企業が採用試験で活用するウェブテスト、いわゆる適性検査で受験する本人になりすまして回答したとして警視庁は京都大学大学院出身の会社員を逮捕しました。ウェブテストでの替え玉受験をめぐる摘発は全国で初めてです。コロナ下で採用試験のリモート化が進む中で不正行為を心配する採用担当者が増加しています。どう対策を講じるか、その最前線を取材しました。
初摘発 就活ウェブテスト"替え玉"
「やりがい」感じた京大院卒 逮捕
カメラに気付いても淡々とした表情で警視庁の捜査員に連れられていく男。関西電力社員の田中信人容疑者です。
就職活動中の女子大学生に代わり企業のウェブテストを替え玉受験した疑いが持たれています。
企業が採用活動で受験者の能力や性格を見極めるために行う適性検査。簡単な計数問題や言語問題などが出題されます。
コロナ禍の影響もあり多くの企業がオンライン型のウェブテストを採用。しかし今、そのウェブテストを代行する業者の存在が問題となっています。
田中容疑者のツイッター
京都大学大学院卒。
1人で計4,000件以上、通過率95%以上。
これは田中容疑者のツイッターアカウントです。
ツイッターを使って替え玉を依頼する学生を募っていた田中容疑者。プロフィール欄で自身の学歴や実績をアピールしていました。
通常、ウェブテストを受験するには企業が発行するIDとパスワードが必要です。
田中容疑者は1科目2,000円ほどの報酬とともに女子学生からIDなどを受け取り、専用サイトにログインした上で女子学生になりすまして試験を受けたと見られています。
警視庁は田中容疑者が今年1~7月までの間で300人ほどから依頼を受け、およそ400万円の報酬を得ていたとみて調べを進めています。
田中容疑者のツイッター
ウェブテ代行に文句言う人いるけどほっとけばいい。
使えるもん使わんくてどーすんのって話。
人生ってそーゆーもんなんよ。
ツイッターでそうつぶやいていた田中容疑者。警視庁の調べに対し、「学生に感謝され、やりがいを持っていた。反省している」と容疑を認めているということです。
警視庁は依頼した女子学生も書類送検しました。
事件について就職活動中の学生は…
番組スタッフ
ウェブテストは何度も受けているか?
大学4年生
何個か受けている。
自分も今、就活でいろいろ悩んでいて気持ちは分からなくもない。
根絶できる?"替え玉"受検
不振な挙動をAIで検知
企業の採用担当者に対して実施した調査ではウェブテストの不正行為について懸念があると回答した採用担当者は57%に上り、去年に比べて増加しました。
こうした中、対策に乗り出す企業も…
子供服などを手掛けるミキハウスです。
ミキハウス
人事部採用課
中川夏実さん
どうしても従来の一般的なウェブテストと聞くと替え玉受験だとか「不正があってもばれなければいい」との考えや風潮も拭い切れない。
ミキハウスではこれまで不正を防止するために対面でテストを実施。
しかし、コロナでリモート化が進んだことにより遠方の学生も気軽に受験できるよう来年度の採用活動からウェブテストの導入を決めました。
そこで取り入れたのが…
ミキハウス
人事部採用課
中川夏実さん
対面同様、AIが監視してくれているので不正が抑制できて、結果も本人の実力が反映されていると見て取れると感じた。
リモートでも不正を防止するというシステム「AI監視型ウェブテスト」。
開発したのは人材サービス事業を手掛けるヒューマネージです。
ウェブテストを採用する企業の増加に合わせて提供を始め、現在100を超す企業が採用しているといいます。
ヒューマネージ
戸倉大輔取締役
テストを受検するときにカメラが起動し、カメラで受検中の状態をリアルタイムで撮っている。
田中瞳キャスター
パソコンについているこのカメラか?
ヒューマネージ
戸倉大輔取締役
撮っている内容をAIが解析して、結果として不審な行動がある可能性があるものについてお客様に報告するサービス。
受検者の不審な動きをAIが検知し、カメラで自動的に撮影。画像データは企業側に送信される仕組みです。
田中キャスターも受検してみました。
田中瞳キャスター
試験を受けている今も監視されているということで、あえて不正と検知されるような行動を取ってみます。
まずスマートフォンを見てみます。
パソコンの画面に映らないようにウェブテストの回答をスマートフォンで確認します。
すると、その瞬間が逃さず撮影されていました。検知したのは顔や目の向き。テストが表示されている画面を集中して見ていないと判断されたようです。
さらに…
田中瞳キャスター
今からあえて替え玉受検をやってみます。
今度は田中キャスターの受検中にディレクターと入れ替わってみました。
当然その様子もAIに検知され、しっかりと撮影されていました。
ヒューマネージ
戸倉大輔取締役
全部オンラインになっているので、オンライン監視型のテストが今後広がっていくものだと思うし、ニーズは高まっていく。