2月、兵庫県三田市の女性会社員の切断された遺体が見つかった事件で現場となったのが、必要な許可を取らず住宅に他人を泊める違法民泊、いわゆる「ヤミ民泊」です。
訪日観光客の受け皿として民泊の拡大を目指す政府は民泊に関するルールを明確にするため民泊新法を作り、こうしたヤミ民泊の撲滅も目指します。
しかし、この民泊新法が施行されてもヤミ民泊の撲滅は困難であることが浮き彫りになっていきました。
ヤミ民泊
東京・墨田区。駅から近いマンション。
好本洋記者、
大きな荷物を持った観光客と見られる2人がマンションの中に入っていきます。
夕方、続々と入っていく外国人。
実はこちら、自治体の許可を得ずに観光客を泊める、いわゆる「ヤミ民泊」が一部の部屋で行われているマンションです。
有名民泊サイトにもこのマンションの部屋が掲載されています。
裏口には民泊でよく使われる大量のキーボックスが置かれています。利用者がこのキーボックスからカギを取り出すことで屋へのオーナーなどに会わずに中に入れる仕組みです。
このマンションに家族3人で暮らすAさん、3年前からマンション内で見知らぬ外国人に遭遇するようになったといいます。
民泊と思われる外国人とすれ違わない日がない。ハイテンションな外国人に急に息子が抱き上げられてドキッとしたこともある。
不安を募らせるAさん。
さらに、
隣のベランダからのぞかれて大声でしゃべりかけられた。韓国語で韓国の人、相手は裸でした。
部屋を間違える人がときどきいて、開けたら民泊の外国人で8回、夜中に間違いがあった。
Aさんは現在、引っ越しを検討しているといいます。
子どももいるし、何かあってからでは遅いと思って。もっと管理が厳しいマンションを探さないといけない。
民泊ポリス
[blogcard url="https://minpaku-police.com/"]
ヤミ民泊に悩むマンションの管理組合や住民と連携し、実態調査サービス「民泊ポリス」を運営する中込元伸さん。
とんでもない量の民泊の宿泊者募集のページを見つけた。「建物の管理規約上、民泊は禁止」と聞いている。今でも100件近くのヤミ民泊が存在している。
中込さんの元には多い日には1日に10件以上、ヤミ民泊の情報が寄せられるといいます。
中込さんはその情報をもとに民泊情報をまとめた地図を作成。赤い印は違法の疑いがある民泊です。
部屋を借りたり、購入する際に役立ててもらいたいといいます。
ヤミ民泊はどこで誰が行っているのか全く分からない。やっている証拠は何なのか、証拠をしっかりつかむにはかなりの時間が必要。
いま日本を訪れる外国人は年間2,869万人。その受け皿として全国に約5万3,000件の民泊があるといわれています。
しかし、厚生労働省の調査によると必要な許可を得た民泊はなんと2割以下、16.5%という実態でした。
「民泊新法」抜け穴も!
ヤミ民泊が身近に広まっているという実態があります。
ただ政府は観光客の受け皿として、この民泊を推進するという立場を取っています。
政府は2018年6月に「民泊新法」を施行し、これまで特区でのみ認めてきた民泊を全国で解禁します。
年間180日まで認めます。
一方、ヤミ民泊撲滅のため規制を強化する部分もあります。例えば自治体への届け出を義務化すること、また住宅には民泊をやっていることが周辺住民にも分かるように表示が義務付けられます。さらに違反者への罰則も強化されます。
全国で解禁 | |
年間180日を上限 | |
規制強化案 | 自治体への届け出制 |
「民泊」住宅とわかる表示 | |
懲役6ヶ月などの罰則 |
規制を強化する部分もありますが、民泊ポリスの中込さんは新法が施行されてもヤミ民泊の撲滅は困難だと指摘しています。
それはどうしてかというと、監視する自治体の職員の数が実際と比べて全く足りていないということがあります。例えば渋谷区の場合、現在約3,000件あるとされているヤミ民泊に対してその監視に当たるのはわずか8人という現状です。
またヤミ民泊としてオーナーに連絡をしようとしても、Airbnbなどの仲介サイト上では物件の正確な住所が非公開になっていたり、そもそも民泊仲介サイトというものが世界で無数に増えているためすべての情報を把握するのは難しいということでオーナーの特定が困難だといいます。
監視する職員不足 | 例)渋谷区約3,000件の「ヤミ民泊」を8人で対応 |
「ヤミ民泊」はオーナーの特定が困難 |
こうした状況を受けて一部の自治体は民泊への反発を強めています。
一部条件はありますが、東京都の場合、渋谷区や新宿区、さらに京都市などは条例で民泊解禁の期間をかなり絞り込んでいます。
また兵庫県では1年を通して民泊を禁止、つまり全面禁止するなど国の民泊推進の方針に真っ向から対立をしています。
東京・渋谷区 | 夏休み・冬休みのみ許可 |
東京・新宿区 | 週末のみ許可 |
京都市 | 1/15~3/15のみ許可 |
兵庫県 | 通年で禁止 |
この兵庫県の担当者に話を聞きました。
都倉敏明生活衛生課長、
管理が緩い民泊が営業されると住民の生活環境が悪化してトラブルの原因となる。迷惑だ。
一方、民泊推進を掲げる政府は、
広域で通年、全面的に禁止するような過度な規制は一般的に適切ではない。法律の趣旨を十分に踏まえた上で検討していただく必要があると思う。