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[WBS]タリバンがアフガン"掌握"!国外脱出する人で混乱…[公益財団法人中東調査会]

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8月15日、アフガニスタンの首都カブールにある大統領府を反政府武装勢力のタリバンが占拠したときの様子です。

タリバンは今後、新政権の樹立を進めると見られています。

このアフガニスタンの場所を地図で確認してみます。南アジアにあります。イランやパキスタンなどと国境を接している内陸部の国です。

アフガニスタンにはアメリカ軍がこの20年間駐留してきました。それが今月末に撤退することになり、準備を進めていたところをタリバンが急激に勢力を回復させて首都を掌握するまでに至りました。

実はこうした動きを見越してタリバンに急接近していたのが中国やロシアです。一体どのような思惑があるのでしょうか。

公益財団法人中東調査会

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鳴り響く銃声。逃げ惑う市民。向かう先は首都カブールの空港です。

タリバンの兵士達が大統領府のデスクに陣取っています。

8月15日、反政府武装勢力のタリバンがアフガニスタンの大統領府を占拠。スマートフォンで記念撮影する様子も…

ガニ大統領は国外へ脱出し、タリバンが勝利を宣言。

「アフガニスタン国家に安全と希望をもたらすため奉仕する」と表明しました。

しかし、タリバンの恐怖政治から逃れようと国境や空港には大勢の人が詰めかけ、アフガニスタンを脱出する人も相次いでいます。

カブールから逃れた女性。

世界がアフガニスタンを見捨てるなんて。

友人はタリバンに殺されてしまうだろう。私たち女性に人権などもうない。

各国政府は自国民を退避させるため軍隊を派遣。ヘリコプターで空が混雑する光景も。

アフガニスタンで8年間活動してきた中東調査会の青木健太研究員は…

外国の機関と働いていたことで脅迫されているという人もいる。

国内にとどまると身の危険がある人もいると思う。

指導部の方針と末端兵士の振る舞いに乖離がある場合がある。

その点に十分注意を払う必要がある。

アメリカ政府はアフガニスタンでの市民の保護や外国人の安全な退避を求める日本や欧米各国などおよそ70の国と機関の共同声明を発表しました。

8月16日、菅総理は…

今後、タリバンへの政権移譲が見込まれる。このようにわが国としても認識をしている。

米国など関係国と連携して対応している。

2001年、アメリカのブッシュ大統領(当時)。

アメリカや同盟国、アフガニスタンの兵士のおかげでタリバン政権は終焉を迎えた。

2001年のアメリカ同時多発テロ以降、アメリカはタリバン政権が国際テロ組織アルカイダをかくまったとして攻撃。テロ根絶を目指し民主政権を支援しました。

ところが今月末に迫ったアメリカ軍の完全撤退と入れ替わるようにタリバンが政権を掌握したことで20年に及ぶ民主化の取り組みが水の泡となりました。

そんな中、タリバンに急接近しているのが中国とロシアです。

7月末、中国の王毅外相は天津でタリバンの代表団と会談。

そこには2つの狙いがあるといいます。

「中国がタリバンとどのような関係を築くか?」

中国は基本的には他国の内政には干渉せず経済的利益を追求する。

中国はアフガニスタンの銅山や油田といった天然資源の開発を支援。南アジアでの存在感を高めるとともに経済的な利益を狙っていると見られます。

さらに…

中国にとってアフガニスタンはテロ対策で重要。

武装勢力がアフガニスタンで訓練を受けたり、潜伏したりする場にならないようアフガニスタンと協力していくメリットはある。

アフガニスタンと国境を接する中国の新疆ウイグル自治区にはイスラム教徒のウイグル族が住んでいます。

中国当局から迫害を受けたウイグル族がタリバン政権と連携し、テロリストになるリスクを避けるため、あらかじめタリバンとの関係を築いておこうという狙いです。

またロシアもタリバンの代表団と会談。アメリカ軍の完全撤退をにらみアフガニスタンにおける影響力の拡大を狙っています。

こうした動きに対し、イギリスのジョンソン首相は…

テロの温床に戻さないよう、志が同じ国で一致した姿勢を取らなくてはいけない。

国際社会で足並みをそろえるよう呼びかけています。

一方アメリカは20年間で1兆ドルを費やし、2,300人の兵士を失っていて撤退方針は変えない姿勢です。

アメリカのブリンケン国務長官。

大統領はこの戦争を終わらせると決めた。もう国益にはそぐわない。

アメリカ・ワシントン支局の中村寛人さんに話を聞きます。今回のタリバン復活のきっかけとなったアメリカ軍の撤退ですが、アメリカ国内ではどのように報じられているのでしょうか。

今朝のアメリカの新聞ですが一面全てがアフガニスタン情勢です。各紙とも敗北・不振・失敗など厳しい言葉を使って批判しています。

有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は「タリバンがカブールを制圧し、アメリカを驚かせる。20年の努力が数日で水の泡」などと冷ややかに書き綴っています。

ワシントンポストはアフガン戦争でアメリカに次いで多くの死傷者を出したイギリスの閣僚からの批判の声を引用し、「同盟国は他の分野でもアメリカの決定に疑念を抱くようになる」などと外交面での失態の大きさを強調します。

バイデン政権は中国に対抗するためアフガニスタンに駐留するアメリカ軍の一部をアジアに再配置するとしてきましたが皮肉にも中国の影響力を拡大させるきっかけにもつながる可能性もあります。

政府高官は治安部隊の崩壊が想定よりも早く起きてしまったと見通しの甘さを認める中、バイデン大統領の今後の対応によっては超大国アメリカとしての地位すら損なわれる可能性すら出てきそうです。

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