「CFO参上」、財務のトップが未来を語る。今回は国内最大の化学メーカー「三菱ケミカルグループ」、90年の歴史の中で初めてとなる外国人トップのもと改革をいま進めています。先月、三菱ケミカルホールディングスから社名を変更しました。
三菱ケミカルグループの製品は様々な用途で使われています。例えばアクリル樹脂、軽量かつ強度もあるとの評価も得ていて自動車用から建設資材まで幅広く使われています。
その三菱ケミカルは世界で戦いう競争力を養うため、いま外部から積極的に人材を登用しています。今年、外資系メーカーから来たCFOもその一人です。
4兆円という売上規模に見合った利益を出せず、水ぶくれ状態とまでいわれた会社をどう変革させるのか、新しいCFOに聞きました。
三菱ケミカルグループ 財務戦略
「水ぶくれ」脱却 カギは価格
塩田真弓キャスター
三菱ケミカルグループの本社に来ました。
コップが浮いている。

三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

アクリル板の上にフィルムを張っている。
フィルムの表面に微細な突起があり、それが光の反射を抑えている。
素材の特徴を楽しそうに説明してくれた中平優子CFO。大学は工学部、そして卒業後はアメリカの大手化学メーカー「スリーエム」で長くキャリアを積んだ生粋のリケジョです。
今年2月に三菱ケミカルグループのCFOに就任。自分に課せられたミッションは財務の改善だと片平さんはいいます。
塩田真弓キャスター
財務諸表を見たときの印象は?

三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

売上げが4兆円近くありながら、投下資本に対するリターンを見るととても効率が悪い。
稼ぐことに多くの資本を必要としている。ここは変えていかなければいけない。
業績の推移を見ると売り上げはここ10年で3兆円規模から4兆円規模に拡大したものの、営業利益は三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合した2017年をピークに落ち込み、社内外から水ぶくれといわれる状態に陥っていました。
そこで去年12月に発表した新たな経営方針では売り上げは減る一方、コア営業利益、1株利益、自己資本利益率といった項目はプラスといった目標を掲げています。
利益を出していくために中平さんが重視するのは…
三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

やはり価格。
これだけ原材料・燃料価格や為替が動いて先行きがどうなるか分からない中、しっかりとボトムライン(最終損益)を維持しなければいけない。
塩田真弓キャスター
価格転嫁できるか?

三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

価格は上げただけボトム(最終損益)に効く。
値上げをしても他社と競争ができるのは付加価値の高い製品。それが新しい経営方針で最重要と位置づけているスペシャリティマテリアルズです。
一体どんな製品か一部を中平さんに見せてもらいました。
三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

「デュラビオ」という製品。
自動車の内装・外装材に使われる植物由来のエンジニアリングプラスチック。
発色性がよいので塗装の工程を省くことができる。
塗装による植物由来の有機的物質の発生を抑えられる。環境に優しい材料。
三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

「ダイアミロン」という多層フィルム。ガスバリア性があり酸素を通さない。
今までは国内が中心だったが、海外展開を計画している。
先月、第1四半期の決算を発表し、売上は増収。この期間も値上げは行いましたが販売に大きく響くことはありませんでした。
ただ株価を見ると去年12月に新経営方針を発表したあと、一時は上昇したもののその後は下落基調に。
こうした投資家の反応をどう捉えているのでしょか。
三菱ケミカルグループ
中平優子CFO

投資家は新経営方針の内容を評価しても「本当に実行できるのか」と。
経営陣の信頼性を見ている。
結果や過程を示す積極的なコミュニケーションが重要。