北朝鮮のミサイル発射や高まる米中の対立。
マーケットにも影響する国際情勢をどう見ていけばいいのでしょうか。
アメリカ・トランプ政権下で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたH・R・マクマスター氏に単独インタビューを行いました。
マクマスター氏は元陸軍中将で湾岸戦争やイラク戦争、アフガニスタンなど最前線の部隊の指揮を執るなどして2018年に退役。
歴史学の博士号も持っていて最近は戦場での体験や国際情勢の分析をまとめた「戦場としての世界」を出版し注目されています。
今回のインタビューでは米中対立をめぐり中国による台湾の軍事侵攻リスクが高まっていると警鐘を鳴らしています。
ハーバート・マクマスター氏
アメリカ第一主義を抱え、時として厳しい外交を展開してきたトランプ氏に勝利し、大統領に就任したジョー・バイデン氏。そのバイデン大統領がいま米中関係や中東問題など難しい課題に直面しています。
トランプ政権で大統領補佐官を務めた安全保障のプロ、マクマスター氏。
陸軍の幹部として長く安全保障に携わってきたマクマスター氏はいまの状況をどう見ているのでしょうか。
米軍アフガン撤退 混乱の中東
「米軍のアフガニスタン撤退についてどのように考えていますか?」
大惨事と言える状況だ。大参事という言葉以外思い浮かばない。
3つの分野で影響が及ぶだろう。
まずは人道的な大惨事。これはまだ始まったばかりだ。
次に政治上の大惨事。国際政治におけるアメリカの影響力がどうなるのか。
それが同盟国との約束事が守れるのかという懸念に発展し、ひいては安全保障に対する脅威が増大してしまう事態に陥ってしまう。
マクマスター氏は中東の不安定な状況が続けばテロリストの動きが再び活発になる恐れがあると警鐘を鳴らします。
隠れる場所、そして支持基盤を手に入れたテロリストがさらに危険な存在になっていく。
これは理論上の話ではない。
同時多発テロはアルカイダが隠れることができる場所を手に入れた結果だ。
イラクやシリアの「イスラム国」も同じ。
「終わりのない戦争を止めろ」という言葉を繰り返し耳にするが、アメリカが撤退しても戦争は終わらない。
米中対立に揺れるアジア太平洋
「米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は「6年以内に中国が台湾に進行する可能性がある」と言及しました。」
「中国による台湾侵攻について10年以内に起こり得ると考えていますか?」
中国が台湾に侵攻するのか、その危険性は高まっている。
背景にある事柄が一つが習主席にとってあまり時間がないこと。
習主席が2035年まで指導部を掌握する可能性があるが、その頃には82歳。習主席は急いでいる。
ホワイトハウスのある機密文書について今年1月に機密扱いが解除されました。
台湾をめぐってはこれまでアメリカは中国を刺激することを避けるためあえて意図的に曖昧な態度で臨んできましたが、この文書では台湾を守るとはっきりと書かれています。大きな転換なのでしょうか。
「この文書はまだ有効だと思いますか、マクマスター氏の権限で書かれたものですか?」
冒頭のページに私のサインが入っている。
私が国家安全保障担当の大統領補佐官だった年にこれに取り組んだ。
著書「戦場としての世界」に書いたが日本の安保担当者と緊密に協力して取り組んだ。
この時期は日米の立場が極めて一致していた。
台湾をめぐる動きのみならず東シナ海や南シナ海などで緊張が続くアジア太平洋地域。
マクマスター氏は中国の驚異を抑止するため関係各国の連携がますます重要になっていると指摘します。
自分たちを守るためにはこれまで以上に多国間協力・連携が必要だ。
安全な未来を築くため、そして中国からの経済的な挑戦や台湾、南シナ海、ヒマラヤの国境沿いでみられるインドに対して行われている攻撃から守るため自衛隊の強化については日本の主張が極めて大切。平和を維持するためにも重要。
自衛隊をめぐる動きは正しい方向に動いていると考える。
中国と対抗するため、われわの力について自信を持っている。
マクマスター氏はミサイル発射を繰り返す北朝鮮については脅威が高まっているとの認識を示しました。
北朝鮮のミサイル発射について韓国や日本、そして世界全体にとって北朝鮮がさらなる脅威になる可能性があることを示している。
北朝鮮の金政権に一体何が起きているのか正しく把握することが大切だ。
世界唯一の世襲の独裁共産主義国家だということを認識する必要がある。