日本の玄関口、東京駅前にそびえ立つ高さおよそ180メートルの丸の内ビルディング、丸ビル。2002年に今のビルに建て替えられ20年を迎えました。オフィス街や丸の内の風景を一変させた丸ビルですが、開発を担った三菱地所がいま新たに取り組む人を呼ぶ街づくりとその狙いを取材しました。
丸ビル建て替えから20年!
「たそがれ」変えたのは…
日本有数のオフィス街、東京・丸の内。そのランドマーク「丸ビル」が建て替えから20周年を迎えました。
丸ビルを中心に賑わう丸の内のジオラマが登場。
三菱地所プロパティマネジメント
川端良三社長

20歳の誕生日、成人式と考えるといろいろあったと感無量。
高層階はオフィスとする一方、低層階は飲食店やアパレルなどの商業エリアとし、幅広い客層を街に呼び込んできた丸ビル。来年春にかけて大規模なリニューアルを実施します。
その第1弾として9月6日に丸ビルの1階には新たなカフェ「THE FRONT ROOM」がオープン。ビジネスパーソンを中心に多くのお客さんで賑わっていました。
三菱地所は1890年、明治政府から丸の内の土地の払い下げを受け、西洋式のレンガ造りのオフィス街を整備。
しかし、1990年代には建物の老朽化や品川や渋谷への企業の転出が相次ぎ、「丸の内のたそがれ」と呼ばれる時代も。
35年前から丸の内で働いてきたという人は…
35年前から働く人

こんな雰囲気じゃなかった、もっと殺風景。日曜・祝日は人がいない状態だった。
35年前から働く人
ほとんど銀行と証券会社と保険会社という感じだった。

そこで三菱地所は1階に銀行の支店などが入居し、午後3時にはシャッター街となっていたような丸の内仲通りの歩道を1メートルずつ広げ、車から人が中心の道へと再開発しました。
小川知美

丸の内仲通りは人工芝が張られた公園のようになっていて、シートを広げてゆっくりくつろぐこともできます。
働く人が行き交う傍らでは青空の下でピクニック気分を楽しむ子連れの姿も。
丸の内を訪れた人

ピクニック気分でランチしようかなと。
丸の内を訪れた人
小さい子を連れて歩くのが気持ちいい場所。

三菱地所
エリアマネジメント企画部
谷川拓さん

オフィス街だったところがこれだけ変わったのは日本でも珍しい場所。
街にはいろいろな人々がいた方が街の活性化・活気につながる。
丸の内エリアの本社を置く上場企業は120社近く。日本の総売上高の9%近くにもなるという有数のオフィス街でありながら、飲食店やアパレルなどを誘致するなどして店舗数はこの20年で3倍に、休日の人手も3倍に増えたのです。
三菱地所
エリアマネジメント企画部
谷川拓さん

街づくりには終わりがないという考え。
働き方や暮らし方に対応して進化していかないとならない。
"ハード"から"ソフト"注力へ
進化を続ける街づくり。三菱地所は将来を見据えて新たな取り組みを始めています。
東京駅近くにある地域産品を販売する店を訪ねると…
アナザー・ジャパン
川口晴さん

10月2日までの2ヵ月間、九州のものを集めた店をやっている。
この店の特徴は…
アナザー・ジャパン
川口晴さん

いま20歳、大学生です。
運営はすべて学生。商品選びや仕入れも自分たちで行っています。商品の宣伝にはインスタグラムを活用。
アナザー・ジャパン
千葉亜月さん

商品の使用イメージ。使う感覚を持ってもらうために。
例えばパンケーキを焼いた写真を盛り込み、おいしいと訴えている。
三菱地所は学生ならではの店作り、集客術で若者を街に呼び込むことを期待しています。
三菱地所
谷沢直紀さん

コロナを経て、リアル店舗の新しい可能性を広げていきたいと思い、この店ならではの体験を届けることが大事になってくると思うので、今後は街づくりの中でソフト面がますます重要になってくる。
力を入れるのが人を呼ぶソフトの開発。それを推し進めるための仕掛けが新国際ビルヂングに。
1階の通路を進んでいくと…
三菱地所
鈴木崇正さん

ここはもともとテナントの居室で外との間に壁があったが、壁を抜き、通りを貫通させて人通りを強化する開発を行った。
建物を抜けた先にある路地裏。実はもともとは駐輪場でした。薄暗かった場所に植物を配置し、階段などを設け、人々が交流できる空間を作ったのだといいます。
一角にはキッチンカー。昼時には大勢のお客さんが訪れ、賑わいを見せています。
周辺オフィスに勤務

週に3回くらい使うかもしれない。
日頃、仕事でストレスもたまるので緑の多い所にランチの買い出しに行けて心機一転できるのはいい。
そして、夜になるとキッチンカーはお酒を販売するワゴンに様変わり。
お酒を片手に参加できるイベントスペースとしても使われているのです。
この日は街づくりに関するトークイベント。三菱地所の吉田淳一社長も参加しました。
三菱地所
吉田淳一社長

ここにこんな仕掛けをするだけでいろいろな人が集まり、いろいろなことが行われ、われわれとしてもチャレンジだったが有効に使ってもらいたい。
休日も夜も人が集まる街に進化した丸の内。今後も新たなソフトの開発に力を入れる考えです。
三菱地所
吉田淳一社長

ソフトに合わせてハードを工夫していかないといけない世の中になってきたというのを丸ビルの建て替え以降、強く実感している。
都心の開発競争激化 勝ち抜くためには?
実はいま東京都心では大手デベロッパーによる大規模な再開発が加速しています。
東京の虎ノ門・麻生台エリアでは2023年に森ビルがホテルや複合型施設を竣工する予定です。
そして、渋谷では東急不動産が2023年11月に向け建設中です。
また三井不動産は本社を置く日本橋の再開発を進めていて、2026年に竣工する予定です。
このようにエリア間の競争が激しさを増す中で専門家はコロナ後を見据えた開発が競争を勝ち抜くカギになると指摘しています。
三幸エステート
チーフアナリスト
今関豊和氏

オフィス自体が社員が行きたくなるような、魅力があるような、そのエリアとして会社へ行こうという動機付けになるような建物・施設がより求められている。
健康・安全・安心・快適、そういったソフトの部分、目に見えない魅力をオフィスに付加していくという開発が増えてきている。
ソフトも制してハードも制しないと市場を制しないということかもしれない。