こちらのバナナ、価格も手頃で1年中消費される果物ですが、捨てられる部分は実は皮だけではありません。
果実を収穫するたびに木や葉を伐採します。それが大量のゴミとなり環境問題の一因となっています。
これを解決しようとバナナから新たな素材を生み出す取り組みが進んでいます。
バナナのごみから"新素材"!アパレル・高級タオルに活用
東京・原宿にあるバナナスムージー専門店、その名も「バナナの神様」。
国産の無農薬バナナを使ったこだわりのスムージーです。
そしてユニフォームにも驚きのこだわりが…
バナナの神様
高橋英樹社長
実はバナナの繊維で作っている。
このTシャツ、バナナの茎から生まれた糸で作ったといいます。この靴下も。
実はこれはバナナの収穫に伴う大きな問題を解決しようとする取り組みです。
バナナの神様
高橋英樹社長
バナナは他の木と違って1回収穫すると茎は枯れる。
茎を廃棄して焼くか埋めるしかない。
バナナは収穫の際。地面から50センチほどを残し茎の大半を伐採。新しい芽を出させて再び収穫します。
伐採される茎や葉の量は世界で生産されるバナナの6倍以上とも呼ばれ、それが燃やされたり埋められたりすることで二酸化炭素の排出や土壌汚染という深刻な問題を引き起こしているのです。
バナナの茎から糸を開発したのは三井物産アイ・ファッションです。
商品開発の責任者、笠井克己さん。
フィリピンのバナナ農園か廃棄される茎を買い取り、3年前から開発に取り組んできました。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
バナナの茎から繊維を取り出して、それを綿と混ぜて糸にしている。
バナナの繊維は短いため単独では糸にできません。そこで綿を70%混ぜて糸にしたのです。
この糸を使った生地を"バナナクロス"として今年3月に発表すると…
パリコレ常連のブランドにも採用されるなどアパレル業界で大きな反響を呼びました。世界中で企業に環境対策を求める声が高まっている現状が背景にあるといいます。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
ファッション業界は水をいっぱい使うとか、エネルギーをいっぱい使うという形で環境によくないことをしていることが取り沙汰されている。
それを解消できる新しい繊維として注目してもらった。
いま笠井さんが力を入れるのは新たな商品の開発です。やって来たのはとある工場。
バナナクロス普及のカギとなる商品の試作をこの工場に頼んでいたのです。
創業明治元年のホットマン。国産の高級タオルを製造する会社です。
ホットマン
坂本将之社長
バナナ繊維で作ったタオルの試作品です。
触ってみてください。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
結構しっかりしていて、使い心地は良さそう。
このタオルで使ったのは従来の半分の細さの糸。バナナの繊維を含むせいで糸が切れたりしないか、強度や扱いやすさなどを確かめるためタオルを試作してもらったのです。
ホットマン
坂本将之社長
織りやすいかというと織りやすくない。
ただ、しっかりした糸を作っているので十分ものづくりに使っていける。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
細い糸ならエレガントでソフトで軽いような、レディース向きのきれいめの商品とかいろいろお客様が使える商品が作れる。
細い糸が実用化できれば商品の幅を大きく広げることができるです。
9月上旬、笠井さんのオフィスに集まったのはバナナクロス推進委員会のメンバー。バナナクロスを広めるため生地の加工や染色などの業者と立ち上げたのです。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
いままで厚手の生地が多かったが柔らかい感じに仕上げた。
笠井さんはバナナクロスが抱えるある課題を解決しようと意見を求めました。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
この糸を使ってやっていくにあたり、スピード感を持って早く広めないといつまでもコストが下がらない。
課題はコストの高さ。
バナナの糸の価格は綿の2~3倍。コストを下げるにはより多くの商品で使ってもらわなければなりません。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
どこに、どういう形でアプローチするのがいいのか。
バナナクロス推進委員会
ソトー
新田守さん
消費者に広くバナナ繊維を知ってもらうのが一番最初に大事だと思う。
バナナクロス推進委員会
吉田染工
秋本和利さん
カーテン、マット、靴、もう少し生活よりのものが開発できればいい。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
アウトドア、日用雑貨とかいろいろなところに出しましょう。
今後、アパレル以外にも売り込んでいくことになりました。
三井物産アイ・ファッション 商品開発室
笠井克己さん
とにかく売る。
いろいろなところに使ってもらうことで地球環境の不可を減らす素材になればいい。