校「チャン バン オン小学校」。
覗いてみると低学年らしき生徒が遊んでいました。ロケット型の風船を投げて遊んでいます。
次はハードルのようなもの。ずいぶん低いが途中で高さを上げて最後はしっかりと飛びます。
とっても楽しかったです。
子供たちを夢中にさせる道具。よく見ると日本のスポーツ用品メーカー、ミズノのロゴが描かれています。
スーツ姿の男性、ミズノでアジア営業を8年担当した森井征五さんです。ベトナムでのビジネス拡大を目指しています。
ミズノが独自に開発した運動遊びプログラム。手狭な場所でも安全な用具を使い、子供らが運動遊びを覚えられる。
ヘキサスロン
ミズノが2012年に開発した小学生向け体育プログラム「ヘキサスロン」。
スポーツの基本的な動きが身に付くといいます。
例えばエアロケットが育てるのは「投げる」動き。またハードルは「走る」と「飛ぶ」。エアロディスクは体全体を「回す」運動。
このヘキサスロンをミズノはいまベトナムで広めようとしています。
その背景は子供たちの運動不足です。子供の肥満が深刻化しているベトナム。食生活の変化もあり首都ハノイでは小学生の4割が「やや肥満」以上というデータもあります。
しかし、ほとんどの小学校には運動場がありません、体育をするのは例えば石畳の上。
だから、授業の内容は、
後ろに倒して!また伸ばして!
柔軟体操のような運動。その場で走る動きをする程度です。
運動不足は深刻な問題です。
だから限られた空間でも運動ができるヘキサスロンならベトナムで売れると考えました。
これまでの実験ではベトナムの体育の授業と比べて運動量が2倍になるという結果が出ました。
見ていた現地の先生たちは、
ベトナムで普段やっている体育の授業より運動量が多い。
興味をわかせてくれる内容だし、道具が斬新で面白い。
道具だけではありません。指導者に向けた説明書もあります。道具と授業の進め方をセットで売り込もうと考えています。
ミズノの森井さんは、
来年にベトナムで改定される学習指導要領に正式に導入してもらい、義務教育にヘキサスロンを導入してベトナム全土に広げていく。
ベトナム全国の公立小学校、約1万5,000校にヘキサスロンを採用してもらおうというのです。
教育行政のトップから全国の小学校教師、すべての人に共鳴してもらって進めていく。
現地教師向けヘキサスロン講習会
ロケットを投げているのは現地の先生たち。
この日はヘキサスロンの効果を先生たちに実感してもらうための講習会が開かれていました。
この時だけ力を入れられるように、何回も何回も投げながら子供たちはタイミングを知っていく。
エアロケットはいい加減な投げ方だとうまく飛びません。まっすぐ飛ばすには正しい投げ方が必要です。先生たちもそれを実感できたようです。
腕の向きを投げたい方向に調節しなければいけないんだね。
生徒たちには今の体育より面白い、きっと好きになるでしょうね。
森井さんヘキサスロンの売り込みに必死です。
必ず正式導入する。ラストスパートしたい。
香久山小学校
ベトナムでの売り込みは勝負の時を迎えていました。舞台は日本。
バスから降りてきたのはミズノの森井さん。そしてベトナム政府の関係者です。
森井さんがヘキサスロンを導入した学校を見てもらおうと日本に招いたのです。
森井さんの横を歩くのはベトナム政府の幹部、教育訓練省のチャン・ディン・トワン局長。
とにかく運動をさせたい。
ハードルを飛ぶ子供たちを真剣に見つめる幹部。
みんないい笑顔ですよ!
懸命のアピール。ヘキサスロンの良さは伝わったのか?
チャン・ディン・トワン局長は、
生徒たちが受け身ではなく主体的で効果的な授業だと思った。個人的にはベトナムの義務教育に採用する可能性は高いと思う。
仮にこのヘキサスロンがベトナム全国で導入されれば売り上げは数十億円規模、さらにミズノというブランドをベトナムに浸透させる効果もあります。
森井さんは、
初等教育でヘキサスロンを導入してもらい、そしてスポーツ、サッカーやバトミントンが盛ん、これを一気通貫でミズノとしてベトナムで商売をしたい。
教育コンテンツは日本企業に新たなチャンスをもたらすのか?