水道管の破裂
2016年9月17日、静岡県浜松市。
道路から水が溢れ出ていました。水道管が破裂したのです。
周辺の約50世帯が断水の被害に合ったといいます。
原因は水道管の老朽化でした。
その水道管は敷設から50年以上経ち内部にはサビが溜まりコブのようにへばりついています。
一般的に水道管の耐用年数は40年。
サビによって鉄が脆くなり水圧で割れたと考えられています。
実は浜松市内の水道管の内、約15%が耐用年数の40年を過ぎているのです。
浜松市水道工事課の猪又英孝課長は
更新に必要な費用は1,000億円ぐらいの金額になる。工事予算は年間50億円なので20年以上かかる。
通常、水道施設の修繕費用は水道料金で得られる収入でまかないます。
しかし、人口減少などによって多くの自治体で水道収入が減り、修繕費用が足りなくなっているのです。
40年以上前、高度成長期に整備された水道施設がいま全国的に老朽化を迎えています。
そして各地で漏水事故が起こるなど大きな問題となっています。
秩父市
埼玉県秩父市、こちらも深刻な事態に直面しています。
秩父広域市町村圏組合水道局の町田忠男さんは
秩父地域でも漏水が多発しています。
秩父市内で耐用年数を過ぎた水道管は約21%。
このため漏水が多発し、作った水の約25%は住民に届かないという非効率な状態になっています。
水道管に加えてもっと深刻なのが浄水場の老朽化です。
橋立浄水場は
橋立浄水場は市内で2番目に大きい浄水場です。
秩父広域市町村圏組合水道局の林健太郎さんは
こちらが老朽化した撹拌機です。
見せてもらったのは水と薬品をかき混ぜる装置。
40年以上も使われていて、今にもサビで軸が折れてしまいそうです。
いつ壊れてもおかしくない状態なので、運転時間を減らして故障を未然に防ぐことを実施している。
なんとか、騙し騙し運転を続けている状態なのです。
さらに管理棟を見せてもらうと、浄水場の様々な装置をコントロールする中央制御盤がありました。
約45年前に設置されたシステムが今も使われています。
「バツしているが?」
こちらは故障していて現在使えない。
「データを記録している?」
現在も動いている。紙に記録を残すタイプ。現在あまり使われていないもの。
秩父市は老朽化した水道施設を改修するため2015年から水道料金を平均17.5%も値上げしたのです。
市民の声
市民に聞いてみると
水道料金が上がるときつい、うちも家族が多いので。
生活していくのに水は大事。値上げはしょうがないよね。
秩父市だけでなく今後水道料金を値上げせざる得ない自治体が続出してくるだろうと予想されています。
さらに秩父市は今年度から周辺の4つの町と水道事業を統合して経営の効率化を図ろうとしています。
財政難の自治体が老朽化した水道施設を改修するにはどうしたらいいのか?
横浜市は新たな方法を取っていました。
横浜市の川井浄水場。
実はこの施設は民間企業が建設したものなのです。
浄水場なのに水はどこにも見当たりません。
メタウォーターサービス株式会社の浅野眞也さんは
水をきれいにする装置。この中に水をきれいにするためのセラミック膜が入っている。
水を配管の中にあるセラミックのフィルターに通して濾過する最新式の浄水場です。
この浄水場を作ったのは民間の水道企業、メタウォーター株式会社。
横浜市と20年契約を結びました。
横浜市はメタウォーター株式会社に建設費を分割で支払うほか、毎年運営費用も支払います。
市が自前で建設して運営するよりも20年間で約12億円ほど安くなるといいます。
このように民間の資金で公共施設を整備する方法を「PFI」と呼びます。
さらにメタウォーター株式会社は徹底した効率化を図っています。
メタウォーター株式会社
通常、横浜市の他の浄水場では2人1組で点検をしています。
また紙にメモした数値を清書し直す手間もかかっていました。
一方、メタウォーター株式会社ではタブレット端末を活用しています。
数値を端末に入力するだけで記録も手間が省け、しかも1人で作業ができるようになりました。
また浄水場の装置にはバーコードが付いていて過去の画像を呼び出し、すぐにその場で見比べることもできます。
これにより例え作業員が入れ替わっても簡単に引き継ぎが行えるようになったのです。
メタウォーターサービス株式会社の浅野眞也さんは
トラブルがあった時に画像を見て情報を共有化する強みになる。作業自体が均一的に出来るのがメリット。
基本的に浄水場の運営はメタウォーター株式会社に任せ、市は毎月チェックするだけになりました。
この日は、新たに設置した設備について説明を受けていました。
横浜水道局の江夏輝行浄水課長は、
新しいものを取り入れることが民間の方が早いので、PFIによって得られた金額・差額を他の更新にまわすことでPFIは有効なものだと思う。
メタウォーター株式会社の酒井雅史執行役員。
今後、水道施設の老朽化に悩む自治体からの発注がますます増えるのではないかと考えています。
横浜市より苦しんでいる自治体はたくさん日本全国にある。そこにわれわれが連携していくのは大きなチャンスだ。
日本政策投資銀行
民間企業の参入が増えることで地方自治体が担ってきた水道事業が再編される可能性があると専門家は予想します。
日本政策投資銀行の地下誠二乗務によると
従来は水道局として自らが運営していた。今度は水道事業を民間に委託して監督する立場になる。国でまとめて監督機構をつくるのか、都道府県単位で作るのか、別の広域的なスキームでつくるのか、行政機構も作り直さなければならない。
コメント