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[WBS]どうするエネルギー調達!脱ロシアで…商社の"正念場"[三菱商事株式会社]

ワールドビジネスサテライト(WBS)

5月10日までに出揃った商社決算についてです。5大商社の去年4月から今年3月までの1年間の純利益は全商社で最高益を更新しました。

22年3月期 純利益
三菱商事9,375億円(最高益)
三井物産9,147億円(最高益)
伊藤忠商事8,202億円(最高益)
住友商事4,636億円(最高益)
丸紅4,243億円(最高益)

その理由はコロナからの経済回復に伴うリベンジ消費によって需要が増える傾向にある中、原油や石油などの資源だけでなく、食料や半導体などの電子部品なども値上がりしています。商社はこうした資源の売買を仲介し、また生産にも関わっているため値上がりによって仲介料や配当が増え利益が膨らんでいます。ただ、最高益の一方で不透明感が増しているのがロシア事業です。原油とLNGの輸入におけるロシアのシェアを見てみるとともに5位となっていて日本のエネルギー戦略上重要な位置づけとなっています。

日本 原油の輸入割合
サウジアラビア39.7%
UAE34.7%
クウェート8.4%
カタール7.6%
ロシア3.6%
日本 LNGの輸入割合
オーストラリア35.8%
マレーシア13.6%
カタール12.1%
アメリカ9.5%
ロシア8.8%

政府がロシア産の石油の輸入を段階的に禁止する方針を表明する中、商社業界も難しい舵取りを迫られています。

「オイルロンダリング」を防げ!ロシア サハリンから撤退しないワケ

緊迫化の一途を辿るロシア・ウクライナ情勢。

こうした中、政府はロシア産の石油の輸入を段階的に禁止する方針を表明しました。

ロシア産原油の輸入量は3.6%。第5位の輸入先。

原油などの生産拠点となっているサハリン1には伊藤忠商事と丸紅が参画しています。

5月10日に決算会見を開いた伊藤忠商事は…

伊藤忠商事
石井敬太社長

日本政府の対応にわれわれも沿っていく。
禁輸対象であれば禁輸しないといけないし、禁輸対象外となれば輸入も可能。

政府の対応に沿っていく考えを示した伊藤忠商事。

しかし、すでに3月にはアメリカのエクソンモービルがサハリン1からの撤退を決定。

各国が脱ロシア産に舵を取る中、代替調達先を確保するのは容易ではない状況ですが…

羽生田経産大臣

ロシア産の原油禁輸と言うが、オイルロンダリングされたときに、第三国を経由して市場に出てきたものがロシアのものかどうか判断するのはものすごく難しい問題もある。
ロシアに対して大きなプラスになって何のための制裁だったのかとなってはならない。

オイルロンダリングとは日本企業がサハリンから撤退して、権益が第三国の企業に移った場合、そこから原油を買えば、結局はロシア産原油を輸入していることになり制裁の意味がなくなることを指します。

悩ましい問題はほかにも。

三菱商事トップが激白!サハリン権益「生活を直撃する話」

伊大知明宏記者

千葉県袖ケ浦市にあるLNG(液化天然ガス)の工場です。現在もロシアのサハリン2からLNGの調達が続いています。

ロシアの極東、サハリンの天然ガス事業「サハリン2」。LNGの生産能力は年間960万トンで、その6~7割を日本向けに供給しています。

LNG(天然ガス)の調達が急務になったきっかけは日本の高度経済成長期。人口が急増したことで都市ガスの需要も急速に増加。石炭に代わる都市ガスの原料確保が必要になりました。

1969年、日本に初めてLNGのタンカー「ポーラ・アラスカ号」が到着。実は日本に初めてLNGを持ってきた商社が三菱商事なのです。

今回、サハリン2の権益を持つ三菱商事の中西勝也社長がテレビ東京のインタビューに応じました。

番組スタッフ

サハリン2撤退は考えていない?

三菱商事
中西勝也社長

サハリン2でわれわれが権益を持っている天然ガス(LNG)の6~7割が日本に来るが、それは日本全体のエネルギーの8.8%を占めている。
それがなくなった時どう代替するか、価格を誰が負担するのかとなると、やはり競争力の問題、生活に直撃する話。

サハリン2をめぐっては2月にイギリスのシェルが撤退を決定。

ただ日本は輸入しているLNGのうち、ロシアだけで全体の8.8%を占めているためエネルギー戦略上、撤退という決断に踏み切れない事情があるのです。

三菱商事
中西勝也社長

サハリン2がなくなったときにどうするのか、どう手当するのかというところだと思う。
簡単に結論は出せない。撤退するしないとか言うのではなくて、よくパートナーなどと連携しながらエネルギー政策をどうするかを決めていかないとダメ。一社で決めるような話じゃない。

もし、サハリン2から撤退した場合、電力会社やガス会社は代替のLNGを調達することになります。地理的に近いロシア以外の調達となれば輸送コストも上乗せされるため、それは全て国民の負担につながってくるのです。

ある経産省の幹部は…

経済産業省 幹部

権益を手放すメリットがない。日本の商社が投資・開発し、サハリンの権益を得た。そこから日本が買っているということ。
だから日本企業から日本企業が買っているとみることもできる。
全部が全部、日本のカネがロシア側に流れているわけではない。

さらに見逃せない動きも…

中国海洋石油集団
汪東進董事長

もちろん欧米企業がロシアから撤退していることにも注意を払っている。

中国の石油大手会社「中国海洋石油集団」の香港上場小会社「中国海洋石油」はロシアのサハリン2などの権益について注視していると明らかにしました。

三菱商事はエネルギーの調達先のバリエーションを増やすため2024年度までの3年間で洋上風力などの再生可能エネルギーなどに1兆2,000億円を投資する予定となっています。

三菱商事
中西勝也社長

資源開発というのは10年ぐらいは簡単にかかる。
自給率を上げることはすごく大事なことだと思う。
再エネを作れるだけ作って、足らない部分は原子力とかで補い、いかに競争力のあるものを作っていくか。

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